2006欧州随行記5

(地球の表と裏)
実は地球科学から見ると、アイスランドと日本はとても関係がある。地球の反対側にあってと思うでしょうが、そこが重要なのです。来る前に、島村英紀著「地震と火山の島国-極北アイスランドで考えたこと」( 2001年、岩波ジュニア新書 )で、勉強してきました。これは良い本です。ぜひご一読を。
簡単に言うと、地球内部からマグマが浮き上がってきて、地球の表面の薄皮であるプレートをつくる。その割れ目から吹き出す溶岩が作ったのがアイスランド。そこから、西に行くのが北米プレートで、東に行くのがユーラシアプレート。そしてその薄皮が裏側で出会って、ぶつかりながら沈むのが日本。日本の地震を作っている原因は、遠くたどればアイスランドにある。
アイスランドに聖徳太子がいて、小野妹子に手紙を持たせて日本に派遣すると、「地出ずるところの大統領、書を地没するところの天皇にいたす。つつがなきや・・」となるだろう。
よって、両国とも火山があり、温泉があり、地震がある。もっともこちらの地震は、回数は多いが規模は大きくない。日本は薄皮がぶつかって沈む際に、片一方が引きずり込まれ、それが元に戻る際に大きく揺れる。こっちは、噴水のように吹き上げ両側に分かれていくので、そんなことはない。
地球の割れ目-向こうまで5kmほどある。手前は溶岩の割れ目。
地球の割れ目を見たが、雄大なもの。もちろん、一か所が割れ目ということでなく、長くつながっているはずで、見学地点は地表でよく見えるところ。別に見学した地熱発電所の建物は、割れ目の上に建っていた。毎年2センチずつ股割きにあっていると、聞いた。
見学地点では、割れ目は5キロほどの幅がある。両側は崖が切り立っていて、その間は土と水で覆われ、割れ目そのものは見えない。しかし、崖のあたりでは、溶岩に無数のひび割れが並行して入っている。カステラを手で割る時のように、きれいに一カ所で切れず、いくつものひび割れが並行して走るのと同じだということらしい。それらの割れ目は、幅は数10㎝のものから数メートルのものまで、深さはよくわからない。詳しくは、「地震と火山の島国」を見てください。
(その他の特徴)
火山、温泉などの他にも、アイスランドと日本との共通点はある。まず、漁業。暖流と寒流が出会う島で、良い漁場になる。そして、長寿。これは、肉でなく魚を多く食べていることによるのかもしれない。
短期間の滞在だったが、私たちは多くの見るべきものを見せてもらった。白夜を体験し、といっても途中は寝てしまったが。タラ料理を食べ、地球の割れ目も間欠泉も見た。レーガン大統領とゴルバチョフ書記長が会見した家も見た。冷戦の終了を切り開いた、レイキャビック会談の場所である。アイスランド名物で見ていないのは、オーロラ、氷河、大きな温泉か。
レイキャビック会談の家。手を置いているパネルに解説がある。
(したたかに生きる)
EUには加盟していない。通貨もアイスランドクローネを使っている。しかし、多くの部分はEUと共通にしている。入国管理もEU並み。EUからは加盟を催促されているとのこと。加盟しない一番の理由は、排他的水域=漁業権の問題のようである。EUに入るとその範囲が狭められ、損をするらしい。どうも、良いとこ取りをしているように見える。
街に近い飛行場は近距離用で、これはイギリス軍が作ったのを使っている。遠い方は遠距離用で、これはアメリが軍が作ったものを共用している。現在はNATO軍が管理していて、近く全面的にアイスランドに引き渡される。
第2次大戦時は中立を宣言したが、イギリス軍に、次いでアメリカ軍に占領された。といっても、ドイツに取られないために、保護下に置いたということ。確かに、この中間地点は、戦略上重要だ。もう少し南に位置していたら、昔から争奪戦のまっただ中にあっただろう。レイキャビック会談が行われたのも、中間地点ということから選ばれた。
大国の保護の下に、もらうものはもらっている。冷戦を上手に生きた、と言っていいのだろう。漁業をめぐるイギリスとの戦いについても、「地震と火山の島国」を参照してください。