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産業支援の新しい手法類型

日本政策投資銀行と被災3県の地域銀行などが「復興・成長支援ファンド」を作ります。概要は、記者発表資料(DBJ News岩手銀行七十七銀行東邦銀行)を見てください。
ここでは、その位置づけを解説します。企業の復旧と産業の復興の支援には、いくつもの手法があります。それを、分類したのが、資料(産業復興支援の分類)です。
この図では、一番下が、損壊した施設の復旧、資金繰り支援、二重ローン対策など、応急復旧期の支援です。この段階では、図右下に書いてあるように、政府主導の取り組みが主になります。その後、本格復興と発展の段階になると、企業の新たな挑戦を支援しなければなりません。そこでは、真ん中の段左から2列目に書いてあるように、計画を作ったり、技術支援などの提携先を探したり、取引先を見つけたり、リスクマネーを供給したりすることが必要になります。
復興庁が行っている「結いの場」は、この技術支援や取引先(販路)を探すための「お見合いの場」の試みです。これは、右側真ん中の段に書いてあるように、官民連携による取り組みです。資金の供給(リスクマネー)については、民間による融資と経営相談が必要です。ここでは、民間主導の取り組みが要請されます。これまでにも、いくつかの融資や支援が行われています。今回、そこに「復興・成長支援ファンド」が付け加わったのです。中段右側の黄色い部分です。
国の補助に頼っていては産業の自立はありません。しかし、全てを民間でとか自己責任でと言っていては、復旧できず、また新たな発展はありません。どのように後押し・支援をするか。この図では、右側に下から、政府主導→官民連携→民間主導というように、分類してあります。
この図は、職員たちが苦労して作ってくれたものです。私のような産業についての門外漢にもわかるように、整理・分類してくれました。このような分類では、どのような角度で切り取るか、哲学が重要です。「切れ味」がよいと、わかりやすいです。ありがとう。

明治新政府を支えた幕府官僚

門松秀樹著『明治維新と幕臣―ノンキャリアの底力』(2014年、中公新書)が勉強になりました。「薩長土肥の雄藩が幕府を倒し、明治政府は藩閥が牛耳った」というのが私たちが学んだ歴史です。しかし、新政府の幹部を藩閥が抑えたとしても、日々の行政は実務能力のある「官僚」が行わなければなりません。幕府を倒しても、新政権には手足はいませんでした。幕府の官僚をそのまま使い、そして仕組みとともに改革していったのです。この本は、その官僚たちを「ノンキャリア」として、彼らの意義を高く評価しています。いわれてみれば、なるほどと思う事実が、いろいろと書かれています。
明治維新に限らず、戦後改革、さらには政権交代時に、どこまで行政機構と官僚を引き継ぐか。大きな課題になります。外国でも、革命が起こった場合、外国軍が占領した場合も、前政権の公務員をどこまで使うかは、悩ましい課題です。「敵」あるいは「敵に仕えた者」として追放すべきですが、さりとて彼らを全て追放しては、行政が滞ります。
他方で、前政権に仕えた公務員は、新政権に奉公すべきか。「二君にまみえず」といった格好いいセリフもありますが、公務員にも養わなければならない家族もいます。また、その能力を新政権が買ってくれる場合もあります。維新に際して、在野を貫いた福沢諭吉が、勝海舟と榎本武揚に対して「痩我慢の説」を突きつけたことは有名です。
この本には、そのほか遡って、江戸幕府の官僚機構がどのようにして整備されたかや、旗本御家人の公務員生活も解説されています。歴史好きの方、行政や官僚に関心のある方にお薦めです。

パソコンの入れ替え

復興庁では昨日土曜日に、職員のパソコンを入れ替えました。各自のパソコンに入っている個別の情報は、いったん外部の記憶媒体に引っ越しさせます(これは金曜日までに行いました)。そして、新しいパソコンに移し替える作業が必要です(職員は月曜日に行います)。
私の場合は、職員に手伝ってもらいました。でも、新たにパソコンを立ち上げると、いろいろと不都合なことが出てきます。画面の文字が小さかったり、印刷したらいつもと違う印刷機に出てきたり、メールを送っても署名がつかなかったり・・。一つひとつ解決する必要があります。慣れている機械が変わると、不便ですね。逆にいうと、いかに便利な機械であるかを再認識させられます。月曜日の朝は、多くの職員がぼやくのでしょうね。

福島市民の健康不安意識

福島市が、原発事故による放射線の影響に関する市民の意識調査結果を発表しました。福島民報が、「「健康不安」大幅に減少」として伝えています。
平成24年5月の第1回調査に次ぐ2回目です。放射線の外部被ばくによる健康不安の変化について「大きくなった」と答えたのは14%で、前回調査の37%に比べ大きく減っています(なお記事では全回とありますが、前回の間違いでしょう)。外部被曝による健康不安(本人について)については、「大いに不安」と「やや不安」をあわせると、前回が81%で今回は71%です。

坂根社長。悪い報告を先に

日経新聞「私の履歴書」坂根正弘・元コマツ社長の続きです。11月27日の「コマツウェイ」から。
坂根社長が社長職を譲る際に、経営の基本路線を社員全体に行き渡らせるために、小冊子を作ります。それが「コマツウェイ」です。第1章がマネジメント編で、その中の一つに「ビジネス社会のルールを順守すること」があります。
・・法令違反や不祥事をなくそうという趣旨だが、単に言葉を掲げるだけでは何も変わらない。そこで導入した施策の一つが「報告の順番はバッドニュースが先」の原則だ。
コマツの事業責任者や子会社のトップは月1回、フラッシュレポートと呼ばれる報告書を社長に提出するが、そのレポートの一番上に「バッドニュース」を書かせることにした。コンプライアンス・環境・安全に関わる悪い報告を最初に書いた上で、品質問題や業績報告に入っていく。これを毎月繰り返していると、ルール順守の意識が自然に高まり、組織の体質や風土もいい方向に変わるだろうと期待している・・
なるほどと思います。なかなかできないことです。