三位一体改革20

【国と地方の協議会】
昨日(14日)、首相官邸で三位一体改革についての関係閣僚と地方団体代表との協議会初会合が開かれました。各新聞が、大きく伝えています。そこからいくつか。
(各省の反対、でも・・)
まず、「閣僚が反対論」「異論続出」「省庁は抵抗宣言」などなど。これは事前に予想されたことです。これに関しては、「補助金存続を図る関係省庁が、削減リストをまとめた地方に必要性を力説するという『逆陳情』の場となった」
「もともと補助金を受け取る地方側が『返上』を申し出てスタートした協議だけに、いくら必要性を強調しても、旗色はよくない」
「自民党族議員を通じての抵抗という古典的手法だけでなく、さまざまな手法で補助金温存を図る。・・ただ郵政民営化問題同様、補助金三兆円削減の公約を首相が覆す展開を想像しにくいも事実で、次第に外堀は埋まりつつある」(毎日新聞、野倉恵記者ほか)といった解説があります。
(代案、押し付け合い)
細田官房長官は、「地方案に意見がある場合、提案されている額に見合う代替案を出してほしい」と要請しました(朝日新聞など)。
これについて、「省庁同士で『痛み』をよそに押し付けようという駆け引きも始まっている。・・文部科学省は『代わりに総額の大きな社会保障分野を削減すべきだ」として、代案の検討に着手。これを察知した厚労省の幹部は『他省庁の分に口を出すなんてとんでもない話だ』と怒りをあらわにしている」(読売新聞)とも。
(政治的意味)
私が強調している「新しい政策決定過程」の観点からは、「『実質対等』狙う知事会」「『国の政策決定に地方が参加するための足がかりにしたい』(増田寛也岩手県知事)。政府との協議を、全国の知事たちは、永田町霞が関にくさびを打ち込む好機ととらえている」(朝日新聞)。
読売新聞は「首相としては、地方団体を巻き込んで三位一体改革を進めることで、『新たな政策調整のあり方を考えたい』との思いがあると見られる。地方の『圧力』も利用しながら、補助金削減に抵抗する各省と族議員を押さえ込む狙いもあるようだ」。
(何が評価されているか)
上田雅信全国都道府県議会議長会長は「ボールを政府に投げ返したのに、批判ばかり出ている。そんなに地方は信用がないのか」(朝日新聞)と発言しておられます。
梶原全国知事会長は「役人たちがこちょこちょ動き回ってけしからん」(毎日新聞)、「大臣は、各省の代弁ばかりをしていた。次回の会合からは国全体を考え、国務大臣として行動してほしい」(東京新聞)と言っておられます。そうです、大臣もまた、政治家としてその行動が評価されているのです。(9月15日)
(遂にクイズに)
15日の日本経済新聞夕刊の経済クイズ欄で、「三位一体改革」がテーマになっていました。「遂にそこまで来たか」という感じです。でも、ちょっと難しかったです。(9月15日)
昨日の続きです。15日の朝刊から。
(財務省の責任)
「財務省は『6団体の改革案は「ムダな事業はこの際やめる」といった納税者の視点を欠いている』(谷垣禎一財務相)と反論。総務省が税源移譲の対象とした補助金3.2兆円のうち、1兆円の公共事業関係費は『削減を基本とすべきだ・・』と主張する」(毎日新聞、川口雅浩記者)。
これについては、すでに何度も批判したとおりです。ムダな事業があるのなら、財務省が査定して削減すればいいのです。これでは「財務省は力がないので、地方団体で削ってほしい」と言っているようなものです。財務省は自らの発言の意味をわかっておられるのでしょうか。まさか、「財務省は査定できないので、地方団体に権限を譲る」というのではないでしょうねえ。
(ガス抜きの場?)
「細田官房長官は、政府案決定の段取りについて『地方団体に了承を得るというわけではない。最後は政府として決めさせてもらう」と説明しており、政府内には『協議会が決定の場所なのかあいまいだ』との声もある。
『地方向けのガス抜きの場となるだけで、何かがまとまるはずがない』(財務省幹部)と冷ややかな見方さえ漏れている」(読売新聞)。
前段はその通りです。政府の法律案や予算案を決めるのは、内閣の責任です。協議会には、そこまでの権限はありません。しかし、今回は「政府案のとりまとめを地方団体に依頼した」ことから始まっているのです。総理は地方案を「真摯に受け止める」と言っておられます。地方団体案に「決定的に」不都合な点があれば、微修正をする場でしょう。そうでなければ、原案尊重でしょう。
後段は変ですよね。地方は案を提出しました。代案を出すのは国の側です。まとまらないとすれば、国の方がまっとうな代案を出さないからでしょう。となると、地方案が成案となるのです。その場合は、「地方向けのガス抜きの場」ではなく「各省向けのガス抜きの場」となるのです。
国側の代案をまとめることができるのは、財務省でしょう。でも、これまでの言動と、このような「無責任な」発言をしておられるようでは、まっとうな代案はでてきそうにありませんね。
(後世の批判)
16日の朝日新聞は、協議会の議事録を紹介していました。「閣僚から異論が続出。初会合から、権限を守ろうとする霞が関の『徹底抗戦』ぶりが浮き彫りだ」。なかなか面白いので、ご一読ください。
「国庫負担の現ナマ(補助金)を、地方はなぜ捨てるのか」(河村文部科学相)。この言葉が、国と地方のずれを「集約」しています。お金で全てを考えてきた官僚には、今回の地方分権の意味がわからないのでしょうねえ。
その他の発言も、地方からの議論や常識から「ずれて」います。例えば文科相「義務教育は国家の土台だ」→誰もそれに反対してません。「教育が地方でバラバラでいいわけがない」→かなりの部分で賛成です。でも6・3制を変えようとおっしゃったのは大臣ですよ。そして、今議論しているのは、教員の給与(のしかも財源)です。教育論を教員の給与論にすり替えないでください。
国土交通相「はんらんしたのは県管理の河川。」→これも同様。今は、河川の管理権の話をしているんじゃありません。
梶原拓全国知事会長「地方に任せるとろくなことはないとの声があるが、地方をバカにすることは有権者をバカにすることだ」。その通りだと思います。官僚がこんな認識だと、将来しっぺ返しを受けることになるでしょう。また、政治家も。
議事録が公開されるとよくわかります。評価の基準は、「発言者が後世の批判に耐えられるか」です。
(政治ドラマ)
ある記者さん曰く、「三位一体改革は、本当に面白い政治ドラマを見せてくれますねえ。しかも日本の政治が構造的に変わる現場に、立ち会っているんですから。毎日のように大量の記事を書くのは大変ですが、ありがたいことです。こんな場を設定した小泉総理と麻生大臣に、感謝しなければ。それと、盛り上げてくれる抵抗勢力にも感謝しなければ。」(9月16日)