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研究者の倫理、阪大医学部長

NHK大阪の14日のニュースで、大阪大学医学部が学生に倫理の教育をしているニュースが出ていました。でも、これって当然ですよね。公務員でも、採用時に公務員法や倫理等を教えます。
ところで、社会の問題に触れながら、内輪ネタが続いて、恐縮ですが。ニュースの最後に、金田安史研究科長(医学部長)が、映像と説明で出ています。奈良女子大附属高校の同級生です。金田君はまじめな優等生で、小生は・・(今のまま)でした。彼は、面影もその当時のままです。同級生から、このニュースを教えてもらいました。

有能な上司、間違いの指摘は鋭い。けれど・・

かつて、このような上司を見たことがあります。
部下が案を持っていくと、A課長(としておきましょう)は、的確に間違いを指摘します。鋭い指摘なので、その能力に部下は感心します。それが何回か繰り返されます。そのたびに、的確な指摘があって、ますますその上司の能力に感心します。ところが、部下は何か釈然としないのです。毎回、良い指摘をされるのですが、その起案は、前に進まないのです。
部下が別の上司(Bさん)に相談したところ、Bさんは一言で表現しました。「Aさんは、自分ではペンを持たないだろう」と。そうなのです、A課長は部下の間違いは指摘してくれるのですが、修正案を出してはくれないのです。「自分で考えろ」ということなのでしょう。でも、何回も差し戻しが続くと、時間は経つし、部下はだんだんやる気をなくします。
もう一つの例を出しましょう。Cさんも、部下が案を持ち込むと、鋭い指摘をしてくれます。ただし、Cさんは代案を出したり、進むべき方向を示してくれます。それも正しい導きなので、部下は「さすがCさんだ」と、感心します。仕事も進みます。
ところが、横から見ていると、Cさんの部署は、必ずしも成果を上げていないのです。なぜか。それは、Cさんが部下が持ち込んだ案には、すばらしい指摘や助言をしてくれるのですが、その部署が何をすべきかを示さないからなのです。
毎年同じような業務をしている部署なら、仕事のテーマは部下に任せて、前年通りにしておれば成果が上がるでしょう。しかし、多くの部署で、課題はどんどん変わっていきます。でも、部下は、前年通りの仕事しか上げてきません。新しい課題を把握して、その課題にどう取り組むか。それを、部下に示さないと、去年通りの仕事は良くできたけれど、新しい課題は放置されたままになります。それでは、その部署としては、期待に応えていないことになります。
前年通りなら、部下に任せておけばすみます。しかし、新しい課題を見つけ、それへの取り組みを指示するのが、上司の務めです。
時々思い出しては、自分がAさんやCさんにならないように、自戒しています。

企業や団体向けの災害支援の手引き、2

この冊子は、関係した企業、NPO、そしてそれらをつないだ中間団体が集まって、無償で作ってくれました(冊子は、印刷費がかかるので、1部1,000円です)。
先日、その方々と、意見交換をしました。その時の議論です。
・企業の社会的貢献は、新しい段階に入った。社会に認識されたし、会社も認識を高めた。
・発災直後は、何を支援したらよいかが見えやすい。復興期になると、現地でのニーズが変わってきた。義援金や物資の提供と比べ、難しい。
・継続的かつ専門的な支援は、個人ボランティアでは限界がある。組織がしっかりしているNPOや企業の役割は大きい。
・支援したい企業と受ける地域をつなぐ、団体や機能が重要である。どこでどのようなことが望まれているかと、どの会社が何を支援できるかとを、つなぐ機能である。
・「ある地域で、この会社が、こんな支援をした」ということがわかれば、他の地域でも「私の町でも、それをして欲しい」と、要望の手が上がるだろう。他方で、他の企業も、「私の会社も、それなら支援できます」と手を上げるだろう。
すると、私たちの次なる仕事は、良い事例の周知と、企業と被災地をつなぐことです。前者についてはマスコミにも期待するとして、後者は関係者と試みてみます。ご協力ください。なお、復興庁では、企業による支援の類型を表にしました(応急復旧期復興期)。もっとも、この表では企業の名前や受け手の場所が出てこないので、わかりにくいです。

松原先生の書庫

先日(4月7日)紹介した、松原隆一郎先生の『書庫を建てる  1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト』(2014年、新潮社)。その書庫を見せていただきました。我が家からは、歩いてすぐのところです。
実物も、予想以上の立派さで、感激しました。先生におねだりして、先生がゆったりできると書いておられた、1階の階段下に座らせてもらいました。納得。
設計された堀部安嗣先生が、「もう2度とできない」とおっしゃっていましたが、まあ、知恵と工夫の結晶です。このような書庫を建てて欲しい研究者や読書家は、たくさんいると思います。みんな蔵書の置き場や、部屋の床が抜けることに困っているのですから。この書庫を基本形にして、サイズを大きくするとか、付属室を変えるとか。
もう一つの圧巻は、書棚に並んだ本の数々です。多くの棚で、私の関心と重なる本が並んでいました。
うらやましいです。自分の集めた本を、ほぼすべて収納できる。しかも、螺旋階段で、全てを一望できるのです。書庫を作るというのは、本好きにとっての「男子の本懐」ですよね。しかし、先生の書庫をうらやむ前に、我が書斎、いえ今や書庫になっている6畳間は、読みもしない本を捨てることが先決です。その決心がつかなくてねえ・・。優柔不断です。

震災の検証、津波災害と原発事故

3月26日の参議院復興特別委員会で、平野達男議員(前復興大臣)が、震災の検証について検証し、質問をしておられます。詳しくは議事録(平野議員の質問は最後です)を読んでもらうとして、要点は次のようなものです。
・東日本大震災について、地震と津波災害については、中央防災会議の中に検証委員会を作って、検証した。何が起きたのか、なぜ予想できなかったか、被災地ではどのようなことが起きたかを、検証した。
・他方、原発事故については、政府事故調、国会事故調、民間事故調、東電による調査会の4つが検証をしたが、原発の爆発とメルトダウンを主な対象としている。住民の避難については、実態調査も国の対応の検証も行われていない。
これに対して、内閣府副大臣が、現在、原発事故に伴う避難実態のアンケート調査をしている旨を答えています。

発災当時、私は地震津波避難者の支援に当たっていました。原発から30キロ圏内は立入禁止になったので、状態はわかりませんでした。そこから逃げてこられた避難者は、私たち被災者生活支援本部でお世話することにしました。避難してこられた方が、津波被災者なのか原発避難者なのかわからないからです。また、逃げてこられた方に、「あなたは、原発事故ですから別です」とは言えません。
原発事故がどうなっているかも、新聞報道でしか知りませんでした。原発事故対応は官邸で、総理、官房長官、官房副長官(参議院)によって行われ、私の被災者生活支援本部は道を隔てた内閣府の建物で、防災大臣、官房副長官(衆議院)、平野内閣府副大臣らで対応していました(当時の分担図)。
少し落ち着いたとき、私が官邸で原発事故対応に当たったら、何をしなければならなかったかを、考えてみました。危機管理の思考訓練です。もちろん、現場におらず、専門知識も無い、情報も持っていないので、一官僚としての思考訓練でしかありません。
まず、課題は何か。津波と違い、事故が続いています。すると、事故を終わらせること、すなわち原発を冷温停止させること、爆発をさせないことです。もう一つは、周辺の危険な区域から、住民を避難させることです。工場の爆発事故を想定してください。工場長と消防や警察がしなければならないことは、消火と次の爆発の防止、そして周辺住民の避難です。工場内で事故の収束させることと、工場外での安全の確保です。これは、今回の原発事故にも当てはまります。
すると、私なら、次のようなことをしたでしょう。まず、全体の責任者に、次のように進言します。「原発内の事故収束責任者と、原発外の安全確保責任者を、それぞれ1人ずつ決めて、権限と責任を持たせてください」と。そして、危機管理センターの壁には、2つの地図を貼ります。一つは、原発敷地内の簡単な配置図で、それぞれの炉がどのような状態にあるかなどがわかる図面です。もう一つは、東北地方の地図で、住民をどのように避難誘導するか、どこが安全かの地図です。この2つは、それぞれに重要ですが、必要な知識も違えば、対象とする範囲も違うのです。
もちろん、この2つのチームの下には、それぞれに課題に応じて対策チームがいくつも作られるでしょう。系統樹のようになります。課題ごとや地域ごとの縦割りの専門班と、それらをつなぐ横串班、全体を仕切る参謀班も構成されます。事故や災害の種類によって、対応すべきこと、専門家も異なります。しかし、しなければならない「動作の基本」は同じです。
大きな事故や災害は起きて欲しくありませんが、起きた場合の思考訓練をしておくことは意味があると思っています。