犯罪が減っても体感治安は悪く

12月3日の日経新聞に「犯罪減っても体感治安は? 戦後最も安全 実感できぬ理由」が載っていました。

・・・犯罪の認知件数は約20年で5分の1以下に激減した。日本の社会は数字上「戦後最も安全」であることを示す。しかし「治安は悪くなった」と感じている人は多い。なぜか。背景を探った。

刑法などに触れる刑法犯の認知件数は2002年の約285万件をピークに減り続け、21年は約56万件と7年連続で戦後最少を更新した。
減った原因はさまざまだ。刑法犯はバブル期の1980年代から増加傾向が鮮明になり、90年代後半に急増。「治安」が重要な政治課題になった。犯罪を防ぐ法改正や警察官の増員、頑丈なカギや防犯カメラの普及など官民挙げて対策を講じた。国民の防犯意識も高まった。地域の防犯ボランティアの数は03年の約18万人から20年末には約248万人に増えた。

法務省法務総合研究所によると、認知件数の減少は「刑法犯の7割以上を占める窃盗の件数が大幅に減少し続けた影響」が大きい。なぜ窃盗は減ったのか。防犯を研究する立正大学教授の小宮信夫さん(犯罪学)は「特殊な用具でカギをあけるピッキングが激減した。とりわけ中国から来た窃盗団がほとんど消えた。この20年で日中の経済格差が縮小したため、日本で稼ぐ必要がなくなった」とみる。

ところが、人々は安全や安心を実感していない。内閣府が1月に発表した世論調査では、日常生活での悩みや不安について「感じている」「どちらかといえば感じている」と答えた人は77.6%と過去最多になった。
警察庁が21年11月に実施した、この10年の日本の治安に関する関するアンケートでは、合わせて64.1%の人が「悪くなった」「どちらかといえば悪くなった」と答えた。いわゆる体感治安が悪化しているのだ。悪化を感じる人が思い浮かべた犯罪(複数回答)は無差別殺傷事件が約8割で最多。オレオレ詐欺などの特殊詐欺が約7割で続いた。
刑法犯が全体で減る中、特殊詐欺やネットを利用したサイバー犯罪など「非対面型」の犯行は増えている。21年のサイバー犯罪の検挙数は前年比約24%増の1万2275件と過去最多。「見えれば」身を守りやすいが、無差別殺人も特殊詐欺もサイバー犯罪も「相手が見えない」犯罪だ。「見えないことが不安をあおる」(小宮さん)・・・