地仙ちゃんのタノシミ

地仙ちゃんのタノシミ
 さて、明日はいよいよ金陵の町に入ります。
 食堂協会のひとの作戦で、「江南大食い大会」には当日、大会直前に到着するようにしたのです。地仙ちゃんはどこでメシを食べても大食いで目立ってしまうので、前日までに町に入ってしまうと秘密兵器にならないからですね。
「地仙さま、どうか今晩はおラクにしてくださいませ」
 地仙ちゃんたち一行は食堂協会のひとにおカネを出してもらって、金陵の町の郊外の宿屋に着いてラクにすることになりました。
「センセイ~、ラクにするってなんなの~?」
と地仙ちゃんが尋ねます。
「ナニもしないでいるか、スキなことだけしていること・・・かなあ」
と先生がごろごろしながら教えてあげますと、地仙ちゃんはカミナリちゃんの近くに寄って行きまして、なんと突然カミナリちゃんのほっぺたをつねったのです。
「ピリピリ~」
 カミナリちゃんは泣き出しました。
「こらこら、地仙ちゃん、ナニするんだ、カミナリちゃんがかわいそうじゃないか」と先生は叱りましたが、
「ラクにしてスキなことしてみただけなの。カミナリちゃんをイジメるのスキなの」と地仙ちゃんは叱られてもなんとも思ってないふうです。
「イジメるのはスキなことでもやっちゃいけないのっ」
と先生はついつい大きな声で怒りました。
「ではナニだったらしてもいいの?」
「イジメること以外のスキなことすればいいんだよ」
 地仙ちゃんのスキなことはイジメることのほかは食べることと寝ることです。
「おナカいっぱいだし、まだおネムじゃないからスキなことができないの」
「う~ん、地仙ちゃんもナニもしない、ということを覚えないといけないね。無為にして有為の境涯を楽しむのはとてもタイセツなことなんだよ。
 参考までに、「楽」は①のように書く。さて、このモジはナニを象形しているんだろうか、特に上部の左右についているフリフリの部分(点線内)はなんだろうか。
この部分は「糸」という字に似ているので、「楽」は「弦楽器」を指しているんだという説もあるけど、ここはやっぱり、木の柄につけられた鈴のようなモノの象形、という説が一番わかりやすい。
この「鈴のようなモノ」を持って音を出しながら踊ると、神霊が喜んで降りてくる、という降神儀礼をイメージすると、「音楽」のガクと「快楽」のラクの二義を持っているこのモジの意味がはっきりすると思う。「ラク」なことは「音楽」なんだね。

 ちなみに「音」は②。「言」(③)とよく似ているだろう。
③は神様にささげるモジを入れたハコに針を刺したカタチだと以前説明したが、「音」はそのハコの中でナニかが動いている、その音がする、という姿だ。ココロを澄ませているとそういう音が聞こえることがあるのだろうね」
「ということは音楽をするとラクなのね」
 地仙ちゃんはがんがんと茶碗を叩いたりして音楽を鳴らして楽しんでいます。