社会学的想像力と政治的想像力

「社会学的想像力」は、アメリカの社会学者C・ライト・ミルズが、同名の書で唱えた概念です。
社会学を学ぶ意味とは何か、それは日々遭遇する困難を根本的に解決するにはどうすればよいかを考えることで、そのためには日常を社会と関連づけて捉える知性が必要である。その知性が社会学的想像力であり、社会学の最大の効用であると主張します。個人の身近な生活の問題を広い文脈(社会)と結びつけて考える能力です。

「社会学、社会科学とはなんぞや」を考えていて、「実用社会学への期待」「実用の学と説明の学」に行き着きました。長谷川公一先生ありがとうございました。
それに触発されて、社会学的想像力を思い出しました。
ミルズは、この大前提を元に、さまざまな社会学、特に抽象的な体系論を批判します。私の問題関心「実用の学と説明の学」に、ぴったりの説明です。

社会の問題、暮らしていく際の困難を考える、その際に個人の暮らしから考えるという「社会学的想像力」は、わかりやすいです。人が暮らしていく際の困難を社会から考えることが社会学の役割、その際の手法が社会学的想像力とすると、その問題を解決するのが政治の役割です。続く

犯罪が減っても体感治安は悪く

12月3日の日経新聞に「犯罪減っても体感治安は? 戦後最も安全 実感できぬ理由」が載っていました。

・・・犯罪の認知件数は約20年で5分の1以下に激減した。日本の社会は数字上「戦後最も安全」であることを示す。しかし「治安は悪くなった」と感じている人は多い。なぜか。背景を探った。

刑法などに触れる刑法犯の認知件数は2002年の約285万件をピークに減り続け、21年は約56万件と7年連続で戦後最少を更新した。
減った原因はさまざまだ。刑法犯はバブル期の1980年代から増加傾向が鮮明になり、90年代後半に急増。「治安」が重要な政治課題になった。犯罪を防ぐ法改正や警察官の増員、頑丈なカギや防犯カメラの普及など官民挙げて対策を講じた。国民の防犯意識も高まった。地域の防犯ボランティアの数は03年の約18万人から20年末には約248万人に増えた。

法務省法務総合研究所によると、認知件数の減少は「刑法犯の7割以上を占める窃盗の件数が大幅に減少し続けた影響」が大きい。なぜ窃盗は減ったのか。防犯を研究する立正大学教授の小宮信夫さん(犯罪学)は「特殊な用具でカギをあけるピッキングが激減した。とりわけ中国から来た窃盗団がほとんど消えた。この20年で日中の経済格差が縮小したため、日本で稼ぐ必要がなくなった」とみる。

ところが、人々は安全や安心を実感していない。内閣府が1月に発表した世論調査では、日常生活での悩みや不安について「感じている」「どちらかといえば感じている」と答えた人は77.6%と過去最多になった。
警察庁が21年11月に実施した、この10年の日本の治安に関する関するアンケートでは、合わせて64.1%の人が「悪くなった」「どちらかといえば悪くなった」と答えた。いわゆる体感治安が悪化しているのだ。悪化を感じる人が思い浮かべた犯罪(複数回答)は無差別殺傷事件が約8割で最多。オレオレ詐欺などの特殊詐欺が約7割で続いた。
刑法犯が全体で減る中、特殊詐欺やネットを利用したサイバー犯罪など「非対面型」の犯行は増えている。21年のサイバー犯罪の検挙数は前年比約24%増の1万2275件と過去最多。「見えれば」身を守りやすいが、無差別殺人も特殊詐欺もサイバー犯罪も「相手が見えない」犯罪だ。「見えないことが不安をあおる」(小宮さん)・・・

小学校は楽しい

知り合いの娘さんの小学生が、毎朝、校門が開く前に登校しています。
お母さんが「そんなに学校が楽しいの?」と聞くと、友達と遊ぶのが楽しいのだそうです。もう一つ、給食が楽しみで、お代わりもしているようです。
「勉強が楽しい」とは言わないのかな。

私の学校時代を思い出しても、友達と遊んだ時間、登下校の語らい、給食の時間は楽しかったです。私は、そんなに早く登校しませんでしたが。
学校は、勉強だけをする場所ではないですよね。コロナ禍で登校できないことは、とても悲しいことです。
職場も同じだと思います。在宅勤務はつまらないですよね。あなたはどうですか。

公文書の管理、諸外国との違い

11月26日の日経新聞に「公文書軽視 浮き彫りに 米は職員のメールも管理」が載っていました。森友学園に関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、大阪地裁が25日、元国税庁長官への賠償請求を退ける判決を下したことの解説記事です(ネット記事は紙面とは少し異なっているようです)。

・・・改ざん問題を受けて国は2018年、各府省庁に専門部署を設置するといった公文書の監視強化を柱とする再発防止策を取りまとめた。同時に公務員の意識改革を進めようと、新規採用職員に文書管理の方法に関する研修も始めた。
しかし、京都大学の奈良岡聰智教授(日本政治外交史)は「公的な責任を負う組織が文書を保存・公開し、後世に検証できるようにするという意識が日本の社会に根付いていない」と指摘。その証左として欧米との所蔵量の違いや管理を担当する職員数の格差を挙げる。

公文書の所蔵量は書架の長さで比較する。国立公文書館の22年3月時点のまとめでは、日本は69キロメートル。米国の約1500キロ、ドイツやフランスの400キロ台より圧倒的に少なく「所蔵量の多寡は保存対象とする文書の範囲の違いにも起因している」(奈良岡氏)。
日本では公務員個人が職務上発信したメールに重要な内容が書かれていても「私的メモ」と解釈して公文書に含まれていないケースがある。これに対し、米国の連邦記録法は政府職員に原則、職務に関して公用のメールアドレスの利用を義務付け、全ての記録を国が管理すると規定する。

大統領の場合は退任時、在任中の職務に関する記録はメモやメールを含めた全てを国立公文書記録管理局に提出するよう大統領記録法で定められている。英国に目を向ければ、二大政党(保守党、労働党)の党運営に関わる文書についても行政文書に準じる形で自主的に保存・公開している。

公文書を管理する機関の職員数も、米国が約2750人、欧州諸国は500~600人台だが、日本は約200人にとどまる・・・

統合失調症

11月26日の日経新聞に「統合失調症をもっと知る 回復して社会復帰も」が載っていました。

・・・かつては精神分裂病と呼ばれていた統合失調症。妄想や幻覚の症状ばかりが注目されがちで、治らない病気だと誤解されることも少なくない。適切な治療で、安定した生活に戻れることを知っておきたい。
統合失調症は約100人に1人が発症する身近な精神疾患である。多くは思春期から青年期に発症し、男女で罹患率の差は見られない。
2002年に病名が精神分裂病から変更された。その理由には「病気への偏見や差別が影響していた」と話すのは、国立精神・神経医療研究センター理事長の中込和幸医師。しかし、病名が変わっても発症をオープンにする人はまれで、罹患率の割には身近に感じられない病気のままだ。発症すると入院治療が続くと思われがちだが、通院で回復し社会復帰する人も多い。

病気の原因はいまだ明らかになっていないが、遺伝的な気質に加え、強いストレスがかかることがきっかけで発症すると認識されている。
治療には薬物療法や心理社会的療法が行われる。薬物療法は発症初期ほど効果が高い。病気の特徴に病識(自分が病気だという認識)がないことが挙げられるが「心理教育で病気が理解できると、能動的に病気と向き合え再発予防になる」と中込医師。
この病気は再発率が高く、再発につながるストレスのコントロールが必要だ。受験、進学、就職、結婚など環境の変化はストレスが生じやすく、再発リスクを高める。生活リズムを整え、心の負担を減らすよう心がけたい・・・

私を含め多くの人は、この病気について詳しくは知らないでしょう。学校でも社会でも教えてもらえませんでした。100人に1人の割合で発症するなら、個人はもちろん、管理職としては知っておかなければならない知識です。