岡本全勝 のすべての投稿

徒然草

今日は、サントリー美術館の「徒然草展」に行ってきました。先日に行ったキョーコさんが、「よかったわよ。勉強になった」とのことなので。
なるほど、勉強になりました。木登りの名人、榎の僧正、石清水に参る仁和寺の僧など、昔習った文章が出てきました。
徒然草って、江戸時代にも、たくさんの人に読まれていたのですね。3大随筆といわれていますが、処世訓として重用されたのでしょう。そして、絵巻物で読んだのですね。文字だけの冊子より、親しみがわきます。
記録に出てくるのが、書かれてから100年後で、兼好法師が書いたとは、実のところわからないのだそうです。初めて知りました。
このような展覧会の度に思うのですが、昔の人は達筆ですね。読めませんし、我が悪筆を振り返り、恥ずかしいです。でも、兼好法師は、「手のわろき人の、はゞからず、文書き散らすは、よし」(第35段)と言っています。
もっとも、「自分のことばかりしゃべる奴はダメ」とも言っていますが(第56段)。

企業と社会

田久保善彦・グロービス経営大学院研究科長の「企業経営から見たCSR」(7月11日)の続き。
・・日本企業のこれまでのカギ括弧付きのCSRの特徴として、環境対応とコンプライアンスの二分野への重点が置かれすぎてきたことが挙げられる。過去の公害問題という苦い経験から、特に日本の製造業の環境対策は世界的にみてもトップクラスであり、それ自身は非常に素晴らしいことである。また、コンプライアンスが守られなければその企業は社会的に抹殺され存在する事すらできないため、その企業の価値発揮の根源である生業の発展と、ここを重視するのは基本中の基本である。
更に最近では、各種のNPOやNGOへの資金的支援や協業の実施などを、強く志向する企業も多く出てきている。これも、様々な種類の主体が活躍する環境を整えるという観点から一般的には喜ばしいことであるが、支援活動自体が目的化してしまっているようなもの、また目的意識や当該企業の活動内容との関連性などが希薄なものなども散見される。
しかし、このように、特定の分野への対応のみがフォーカスされた結果、近年のグローバル社会からの要請に応え切れていない部分があることも否めない。例えば、海外における二次受け、三次受けの労働管理などに関しては、日本企業は課題を指摘されることも少なくない・・
ポスト他著『企業と社会―企業戦略・公共政策・倫理』上下(邦訳2012年、ミネルヴァ書房)が、参考になります。目次を見ていただくと、企業が社会と、いかにいろいろな分野で関わっているかがわかります(上巻下巻)。

大阪の課題とは

今日の放課後は、旧知の関西の方との意見交換会。最近の情勢をお互いの視点から分析した後、関西の課題、10年後の大阪について議論しました。
私は、拙著『新地方自治入門』で、自治体が取り組まなければならない課題を、「役所内の課題」と「地域の課題」に分けて議論しました。行革や分権、役所の効率化は、市役所としては重要な課題です。しかし、住民からすると、暮らしが良くなって「なんぼ」です。自治体の効率化は、その手法なのです。
住民の安心など地域の課題はたくさんありますが、東京から見ると、関西・大阪の課題の第一は、「地盤沈下」をどうするかでしょう。関西復権は、経済界の復権です。東京都知事はそんなことは考えなくても良いのですが、大阪市長と府知事の一番の仕事は、10年後の関西経済の復権です。そしてそれは、役所だけではできません。どのように、経済界、マスコミ、住民を巻き込むかです。そして、4年や5年では出来ません。

CSRと復興支援

田久保善彦・グロービス経営大学院研究科長の「企業経営から見たCSR」(東京財団レポート、2014年6月25日)から。
・・広く知られるようにCSR(corporate social responsibility)を日本語で表すと、「企業の社会的責任」となる。そもそも企業とは社会に対し責任を果たしつつ、何らかの価値を提供する事によってのみ、存在できる主体であるという観点に立てば、CSRとは「企業経営そのもの」であることは明らかである。つまり、CSRを何か特別なものかのごとく切り出して議論したり、取り組んだりするものではないという認識を持つことが、健全なCSRの議論を始める第一歩となる。
ここ数年、日本においても、「CSRは経営そのものである」という考え方が広がりを見せてきている。しかしながら、企業の経営者がその概念を頭で理解することと、日々の経営にどれだけ落とし込んでいるかは、別問題であり、従来型のメセナ活動などの延長線上にあるカギ括弧付きの切り離された「CSR」に終始してしまっている企業は未だに数多く存在する。
日本でCSRの議論になると、必ずといって良いほど引用されるのが、『日本には昔から、「三方良し」という概念があり、昔から社会のことを考え上手くやってきた』という話である。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」と、三方それぞれが発展するように商売をすべきという近江商人の哲学と呼ばれるものであり、この哲学自体は、時代を超え、未だに輝きを失わずにいる素晴らしい考え方である。
例えば、各地に存在する工場では、多くの雇用を維持しつつ、様々なコミュニティーの発展に資する活動を展開しているケースが少なくない。時に驚くほど深く地域と関わり合いを持ち、まさに地域と共存しているといえる企業や工場も多数存在する。東日本大震災の折にも、数多くの企業が素晴らしい活動をしたことは記憶に新しく、地域を大切にする日本企業の姿勢は特筆に値する・・
(この文章の主旨はこの部分にあるのではないのですが、それについては次回紹介します。)
田久保さんは、企業による復興支援の記録として、次のような本をまとめています。
『日本型「無私」の経営力ー震災復興に挑む七つの現場』(2012年11月、光文社新書)、『東北発、10人の新リーダー 復興にかける志』(2014年3月、河北新報出版センター)。
前者は、東日本大震災後、日本企業が取り組んだ「無私の支援」、「利他の経営判断」とも言える復興支援について、具体的にどのような活動が行われ、また何がそうした行動を生んだのか、関係者への取材を基に書かれたものです。7つの企業の活動が取り上げられています。
・・そうした活動の模様は、これまでテレビや雑誌などの速報性のあるメディアで何度も取り上げられ、目にした方も多いと思います。しかし、それらは必然的に一過性の報道となり、「フロー情報」としてすぐに忘れ去られてしまったのではないでしょうか。そのような活動は、きちんと評価・分析するべきではないか、そして、「ストック情報」として後世に伝えることに大きな意味があるのではないかーそんな問題意識から、私たちは今回の取材・執筆に着手しました・・(同書「はじめに」から)。
後者は、被災地で新しい東北をつくることに取り組んでいる若いリーダー達を紹介したものです。この項続く

内にこもるか、攻めて出るか

6月16日の日経新聞の国際面に、ドイツポスト社長の発言が載っていました(古い話で、申し訳ありません)。
・・同社は、欧州の郵便市場自由化を転機に大型の合併・買収をしかけ、国際郵便・物流企業に脱皮した。DHLブランドの国際貨物などが売上高の4分の3を占める・・
これを読んで、10年前に、ドイツポストを訪問したことを思い出しました。衆議院総務委員会の欧州視察に同行して、訪問したのです。私の記録によると、2004年8月19日です。ドイツ・ポストが民営化され、郵政民営化を試みていた日本が、お手本としていたのです。ドイツも、決して順調ではありませんでしたが。私が感心したのは、アメリカのDHLを買収して国際市場に攻めていること、そして中国を市場と考える発想でした。日本には、そのような動きは見えませんでした。あの時感じたことが、今なお続いているのだなあという感慨です。でも、10年も経ちました。若い人には、昔のことです。
ここでの教訓は、「10年先を考えて手を打つこと」です。市場が国際化した現代では、今ある商圏とビジネスモデルを守っているだけでは、生き残れないのです。
このページの他、当時はあんなことを考えていたのですね。興味あれば、ご覧ください。欧州随行記その2ヨーロッパで考えたことヨーロッパで考えたこと2