政治家で見る歴史

塚田富治著『近代イギリス政治家列伝ーかれらは我らの同時代人』(2001年、みすず書房)を読みました。別の件を調べていて、たまたま見つけたのです。
16世紀末エリザベス女王の時代から、17世紀後半チャールズ2世の時代までの、国政を動かした政治家6人の簡単な伝記です。取り上げられた政治家は、クロムウェル以外は、知りませんでした。
エリザベス女王が子がなく死んだ後、平和裏にスコットランド王ジェームズを国王に迎えます。ピューリタン革命で、チャールズ1世が処刑され、クロムウェルが権力を握ります。しかし、彼の死後程なくして、王政復古になります。その歴史は、国王と国民の意識だけで動いたのではなく、政治家たちの活動が導いたものです。

歴史の教科書では、事件と王様の交代は学びましたが、その政治を動かした政治家たちの活躍までは学びません。しかし、時代は自動的に進むのではなく、経済の発展だけが社会を変えるものでもありません。王の意向、国民の意識、社会経済の変化の中で、政治家たちが舵取りをし、あるときは安定と発展をもたらし、あるときは停滞、凋落、さらには戦争や革命を招きます。

それぞれの政治家は、自らの野心や目指す政策をもって、政治に当たりますが、思うようにはいきません。国王の信頼、議会の同意、国民の支持、外国との関係、財源不足などが、彼の選択肢を狭めます。さらに、ライバルとの戦いなど、権力を維持することに時間と力をとられます。それらの人と思惑、勢力のせめぎ合いの結果が、政治なのです。歴史は、後世の人が歴史書で学ぶように、簡単には進みません。
大衆だけで政治が進むのではなく、また一人の政治家だけで進むのでもありません。複数の政治家がどのように権力を争い、政策を争い、国民や政党の支持を取り付けて進めていったか。そのような視点からの見方が重要です。
この項続く。