千に三つ、役所と企業の思考の違い

「企業と役所とで、考え方が違う」と、しばしば指摘されます。「お役所仕事」として、批判されることもあります。しかし、それぞれにそのようになる、理由や背景があります。
それを考えていて、代表的な違いに、思い当たりました。同じ表現が、企業と役所では違った意味に使われ、そして社員と職員の意識を違ったように育てるのです。

「千三つ」「千に三つ」という表現があります。
企業の場合は、千に三つでも当たる商品があればよい、という意味です。
ところが、役所の場合は、千に三つも間違いがあってはいけない、と言われます。
すると、新しいことに取り組む際の意識の差が出ます。会社は、失敗しても新しいことに挑戦するのが良いことなので、挑戦の意識が育ちます。しかし、役所は、失敗したら大変だという意識が覆います。で、新しいことへ取り組む意識は育ちにくくなります。
「リスク」についての認識の違い、と言ってもよいでしょう。企業は、リスクを取ります。取ってでも、利益が出れば良い。いえ、利益のためには、リスクを取ります。役所の場合は、リスクは極力避けるものです。

できあがったものか、つくるものか」(2月16日。古くなりました)の続きにもなります。厳密な話ではないので、その点はご了解ください。いつものことです。この項続く

人類進化の理由2

人類進化の理由」の続きです。読者からの反応を紹介します。

1  腕力でなく、貢ぎ物でパートナーを見つけられるようになって、よかったです。腕力勝負だったら、私は一生独身でした。

2 オスが、貢ぎ物を持つために二本足になったのはわかりますが、なぜメスも二本足になったのでしょう。貢ぎ物を持ってこさせるなら、手は発達する必要はなく、もっと言えば、寝ていても良いと思います。

石毛直道著『座右の銘はない』

石毛直道著『座右の銘はない あそび人学者の自叙伝』(2019年、日本経済新聞出版社)を読みました。2017年に、日経新聞「私の履歴書」に連載されたものに加筆して本にしたものです。
石毛先生は、「鉄の胃袋」と呼ばれるほどの、何でも食べてきた人です。座右の銘は、「何でも食べてやろう」ではないでしょうか。もちろん、小田実さんのベストセラー『何でも見てやろう』のもじりです。

P129に、次のような内容の記述があります。
石毛先生が海外に出かけるようになった1960年代、世界で日本料理店があったのは、旧植民地の朝鮮半島、台湾と、日本人移民が多く日本人街が作られたロスアンジェルス、ホノルル、サンフランシスコ、サンパウロなどの都市に限られていました。
先生は、日本食が世界性を獲得するのは難しいと考えていました。理由は、世界のほとんどの地域で、肉や油脂、香辛料を多用した料理がごちそうとされていたのに対して、日本食は魚と野菜を主役とし、寿司や刺身などの生魚料理をごちそうとするからです。
「私の予想は見事にくつがえった。1970年代末に、ニューヨークとロスアンジェルスを拠点に、アメリカでスシ・ブームがおこったのである」

1980年に、ロスアンジェルスで50軒ほどの日本料理店で、約500人のアメリカ人にアンケートを実施します。日本食から連想される言葉に、健康的、軽い、ナマ、単純、清潔、美しいが上げられました。他方、アメリカ食からは、脂っこい、太る、重いという言葉が連想されます。日本食が健康によい食事と評価されたのです。
2007年ニューヨークには、約900軒の日本食のレストランがあるのだそうです。

先生の若き頃の交流に、京大人文研や民博の先生方がでてきます。私も大学時代から、これら先生方の著作を読みました。懐かしく思い出しました。「加藤秀俊先生」「梅棹忠夫先生」「高橋 潤二郎先生との対談

連載「公共を創る」第16回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第16回「哲学が変わったー成長から成熟へ 町を支える民間」が、発行されました。

今回から、全体計画では「哲学が変わったー成長から成熟へ」の「(3)主体と手法の拡大」に入ります。被災地で考えた、まちの暮らしを支えるのは行政だけでなく、企業やNPOなども重要だということを、主体と手法の観点から整理します。
まずは、企業が持っている能力を使わせてもらったことを紹介します。

「新しい東北」復興・創生顕彰

復興庁では、被災地の課題解決に挑戦する個人や団体を表彰し、世間に知ってもらう取り組みをしています。「新しい東北 復興・創生顕彰
今年も、候補者を募集しています。どのような人や団体が表彰されているか。過去の表彰者をご覧ください。

対象は、「新しい東北」の創造に向けて、被災地の地域課題(被災による人口減少、産業の空洞化、コミュニティの衰退等)を克服するために取り組んでいる個人・団体です。次のような例です。
・ 住民が中心となって、地域の魅力向上に向けた企画やイベントを実施する取組
・ ソーシャルビジネスを通じて、産業や雇用を創出する取組
・ 災害公営住宅、仮設住宅等におけるコミュニティ形成に向けた取組
・ 震災の記憶・記録の伝承を通じた、防災や記憶の風化防止に向けた取組
・ 文化、芸術、スポーツ等の力を活用して、復興に向けた新たな動きを創出する取組

課題解決に取り組んでいる人たちを顕彰することで、勇気づけると共に、広く社会に知ってもらおうとしています。
公共事業や補助金なら、その成果を数字などで示すことができるのですが、地域の課題解決の取り組みと成果は、簡単に数字で表にすることができません。はやりの言葉で言えば、モノは数字で表しやすいのですが、コトを評価したり伝えることは難しいです。