岡本全勝 のすべての投稿

優秀な職員からの訴え

先日「商店街の本格復旧、こんな支援もしています」(6月20日)を書きました。その中で、「復興庁の職員は、これまでにない課題に対し、新しい対策を考えるのが好きです。それも、机上の空論ではなく、現場に行って関係者と議論をして考えた案です。みんな能力とやる気のある職員なので、「前例どおり」や「できません」と言うより、新しいことに挑戦するのが好きなのです」と紹介しました。それを読んだ職員からの訴えです。
M君:ブログに取り上げていただいて、ありがとうございます。まさに私の××班は、この急先鋒に立つ班の1つではないかと自負しています。おかげさまで、今日も気持ちよく働かせていただいております。
O君:我々も、××班の次鋒くらいで頑張っています。今後とも、ブログで取り上げていただければ幸いです。
ちゃっかりしたものですわ(笑い)。

復興計画の縮小

陸前高田市が、公共施設の整備方針を策定し、公表しました。そこでは、「整備予定施設については、維持管理費の低減を図るため、適切な施設規模に努めるとともに管理業務の効率化に努める」として、従来施設の延床面積が52千m²であったのに対し、新設予定の延床面積は47千m²と、5,5千m²、1割減になっています。また、再整備しない施設として、次のような記述もあります。「廃止する施設:観光交流センター(キャピタルホテル1000)、勤労青少年ホーム等。他の施設を活用する施設:職業訓練校、ふるさとハローワーク等」。
被災自治体では、発災直後は、人口が増えるかのような未来像を描いた計画もありました。しかし、その後、考え直して、現実的な案に縮小しています。もちろん、人口が増えて大きくなる方がよいのですが、具体的道筋や根拠もなく夢を描くと、そのツケを払うのは後輩たちです。運営費は毎年かかるのです。
今回の市長と市民の決断に、敬意を表します。私は、私を含めて、行政の責任者の評価基準の一つは、「10年後、20年後の国民や後輩が、評価してくれるかどうか」だと、考えています。

早稲田大学での講義

今日は午前中に、早稲田大学で、復興の取り組みと行政の役割を講義してきました。政経学部小原隆治教授の依頼で、先生の授業の1コマを使っての講義です。時間が限られているので、ポイントを絞っての話にしました。でも、いつものようにエピソードを入れると脱線して・・。100人近い学生が、熱心に聞いてくれました。政経学部の建物は、昨年に改築が終わり、きれいな高層ビルになっています。その中に、かつての4階建ての建物の一部が取り込まれています。
追補
授業で紹介した拙稿は、次の通りです。
被災地から見える「町とは何か」~NPOなどと連携した地域経営へ」(共同通信サイト、47行政ジャーナル。2012年8月31日

復興の後期5か年事業枠組み、3県知事説明

今日22日夜、宮城県庁で、復興大臣と被災3県知事との会合を持ちました。18日に与党の了承を得て、19日に3大臣(復興、総務、財務大臣)で確認した「後期5か年事業計画案」を3知事に説明し、理解を得るためです。参加4人の都合を合わせると、今日の20時になりました。復興庁が主催するのですが、被災地に出向くのがよいと考え、仙台に集まっていただきました。そこで夜遅い時間帯ですが、宮城県庁舎の会議室をお借りしました。
NHKニュースで報道されているとおり、3知事からは一部注文が付きましたが、感謝の言葉をいただき、受け入れていただきました。今回の案のポイントは、5年間の事業費を見積もり、その財源を確保したことです。これで、自治体は安心して事業ができます。また、一部の事業に自治体負担を求めますが、自治体が負担できる範囲にとどめ、また事業に遅れが出ないように配慮してあります。もちろん、復興はまだ道半ばです。大臣からは、国として責任を果たすこと、一緒になって復興を成し遂げたいと表明しました。最後は、4人が固い握手をされました。

会計帳簿が変える世界の歴史

ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』(2015年、文藝春秋)が、面白く、勉強になりました。書評でも取り上げられているので、読まれた方も多いでしょう。
会計(企業会計、国家の財務会計)、それを記帳する複式簿記が、なぜ生まれたか、そしてその扱い(活用するか無視するか、改ざんするか)が、会社や国家そして社会にどのような影響を与えたかです。会計帳簿の機能からみた、社会史です。
かつては、王様は集めた金は自由に使うことができました。必要なのは、どれだけ収入があって、どれだけ使ったかを把握することです。しかし、足らなければ、集めればよいので、帳簿がなくても統治はできます。もっとも、その部下たちは、どれだけ集めたかを王様に報告しなければなりません。また、王の命令によって軍隊を動かすには、収支の計算が必要になります。商人も、自己資産で経営している限りは、簡単な収支と財産目録だけですみました。ただし、支店を持つと、本店への会計報告が必要になり、帳簿が必要となります。
近世以降、他人から集めた金、他人から預かった金を、どのように使っているか。会社や国家は、それを株主、債権者、国民に説明する義務が生じました。絶対王政のフランスが会計管理をおろそかにして、国家を破綻状態に追いやりました。国家の会計を公開したところから、民衆の不満が高まり、フランス革命へとつながります。それだけが革命の原因ではありませんが、この説は興味深い考えです。他方で、王の権力が弱かったイギリスでは、財務会計が発達します。戦争の経費をまかなうために、銀行借り入れや増税が必要になったからです。ここには、強い王権と弱い王権が、発展に逆の効果をもたらすことを示しています。そして、国家に対して市民や企業が強い社会(イギリス)と、国家の方が強い社会(フランス)がたどったその後の歴史(イギリスがフランスを逆転する)も示しています。
企業にしろ国家にしろ、正確な会計とその公表は、必須のものとなります。ところが、他方で、不正な会計や帳簿の改ざんは後を絶ちません。近年では、2008年のリーマン・ブラザーズの破綻です。これは、国家を揺るがし、世界の経済を恐慌寸前にまで追い込みました。ギリシャの債務隠しもありました。そこまで行かなくても、新聞では、しょっちゅう、企業の会計の不正が報道されます。
社会と歴史を、帳簿ですべて解釈することは無理がありますが、大きな影響を与えたことは間違いありません。帳簿というモノでなく、帳簿を付けるという会計の機能です。面白い本です。翻訳も読みやすいです。お薦めします。