給与上がらず、看護師不足

8月26日の朝日新聞に「給与上がらず、看護師不足が深刻 歴30年でも手取り32万円」が載っていました。

・・・東海地方の病院に勤める看護師の女性(58)は週に一度、眠れない夜を過ごす。17時間を超える夜勤に入るためだ。
夜勤は午後4時15分~翌日午前9時30分。その間に1時間の休憩が2回ある。休憩室にはソファがあるが、横にはならない。「寝てしまうのが怖いんです」
深夜は看護師2人だけで患者24人をみる。そのため、自分が休憩中でも、複数のナースコールが鳴れば病室に走らないといけない。
1時間おきに病室を見てまわり、たんが詰まりそうな患者がいればこまめにチェックする。「もし何かあったら……」。朝になって命をあずかる緊張感から解放されると、心も体もへろへろだ。夜勤明けと翌日の休みで疲れをとる。
夜勤のほかに三つの勤務時間があり、シフトは毎週違う。4週間で8日の休みはあっても、生活は不規則になる・・・

・・・日本医療労働組合連合会が今春、全国の125施設を対象に実施した調査によると、4月の募集人員に対して「充足していない」と答えた施設は67%にのぼる。
さらに「充足していない」と回答した施設に影響を尋ねると、51%が「患者サービスの低下」を選んだ。仕方なくおむつ交換や入浴回数を減らす病院もあるという。
今後は高齢化で看護の需要は高まる一方、少子化により働き手は減る。人材確保のためにも、処遇改善が必要になる。

看護師不足の要因のひとつとして指摘されるのが、キャリアを重ねても上がりにくい給与だ。離職を招く一因となっている。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、20~24歳の看護師の平均給与は29万6千円。55~59歳は39万5千円で、上げ幅は約10万円、3割ほどにとどまる。一方、全産業の大卒者の平均では26万円から52万2千円と、2倍になる。30~34歳で看護師を上回る。
看護師の賃金が上がりにくい原因として、管理職のポストが少なく昇給の機会が乏しいことや、歴史的な男女の賃金格差が残っていることなどが指摘される。看護師の9割は女性だ・・・

連載「公共を創る」第198回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第198回「政府の役割の再定義ー官僚という職業を選んでもらうために」が、発行されました。

若者が公務員を選ばず、国でも地方自治体でも公務員が不足していることを議論しています。
役所はこれまで、人事政策を重要視しておらず、人事政策の専門家がいなかったと評価しました(第170回)。もちろん人事課長以下の人事担当者はいました。しかし、彼らの仕事は人事異動表を作成することが主で、職員の処遇や働き方の改善には積極的に取り組んでいたとは言えません。

土木、保健などに従事する職員について企業との奪い合いが起こっており、処遇が理由で官庁より企業が選択されることが起こっているようです。特に業務の電子化に関する専門家は、民間企業でも国際的に奪い合いになっているほどで、公務員として提示できる給与では太刀打ちできないのです。
外部委託にする方法もありますが、その仕事に通じた職員がいないと、発注と完成検査ができず、相手の言いなりになってしまいます。清掃や印刷など労力が主な仕事は、外注に向いています。しかし、業務の電子化は、プログラムを書くことは外注できても、何をどのように電子化するかの判断は、組織の業務に精通してなければできません。

公務員を若者に選んでもらえる職業にしなければなりません。しかしその問題の前に、日本全体の労働力不足があるのです。

パワハラ恐れ、放任上司

8月28日の日経新聞夕刊に「パワハラ恐れ「放任上司」」が載っていました。

・・・組織の管理職がパワハラの指摘を恐れるあまり、部下との必要な意思疎通を避けて「放任上司」となる課題が指摘されています。コンプライアンス意識の高まりに伴い顕在化。職場環境の悪化につながりかねず、自治体が注意喚起の内容を職員研修に取り入れ始めた。専門家は防止へ「対等な関係」が鍵だと語る・・・

・・・パワハラやセクハラの防止を目的とした研修は広く普及。最近ではこれに「放任」の要素が加わっている。
相模原市は2年ほど前から管理職向けの研修で、決断や判断を避ける上司がいる場合の悪影響を伝える内容を盛り込んだ・・・
・・・ハラスメント研修を提供する横浜市の企業による21年の調査では、3人以上の部下を持つ管理職の83%が「部下への発言をちゅうちょしたことがある」と回答。別の設問では「部下とはなるべく関わらないようにしようという気持ちになったことがある」との答えも41%に上った・・・

経済停滞30年の原因私見2

経済停滞30年の原因私見1」の続きです。
金利を下げて、企業の投資を促しましたが、雇用、設備、債務の3つの過剰を処理した後も、企業はそれに反応しませんでした。それは、企業経営者が挑戦を避けたからです。
「選択と集中」「リストラ」という言葉が流行り、企業はもっぱら縮み思考に入りました。国内で販売と営業をしている限りでは、それでも規模は維持できました。
大企業もリスクを避け、守りの経営になったのではないでしょうか。戦後の成長期とは異なり、名門大学出身のスマートな社員が、社内で出世します。「優秀な若者は有名大学に行き、大企業に就職することがよい職業人生だ」という通念が社会に広がりました。
挑戦しようとする社員がいても、安全を重視する幹部が「もう少し慎重に検討しよう」と言って、先送りします。これは役所では定番の風習ですが、大企業にもあるようです。先送りは、結局はしないことです。

ところが、挑戦を先送りしているうちに、アジア各国は追い上げてきて、さらには追い抜いてしまいました。新しい産業への転換が遅れ、世界での競争にも負けた、ということでしょう。
この状態で金利を下げても、消費も投資も拡大しません。日銀に経済成長、産業転換を求めても、無理でしょう。政府と産業界がするべきことは、ほかにあったのではないでしょうか。

「安全志向」「先送りの思考」「縮みの思考」「諦めの思考」が、長きにわたり、企業、役所を含め日本社会を覆いました。これを脱却することが、長期不況からの脱出の鍵だと思います。経済学の分析手法である需要と供給ではなく、企業経営者、政治家と官僚、そして国民の意識が日本の発展を阻害しているのです。
30年間経済成長がなかった日本に対し、ドイツは2倍に、アメリカは3倍になりました。「1991年から30年間の経済成長外国比較」。ちなみに1.02の30乗は1.8、1.03の30乗は2.4です。
経済停滞30年の原因私見3」に続く。「日本企業と韓国企業の勢いの違い」「「仕方ない」が生む日本の低迷

大熊町立学び舎ゆめの森校長・園長 南郷市兵さん

日経新聞夕刊「人間発見」、9月9日の週は、福島県大熊町立学び舎ゆめの森校長・園長 南郷市兵さんの「福島から日本の教育変える」です。
南郷さんは、文部科学省の役人から、原発被災地での教育現場に入ってくださった人です。

・・・東京電力福島第1原子力発電所が立地する福島県大熊町の町立学び舎(や)ゆめの森で校長・園長を務める南郷市兵さん(45)。2011年3月の原発事故により同町で完全に失われた学校教育の再興に挑む・・・

・・・ゆめの森は23年4月に大熊町に帰還し開校しました。国内で唯一、認定こども園と義務教育学校が一体化して経営する学校です。0歳児の赤ちゃんから15歳の中学生までが一緒に学んでいます。
開校時の子どもは26人でしたが、現在は61人まで増えました。子どもたちの6割は大熊町外からの移住者が占めます・・・