新しい東北へのチャレンジ、新しい手法の実験場

昨日6月1日(土曜)と今日2日(日曜)の1泊2日で、復興推進委員会と一緒に、岩手県に視察に行ってきました。先週の土曜日(5月25日)には、宮城県に行ってきました。
推進委員会では「新しい東北」をテーマに議論をしています。単なる復旧に終わらせることなく、未来を切り開こうという考えからです。被災地は、災害以前に、過疎化、少子高齢化、産業空洞化という悪条件にありますが、これは日本社会の最先端を走っているということです。今回の視察では、新しいファンドによる産業再開支援を見てきました。かつてこのページ(2012年5月17日、復興支援ファンド)でも紹介した、「ミュージック・セキュリティー」による「セキュリテ被災地応援ファンド」です。1口=5千円寄付+5千円投資+500円手数料=1万500円でお金を集め、企業の再建を支援します。5千円分の投資には、配当があります(成功すれば)。
今日見たのは、酔仙酒造八木沢商店(醤油・たれ)です。ともに陸前高田の老舗でしたが、津波で流されました。それぞれ別の土地で工場を建てて、営業を再開しています(酔仙酒造八木沢商店)。両社ともこのファンドだけでなく、中小企業庁のグループ補助金や無利子融資などを組み合わせての再開です。また、酔仙酒造は、「トヨタのカイゼン」の指導も受けました。まだ、生産・販売は被災前の水準に戻っていませんが、見通しは明るいようです。
復興庁の『被災地での55の挑戦―企業による復興事業事例集』でも、取り上げています(酔仙酒造1-11八木沢商店1-17)。
説明を聞いていると、「なるほど、この社長(社員)がいるから事業が進むのだ」と思わせるものがあります。被災によって、設備をすべて失うだけでなく、大きな借金も抱えての再チャレンジです。大変な苦労があったと思います。それを顔に出さず、笑い飛ばしておられます。また、このファンドによって、有利な資金を調達しただけでなく、応援団や、協力者も得られたようです。
私は、大震災での救助と復旧は「政府の能力を試すものであった」と説明していますが、これからのまちづくりや産業振興は「政府や社会の新しい取り組みの挑戦の場」だと考えています。これまで政府が取り組んでこなかった分野や、これから取り組まなければならない分野への挑戦です。いろんな手法を試すことができます。やる気のある官僚や公務員、社会起業家には、またとないチャンスです。
「課題先進国・日本」では、いろんな改革や挑戦が提言されています。全国的な企画も重要ですが、私たちが取り組んでいる「東北復興・新しい東北」は現場があり、またいろんな方が応援しようと言ってくださいます。現場で実験できるという強みがあるのです。
「多様な主体による新しい取り組み」については、こちらをご覧ください。
休日にもかかわらず、お相手をしてくださった関係者の方々に、お礼を申し上げます。
現地まで片道5時間。1泊2日の行程の中に、たくさんのメニューを組み込んでくれる「復興庁の手配師兼ツアーコンダクター」には感心するとともに、疲れます(苦笑)。もっとも、詰め込んだ結果は、現地での質疑応答が長引いて、ねじを巻いたり時間調整に「手配師」自らが苦しむことになるのですが。倉井君、綿貫君、ありがとう。