アメリカ大統領選挙、すれ違う争点

11月3日の日経新聞「分断の米国 トランプ氏VS民主 3つのデータ」に、興味深い表が載っていました。「共和・民主支持者が「もっとも重視する政策」はかみ合わない

1999年、2009年、2019年の3回の、両党の重要政策上位5つの対比です。詳しくは原文を見ていただくとして。
1999年は、教育、犯罪対策、社会保障、医療費と4つが共通でした。2009年は、テロ対策、経済、雇用と3つが共通でした。しかし、今回は共通する項目がありません。

アメリカはさておき、日本でこのような表をつくったら、どのような表になるでしょうか。
他国の紹介も必要ですが、ぜひ新聞社の政治部には、そのような検証をお願いします。

ワーク・ライフ・バランスは引き算で

11月2日の朝日新聞オピニオン欄「ワーク・ライフ・・・過労」。渥美由喜さん(東レ経営研究所主任研究員)の発言から。

・・・僕も長男(13)と難病の次男(9)を育てながら、父の介護をしています。AI系の技術者の妻は超多忙。家庭のことは夫婦でほぼ折半していて、僕も何度かぶっ倒れそうになりました。
その経験から言えるのは、ワーク・ライフ・バランスは足し算で考えると破綻するということ。ワークにもライフにも多くの時間と労力をかけるのでなく、「引き算」と「かけ算」の組み合わせで考える必要があるということです・・・
・・・ そしてタスクは引き算しても、自己評価は足し算で。「楽している」と思うと罪悪感に襲われますが、「私(オレ)、よくやっている」と思えば、明日に向かえます・・・

そして企業に対しても、改革を訴えます。
・・・ワークに関しては企業風土を変えることで、もっと引き算できる余地があります。日本企業は「公平の軸」が強く、社員に等しく長時間労働や転勤を求めてきました。応えられない場合は、低い給与や昇進コースからの脱落を覚悟しなければなりません。
僕が推奨したいのは、欧州型の「公正の軸」です。達成すべきタスクと労働時間を切り離し、タスクをこなせば短い勤務でもきちんと評価する。子育てや介護でキャリアに差がつけば、後でフォローするのです。
ある先進企業では、個人の状況でワークとライフの優先順位を付けられるように、一人ひとりに合うコースや評価システムを設けていました。働き方を多様にすれば、そもそも不公平感も出ません・・・

三種の鈍器

11月5日の読売新聞朝刊1面コラム「編集手帳
今年のノーベル賞化学賞を受賞した吉野彰先生は、「三種の鈍器」を考えたそうです。備えておきたい3つの高価なものを、「三種の神器」とたとえます。私が子供の時は、洗濯機、冷蔵庫、テレビでした。

先生の考えた鈍器は、その逆です。既に発明されて古く、いずれ新しい技術に取って代わられると考えられるもの。先生が考えたものは、レコード、銀塩フィルム、ニッケル充電池でした。それぞれ100年使われていました。そこで、新しい充電池を考えました。

良い発想法ですね。私たちの職場でも、適用できます。役所に共通する三種の鈍器は、会議、パソコン、資料作りです。拙著「明るい公務員講座 仕事の達人編
このほかに、あなたの職場の三種の鈍器は、何でしょうか。それを見つけて、変えてください。

秋の休日、美術展巡り2

秋の休日、美術展巡り」の続きです。
最近、上野の東京国立博物館に行くと、外国からの観光客と思われる人がたくさん来ています。ヨーロッパ系もアジア系の人も(それ以上の見分けは付かないので)。先日の「正倉院展」も入場までに30分以上並んだので、観察しました。
良いことですよね。日本の文化に触れてもらうことは。私たちが海外旅行をしても、ルーブル美術館をはじめ、美術館や博物館を巡りますよね。

私が大学に入って上京したとき、一つの楽しみが上野の博物館でした。本館とともに表慶館に、古代の文化財が展示されていました。奈良や飛鳥から持ち出されたものもたくさん並んでいました。人気のない部屋で、かつ並べてあるだけの展示で、静かにゆっくりと見ることができました。
その後、博物館は大きく変わりました。

展示室が明るくなり、展示もわかりやすい解説がつくようになりました。かつては、品が並んでいただけでしたから。また、ビデオによる解説も増えました。これは、文字を読む以上に、たくさんのことを教えてくれます。特に美術展では、その威力は大きいですね。NHKの日曜美術館も、参考になりますが。その小型です。
特別展が多くなりました。館が所蔵するものだけでなく、ある主題で全国から関係する品を並べて、意義を説明してくれます。
売店が大きくなり、品数が増えました。高価なものからちょっとしたものまで。お土産や部屋に飾る装飾品として使えます。

そして、日本の興味ある人だけを相手にするのではなく、日本人でも門外漢や外国人観光客を相手にするようになりました。その解説が、日本の文物、文化、さらには伝統を日本人にも理解させてくれます。
一言でいえば、珍しいものを並べてあった倉庫のような展示場から、国の内外の人に文化を紹介する、楽しんでもらう場所に変わりました。梅棹忠夫さんが作った、民族学博物館がその走りだったと思います。

私は、外国からのお客さんに、国立博物館に行くことをお勧めしていました。地方から来られる方にも、上野の博物館と江戸城跡(皇居東御苑)を勧めています。
欧米からやアジアからの芸術を紹介する展覧会でも、外国からの観光客を見かけます。企画展だと、現地にいてもそれだけのまとまったものを見ることは、なかなかできないでしょう。
これだけの宝物を1500円ほどで見ることができるのは、東京にいることの、ありがたい点です。奈良国立博物館の正倉院展も行きたいのですがね。

朝日新聞『秘録 退位改元』

朝日新聞取材班著『秘録 退位改元 官邸VS.宮内庁の攻防1000日』を紹介します。
本屋で手に取ったときには、「連載記事を本にしたもの(記事は読みました)」「事実を追ったもの(政治構造を分析したものではない)」と考えて、読みませんでした。
関係者から「次のような視点で読んでください」と助言をもらったので、読みました。
そのような視点で読むと、納得できました。ご関心ある方は、読んでください。

・新聞社がどのような形で取材しているか、取材の過程を明らかにしている
新聞社が日ごろどのように取材しているかは、取材源の秘匿を重視する立場からなかなか明かせないものです。しかし、この本ではできる限り、取材の過程、記者の奮闘、記事にするかどうかの判断についても触れることで、歴史的場面に立ち会う記者の動きや葛藤も含めてリアリティを追求した本となっています。

・内幕と人間模様を描く
新しい元号「令和」が決まるまで、天皇陛下(いまの上皇さま)が退位の意向をにじませてから3年間に起きた出来事について、政府、宮内庁、学者、メディアそれぞれの内幕や人間模様を描きながら、動きを追ったものです。副題が「官邸VS.宮内庁の攻防1000日」となっています。

・天皇と政治の関係
天皇陛下による政治介入か、官邸による天皇の政治利用か、といった微妙な問題と、政権の支持基盤や永田町の権力構造との関連性に触れています。