地方制度調査会2003.5.23意見概要

平成15年5月23日 第27次地方制度調査会
「地方税財政のあり方についての意見-地方分権推進のための三位一体改革の進め方について-」の概要
Ⅰ 経緯
○ 平成13年11月19日に内閣総理大臣から「社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度の構造改革」について諮問。
○ 平成14年7月1日の総会で5点の調査審議事項が決定。そのうちの一つが「地方税財政のあり方」。
○ 地方分権改革の残された最大の課題の一つは、地方税財政の問題。
○ 一方、政府においては、平成14年6月25日に基本方針2002を閣議決定。このなかで、三位一体の改革の検討と改革案を1年以内を目途にとりまとめることとされており、その検討作業も大詰め。
○ そのため、地方制度調査会としても、この三位一体の改革にしぼって、地方分権の推進の基本に立ち返り、その考え方を整理し、今回、意見として提出。
○ 三位一体の改革が、地方分権推進の流れに沿って実現することを強く期待。
Ⅱ 内容
1 地方財政の現状と課題
○ 我が国の内政を取り巻く環境は大きく変貌してきており、今後は、新たな課題に迅速・的確に対応できるよう、国と地方の関係は地方分権型の新しい行政システムへ移行していくことが必要。
○ 三位一体の改革の具体化は、地方分権時代に相応しい地方税財政基盤の確立という目的を基本に据えて進めていくことが必要。
○ 現下の地方財政は、非常事態ともいうべき厳しい状況。このため国・地方を通ずる徹底した行財政の簡素・効率化を進め、公共サービスと国民負担のバランスの再検討などを議論していくことも必要。
2 三位一体の改革の推進
(1)基本的な考え方
○ 三位一体の改革は、地方分権の理念を踏まえ、歳出面で国の関与の廃止・縮減により地方の自由度を高めるとともに、歳入面では地方税のウエイトを高めることを基本とすべき。その際、税源移譲・地方交付税の見直し・国庫補助負担金の廃止縮減等の改革を同時併行して一体のものとして相互にバランスを図りながら進めていくことが重要。
○ 具体的には、国庫補助負担金を廃止・縮減した上で、その財源を地方に移譲するとともに、地方交付税の一部も国庫補助負担金の廃止・縮減による移譲額とのバランスを考慮しながら、これを地方税へ振り替えることを基本的な方向とすべき。
○ これにより自立的な財政運営を営むことができる地方公共団体を増加させることを目指す。
(2)税源移譲を含む税源配分の見直し
○ 税源移譲を含む国と地方の税源配分の見直しに当たっては、応益性や負担分任性という地方税の性格に十分留意しつつ、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築する必要。
○ 個人住民税の拡充・比例税率化、地方消費税の拡充などを中心に進めるべき。
○ こうした取組みを進めることにより、租税総額に占める地方税のウエイトを高め、国税と地方税の税源配分が1:1となることを目指すべき。
○ 地方公共団体が、課税自主権をさらに活用しやすくなるような方策を検討する必要。なお、課税自主権の活用で地方の税財政基盤の拡充を図ることには限界。
(3)地方交付税の改革
○ 国が地方公共団体に対して、仕事の義務付け又は実質的に地域格差を容認しないことを前提に仕事を委ねる仕組みが存続している限りにおいては、地方交付税を通じた財源保障は必要不可欠。
○ 税源移譲に伴う地方公共団体間の財政力格差の拡大には各種方策を検討し、対応。なお残る財政力格差に対処するためには、財源調整・財源保障機能を一体として果たす地方交付税の役割は重要。
○ 水平的財政調整制度については、地方税の基本的性格に関わる等根本的な問題があり、その実現は困難。
○ 交付税の総額については、国庫補助負担金の廃止・縮減、税源移譲規模等に対応し、バランスを考慮しながら、見直し。さらに「改革と展望」の期間中には、地方財政計画の歳出を中期的な目標の下に計画的に抑制し、交付税所要額を抑制。
○ 地方交付税の算定方法については、地方の自主的・自立的・効率的な財政運営を促す方向で見直し。事業費補正・段階補正の見直しを引き続き実施。
(4)国庫補助負担金の廃止・縮減
○ これまでの閣議決定等に従い、少なくとも「改革と展望」の期間中 に数兆円規模の削減を目指すべき。
○ 国庫補助負担金の削減方針は、これまでの地方分権論議や各種閣議決定等において、具体的に示されているところであるが、地方制度調査会としても、これらを集約した基準を具体的に提示。
○ なお、三位一体の改革の中で、国庫補助負担金の廃止・縮減後、引き続き事務事業が存続するものについては、税源移譲等により所要の財源措置が講じられることが必要。単なる地方への負担転嫁であってはならない。