年別アーカイブ:2005年

沖縄有志勉強会講師

2005年7月2日   岡本全勝
1日午後から2泊3日で、沖縄県豊見城市に行ってきました。沖縄自治体職員ネットワークに呼んでいただき、初日は講演会を2時間、翌日は勉強会を2時間×3コマという、きついお仕事です。
講演会は、金曜日の夜なのに、200人もの方が熱心に聞いてくださいました。「これからの行政、これまでの行政」という表題で、私の持ちネタの「日本は繁栄と自由を手に入れたが、負担と選択という政治をしてこなかった」ことをしゃべってきました。
img027
「講演が終わったら、外も気持ちも真っ暗になりますよ」と予告したら、翌日、参加者から「帰り道は真っ暗になりました」と感想をいただきました。その点は、成功ですね(笑い。うーん、本当は笑っていられるような、財政状況じゃないんですがね)。
img028
翌日は、ネットワークのメンバー約30人と、朝から夕方まで、みっちりお勉強でした。地元琉球大学の島袋先生や沖縄タイムスの記者さんも数名、参加してくださいました。
既に私の本を読んで下さっていたので、「これからの市町村」の他に、本邦初演の「岡本行政学の構図」や「岡本流改革術」を伝授し、みなさんからの質問の嵐に耐えてきました。
img029
一番反響があったのは、「税源移譲で、ほとんどの人が所得税額より住民税額の方が多くなる。すると、給料明細書を見ると、小泉首相でなく、市町村長の顔を思い浮かべることになる」=「毎月給料日は、役場に不満を持つ日」という話でした(「続・進む三位一体改革」に詳しく書いてあります)。
講演会はエンジンをかけるために、ネクタイをしましたが、翌日は、かりゆしウエアを着せていただき、にわかウチナンチュになりました。終了後は、泡盛・民謡・踊り付きの反省会でした。勉強会より、盛り上がるんですよね。
img030
「岡本全勝沖縄ファンクラブ」のみなさん、ありがとうございました。
この時期なら、国会も終わっていて余裕があるとお引き受けしたのですが、見事に予想は外れ、強行軍になりました。

全会一致の政治

2005年6月30日   岡本全勝
28日に、自民党総務会で、郵政民営化法案の修正案が、「多数決」で了承されました。29日の各紙が大きく伝えています。問題となっているのは、修正の中身より手続きです。
「総務会は、法案への賛否などを決める事実上の最高意志決定機関で、党則では多数決で決定することを明記している。しかし、過去に適用例はない」(読売新聞)、「これまでは、賛否両論があってまとまらない場合は、反対の総務が欠席や途中退席する形で慣例を守り、党所属の全国会議員の投票行動を縛る党議拘束の有効性を保ってきた」(日経新聞)とのことです。それを、政治学から解説しましょう。
1 民主主義は多数決
ある議員が話していました、「民主主義とは多数決である。これまで全会一致であった方がおかしい」。そうですね。議論を尽くして全員が納得するようにすることは必要ですが、議論しても一致しない場合は、最後は多数決で物事を決めます。それは、自民党内だけでなく、国会がそういう仕組みです。実際は、反対派が退席していたことも、立派な多数決ですよね。
2 全員一致ができたわけ
「これまでは派閥の領袖を説得すれば党内がまとまったが、派閥の結束力の低下で、多数決はやむなし」(読売新聞)との解説もありますが、それは副次的なものだと思います。
基本的には、「全員一致の政策しか実施しない」ことを、続けてきたからではないでしょうか。単純に言えば、右肩上がりの時代にその財源を配分すること、その他の困難な課題は先送りする、ということができたからでしょう。
痛みを伴う改革の場合は、反対派がいるでしょう。それを「全会一致」とすれば、改革は進みません。
総務会長が「今後の前例になるだろう」と、発言しておられます。そうでしょう。もっとも、党則には「出席者の過半数で決し」と書かれているので、原則に戻っただけとも言えます。
3 内閣と与党の関係
「自民、首相出番作らず」(毎日新聞)、「首相、中身より成立。改革イメージに陰りも」(産経新聞)という解説もありました。与党の党首が首相に選ばれる議院内閣制でありながら、日本の場合は「内閣と党の二重権力構造」になっています。これについては、「省庁改革の現場から」p198に書きました。今回も、それを考えさせる事例でした。
三位一体改革の場合は、「続・進む三位一体改革」p143に「与党との関係」で解説しました。また、首相の出番と改革イメージについては、同じくp159の注91、注93を見てください。(6月29日)
30日読売新聞吉田和真記者は、今回の法案の与党修正について、次のような指摘をしていました。
「内容の評価はともかく、立法過程のあり方として、修正合意は前向きにとらえることができる。政府が提出した法案について、国会審議を通じて問題点が指摘され、それを踏まえて政府・与党が協議、決着させたものといえるからだ」「従来、政府の法案は、与党の事前審査制の慣行により、政府・与党間で綿密に調整され、与党が了承した上で国会に提出されている。この時点で、与党は採決時の党議拘束もかける。したがって、提出後、与党は原案通りの成立を目指すことになり、国会審議の形骸化につながっている」

わたくし流

2005年6月27日   岡本全勝

林望著「帰宅の時代」(新潮社、2005年)の表題が気になって、また、リンボウ先生の本は結構好きなんで、読みました。「会社人間だけではだめ」という私の主張(「新地方自治入門」p322、「明るい係長講座」)が、より過激に、リンボウ先生流に書かれています。「アフター5はクールに別れる」「家に帰ろう」「ファッションは何を着るかではない」「他人と違うことに誇りを持て」などなど、うなずくところが多いです。
「勤務時間外まで、仕事でつきあわず、自分の時間を持て」という主義を、私も実行しつつあるのですが、なかなか徹底するのは難しいです。でも、会社も役所も最後まで面倒を見てくれないことが見えた今では、時間外まで組織に忠誠を尽くすより、自分の時間を作ることは必要ですよね。
そのほか、「家庭は個人主義の学校」という主張は、眼を開かれました。家族だって、違った主張や個性を持った存在であり、それが同居していることの意義についてです。

日本の文化

2005年6月25日   岡本全勝

烏賀陽弘道著「Jポップとは何か」(岩波新書、2005)が、面白かったです。Jポップ(演歌でもアイドルでもない、若者ポピュラーソングとも言うのでしょうか)は、私にはフルートの演奏対象にもならず、そもそも理解し難く、縁がないのですが、日本社会を勉強するために読みました。
宇多田ヒカル以外の歌手の英語歌詞は、英語としては成立せず、ネイティブが聴いて鑑賞には堪えないこと。宇多田ヒカルを含めて、海外ではまったく売れていないこと。日本人が日本人だけで、インターナショナルなような気になっていること。
ポピュラー音楽の輸出がほぼゼロ(売れているのはアニメソング)に対し、日本市場では輸入が圧倒的に多いこと。そして、日本製の音楽は、国内市場だけで成り立っていること。拙著で書いた「まれびと志向」や「情報の単一市場」p320が、極端な形で現れているのですね。
その他にも、日本のカラオケ参加人口は約5,000万人で、音楽鑑賞人口4,500万人より多い。CD生産額は最高6,000億円に対し、カラオケ料金は7,800億円。カラオケボックス利用者の6割が30歳以下に対し、酒場でのカラオケは7割が30歳以上。「カラオケは、自己表現の消費」など。日本社会を考えるいい教材です。

過去の分析と未来の創造と:官僚の限界

2005年6月24日   岡本全勝

東京大学出版会のPR誌「UP」6月号に、原島博教授が「理系の人間から見ると、文系の先生は過去の分析が主で、過去から現在を見て、現在で止まっているように見える。未来のことはあまり語らない。一方、工学は、現在の部分は産業界がやっているで、工学部はいつも5年先、10年先の未来を考えていないと成り立たない」といった趣旨のことを話しておられます。
この文章を読んだときに、私は「これだ」と叫んでしまいました。社会科学系の学者さん(の多く)も、社会を分析をしておられるのに、なぜ現実に対し有用でないか。理由はこれだったんです。

官僚の多くにも、これが当てはまります。法律の解釈や、事象の解説は天下一品ですが、じゃあどうするのか、どう改革するのかになると、とたんに沈黙するのです。できあがった法律の解釈学に甘んじ、改革に対してはいろいろ理屈をこねては抵抗する。これでは、国民の支持は得られませんよね。「政治主導」「小泉改革」の「引き立て役」ですか。
「国庫補助金改革の中味」を官僚が決められず、地方団体に選んでもらう。そしてそれに対し、「地方団体の意見がまとまらないなら、改革は進めない」「お手並み拝見」などと、評論家みたいなことを言っている。これでは、官僚の存在理由はないです。