コボルトその4

目ざましゲコ
 コボルトちゃんは朝起きが苦手です。この日もトモダチのウンデネちゃん(湖や川の精霊です。念のため)と待ち合わせがあったのですが、寝過ごしてしまいました。
「いったいどーゆーつもりよ」とウンデネちゃんはカンカンです。
「ごめんなちゃ~い」とコボルトちゃんはペコペコしたのでした。
 しばらく月日が流れました。またウンデネちゃんと待ち合わせです。
「今度はねぼちゅけチないようにちないといけまちぇん」
 コボルトちゃんは殊勝にも、目覚ましゲコをセットしました。お付のゲコに、
「いいでちゅか、明日の朝、日の出からきっかり一時間後に起こすのでちゅよ」と命令したのです。
 翌朝、日の出から一時間したとき、お付のゲコはゲコゲコと鳴き始めました。巣穴に反響してすごい音になります。それでもコボルトちゃんは起きてきません。
 しかたがないのでお付のゲコはコボルトちゃんの側まで行き、
「ゲコゲコゲーコ」(てめえ、はやく起きろよ)と耳元でがなり立てました。
 しかし、起きません。
「むにゃむにゃ・・・うるちゃ~い・・・」とか言っています。
 ゲコは最後の手段をとりました。コボルトちゃんの首筋にぺたりと冷たい手を引っ付けたのです。
「きゃぴ」とコボルトちゃんは目を覚ましました。しかし、
「ゲコゲコ」(やっと起きたぜ)とほっとしているゲコの方を見て、
「おマエ、いま何時だと思っているんでちゅか・・・まだ早いのに・・・、ひとの夢路を邪魔ちゅるやちゅは・・・チんでちまう・・・」
とだけ言うと、また眠ってしまったのです。
 もちろんこの日も遅刻です。もうウンデネちゃんはカンカンです。
「今度遅れたらただじゃおかないわよ。欧州中の田畑をすべて洪水で押し流してやるわ。世界の滅亡の日が来るのよ」
とほざいています。コボルトちゃんはペコペコするばかりでした。
 さてさて、またまた明日待ち合わせです。今度こそ遅れるわけにはいきません。コボルトちゃんはこのあたり中のゲコを呼び集めて訓示を垂れます。
「いいでちゅか、明日の朝はこの世界が滅ぶかどうかの瀬戸際なのでちゅよ。絶対にあたちを起こちゃないといけまちぇん。どんな手を使ってもいいから起こすのでちゅよ」
 ゲコたちは緊張してお話をうけたまわりました。なにしろ世界の存亡がかかっているのです。はたしてゲコたちに、この重い責務を果たすことができるでしょうか。
                       (採集地:ネボスガンス地方)