岡本全勝 のすべての投稿

岩井克人先生の研究の軌跡、2

先生は、経済学の主流から外れた「不均衡動学」を研究します。極めて単純化すると、新古典派経済理論は、市場で需要と供給が一致するように均衡し、労働市場でも受給が一致するように完全雇用が達成されると考えます。失業や売れ残りの商品、遊休資本が発生するのは、市場が不完全であるからで、市場が自由に働くようにすれば需給は一致すると主張します。しかし、実際の経済は、需給は一致しない場合が多く、不均衡が一般的であるというのが、不均衡動学です。では、それでいて、市場はなぜ安定しているのか。そこが、先生の研究成果です。本を読んでください。
私には、先生の主張の方が、現実的であり、説得力があると思えるます。先生は、市場主義が勢いをふるった時期に、それに反する主張を行い、「没落した」と振り返っておられます。

今日は福島。添乗員と講演

経済同友会が、夏季セミナーを16、17日と、福島県郡山市で開催されました。今年の提言にも、復興を柱だてしてもらいました。「地方創生のモデルとなる被災地の再生を」。今日18日は、原発被災地を視察。今回もご指名を受けて、バスに添乗し、復興の状況と今後の取り組みを説明しました。経済界のオピニオンリーダーたちに、現状を確認してもらい、半日間も意見交換ができることは、ありがたいことです。ふだんなら、面会の予約を取るのも大変な大会社の社長、会長さんたちです。あいまに「大会社の社長になるのに必要な条件」なども、教えてもらいました。
午後は途中から一行と別れ、いわき市で県議さんたちが中心となった民間の勉強会で、お話をしてきました。3連休の初日にもかかわらず、100人もの方が集まって、話を聞いてくださいました。福島で福島の復興を話すのは、ちょっと気が引けたのですが、
・現地ではなく、国から見た全体の姿
・これまでの4年間と、今後の見込み
・私の経験と私が考える被災地のこれから
をお話しすることも意味があると考え、お引き受けしました。皆さんが知りたいのは、「これからどうなる」「どうしてくれる」でしょうから。で、大部の資料を配ったのですが、それはお持ち帰りいただました。
4年前の大混乱、先行きが見えない頃を思い出すと、隔世の感があります。事態が落ち着いてきて、また、できることとできないことが明確になってきました。「原発被災地域の将来」(7月9日)に書いたように、帰還希望者と作業員などで、新しい町ができる見込みが立ちました。すると、それに向かって見えてくる課題を、解決すればよいのです。
もちろん、これまでにない災害なので、これまでにない対策を打つ必要があります。時間もかかります。でも、復興庁はこの4年間、さまざまな「これまでにない取り組み」をしてきました(「復興の現状と課題」のp11)。ご安心ください。「前例がない」「私の担当でない」というのが官僚の欠点であり、官僚への批判ですが、復興庁は「前例がないからやる」「担当でなくても取り組む」のが任務です。その意味では、復興庁はこれまでにない役所であり、「変わった官僚」の集団です。

今週も働きました。明日も働きます

さて、今日は金曜日。今週も、あっという間に過ぎました。困ったものです。前日に秘書が渡してくれる翌日の日程表は、空欄が目立つのですが。これが「大嘘」です(笑い)。
「よし、今日はこの資料を片付けよう」と思っていると、次々と職員が相談に入ってきます。「ちょっと良いですか」と。さらには、上京した被災地の町長や議員さん、記者さんや他省庁の人が、様子を見に来てくれます。よって、自分の時間は取れず。いつも同じことを書いています。今週も進歩無し。原稿執筆や講演の依頼も来ているのですが・・・。明日は、福島県で視察の案内と、講演です。

ゆう活、定時退庁実績

7月14日に、内閣人事局が、国家公務員の「ゆう活」実績を発表しました。初日である7月1日の実績です。それによると、霞が関公務員約4万人のうち、早朝出勤実施者は2.3万人で、6割が参加しています。そのうち定時退庁した職員は65%です。夜8時までに退庁した職員の割合は88%です。(NHKニュース)。大きな成果が上がっています。しかも、国会開会中です。
私は毎日、定時(17:15)に退庁して、異業種交流へ。かつては19時開始とか18:30開始でしたが、17:45や18時開始にしてもらっています。今日も18時前に開始、20時には退出。20時半には、家でこのホームページを加筆しています。(2015年7月15日)
内閣人事局発表資料は、こちらです。昨晩探したのですが、よう見つけへんかったのです。内閣官房のサイト内検索も、うまくできなくて。こんなところに載っていました。

岩井克人先生の研究の軌跡

岩井克人著『経済学の宇宙』(2015年、日本経済新聞出版社)が、勉強になりました。岩井先生の半生記ではなく、研究の軌跡を振り返ったものです。大学のゼミ生だった前田裕之・日経新聞記者が、恩師に行ったインタビューを基にしています。500ページ近い、分厚い本です。先生の研究の記録、それも悩みながらの軌跡であり、現代経済学の入門書にもなっています。
先生の本は、『会社はこれからどうなるのか』など、目から鱗が落ちることが多かったです。理由がわかりました。先生は、物事をとことん突き詰めて、すなわち通説にとらわれず、本質まで遡って考えられるのです。それは、経済学にとどまらず、法律学にも踏み込まれます。そして、国内だけでなく、英語論文で世界に挑戦されるのです。1か月以上前に読んだので、具体的な指摘を思い出しながら、おいおい、勉強になった点を紹介します。