日本原子力学会が、3月27日に「事故調査委員会中間報告」を発表し、その中で歴代幹部へのアンケート結果(289人中101人が回答)を載せています。各紙が報道していたので、読まれた方もおられるでしょう。主な問と回答を紹介します。
「私たちはなぜ、事故を防止できなかったのか」との問には、スリーマイル島やチェルノブイリ事故の教訓を学ばなかった。安全性に対する慢心、自信過剰、謙虚さの欠如。
「私たちのどこに問題があったのか」には、電力会社に遠慮することなく、日本の原発が外国のそれよりも危険であることを、勇気を持って直言すべきだった。異議を唱えることは、原子力反対派に見られるのではないかと、勇気が要ることだった。
「私たちはこれから何をすべきか」には、事故直後の学会対応は、極めて悪い。原理力専門家としての反省のメッセージが出なかった。信頼を失う一因であった。学会は基本的に同好会組織であり、事故に対して動くには別に組織を作るべき。
中間報告書本文では「7 原子力学会の役割と責任」、アンケート結果は最後についています。
学会が「同好の士」とは極端ですが、同じ「知的共同体」「政策コミュニティ」に属する人たちですから、「ムラ」になりがちです。さらに、出身大学学部が限られ、就職先も限られるとなると、その傾向は強くなるのでしょうね。その中にあって、自由な議論、反対を許す空気を作る必要があります。でないと、学問の進歩はありません。
学会だけでなく、私たち官庁の職場でも同様です。異論の中に、現在の施策の欠点や、新しい課題が含まれていることもあります。異論を許さない組織は、エピゴーネン(模倣、亜流)しか生まず、進化することなく衰退していきます。
投稿者アーカイブ:岡本全勝
原発事故の真相と東電対策、その2
「今回の大震災は、地震津波災害と原発事故という、全く別の災害を含んでいます」と書きました(4月5日の記事)。発災後直ちに復旧に入ることができる地震津波災害に対し、原発事故はまだ終わっておらず、汚染の強い地域では復旧に入ることができません。
もう一つ、この本を読んで思ったことがあります。この本は、表題の通り、第一原発の事故を取り上げています。対象が、原発と東電、さらにエネルギー政策に絞られています。
私は、原発事故は、2つの側面があったと考えています。一つは、原発事故の収束と後始末です。もう一つは、被災者の生活再建と被災地の復興です。この本は前者を中心に書いてあって、被災者には筆が及んでいません。他方、私の仕事は後者だったので、この本に教えられることが多いものの、何か足りないなと感じたのです。
災害論として取り上げる場合、事故の収束と同様に重要なのは、被災者支援と被災地の復興でしょう。東電の救済もテーマでしょうが、被災者からするとそれよりは、賠償や生活の支援、被災地の復興が重要なテーマでしょう。そちらは、まだまとまった報告や著作が出ていないようです。
なお、同じく第一原発事故を詳しく取り上げたものに、船橋洋一著『カウントダウン・メルトダウン』(2012年12月、文藝春秋)があります。船橋さんの取材を受け、私も取り上げられています(下巻p332)。
大震災の記録、消防
1週間
新年度に入って、1週間が経ちました。新入社員や新しい職場に移った人たちは、新職場に慣れたでしょうか。緊張と他方で少し慣れてきて、疲れが出る頃ですね。
私も、今週もまた、怒濤のような1週間を過ごしました。部下職員が何人も異動して、勝手知ったる部下には通じた「あの資料が・・」というええ加減な指示が、通じなくなりました。
しかし、組織が続くためには、定期的な職員の異動が不可欠です。以前「卒業試験」に落第した若手職員も、無事卒業しました(2月23日の記事)。さらなる活躍と成長を期待しています。厳しい岡本学校(岡本組)で鍛えられたのですから、能力は折り紙付きです。
今日土曜日は、いつものように、資料整理と頭の整理に出勤。すごくはかどりました。夕方帰りの地下鉄で、旧知の「政府中官」(高官まではいきませんがかなりの幹部職員)に、ばったり出くわしました。お互いに「今日も出勤ですか・・」「××の対応でね」と。
新入生諸君。おじさんたちも、がんばっているんだよ。
しかし、週末しか整理の時間がとれないこの「勤務実態」は、どうにかしなければなりません。
分け入っても分け入っても青い山。山頭火。
分け入っても分け入っても仕事の山。
原発事故の真相と東電対策
大鹿靖明著『メルトダウン―ドキュメント福島第一原発事故』(2013年、講談社文庫)を読みました。著者は朝日新聞記者で、元になった単行本は2012年1月に発行され、講談社ノンフィクション賞を受賞しています。この文庫本は、その後の動きも取り入れた増補版です。
単行本が昨年1月に出たときは、知りませんでした。私の所管は、被災者の支援と被災地の復興で、原発事故への対処は所管外でした。この2年間に、大震災関連の本は山のように出版され、とても目を通すことはできません。
この本は、読み応えがありました。お勧めです。原発事故(メルトダウン、水素爆発)時の東電と政府の対応、その後の東電の救済、脱原発の動きと反対の動きが、詳細に書かれています。主たる舞台は、第一原発、官邸、東電本社です。主役は、原発所長、東電幹部、官邸幹部、経産省幹部です。
官僚も実名で出てきます。公表資料とともに関係者の証言に基づいていて、それぞれの出典や情報源が書かれています。匿名のものもあります。良くこれだけ、証言を集めたものです。これだけも証言をした職員がいることに、驚きます。第一級の政府論、行政論でしょう。もちろん、当事者は反論したいこともあるでしょうが。
文庫本といっても、600ページもの大部です。調査報告書などは取っつきにくいですが、この本はドキュメンタリーなので読みやすいです。
私たち(被災者生活支援チーム)が、47万人に上る被災者支援に力を入れていたときに、政府の別のところでは、このようなことが行われていたのですね。近くにいても、知らないものです。
今回の大震災は、地震津波災害と原発事故という、全く別の災害を含んでいます。地震津波災害は、津波が去ったときには災害自体は終わっていて、そこから救助と復旧が始まります。私たちが、これに取り組みました。
原発事故は、放射能汚染が残っていて、津波にたとえれば、まだ水が引いていないのです。避難された方のお世話は、地震津波災害と同様に、被災者生活支援チームが引き受けました。しかし、被災地の復旧については、復旧の前に、原子炉の安定、賠償、除染が必要です。そして、避難が解除されて初めて、住民が帰還でき復旧が本格化できるのです。避難解除は、まだ一部でしかできていません。
政府の災害対策本部も、地震津波と原発事故の2つに分かれています。原発事故の収束については、こちら。