政権の自己評価、中国共産党

中国共産党が、11月11日、第19期中央委員会第6回全体会議で、毛沢東、鄧小平の時代に続く第3の「歴史決議」を採択しました。各紙は、習近平総書記(国家主席)は両者に並ぶ権威を確立したと伝えています。

これについて、12日の朝日新聞は「歴史決議は毛沢東時代の45年、鄧小平時代の81年に続き3回目。45年は結党以来の主導権争いに決着をつけて毛の権威を決定づけ、81年は文化大革命を否定し改革開放への道を開いた」と書き、林望・中国総局長が「政権の自己肯定、にじむ不安」に次のように書いています。
・・・過去の歴史決議が共産党内の主導権争いや路線の過ちをただす自己否定の作業だったとすれば、新決議は習近平氏の権威を高めるための自己肯定の試みである・・・
・・・一方で、強さと正しさを内外に証明し続けなければ今の地位は保てないという政権の不安があることも見逃すべきではない・・・

「歴史決議」には、次のような文章もあります(日経新聞による)。
・・・全会は次のように指摘した・・・中国共産党は中華民族の千秋の偉業を志してから100年で、まさに最盛期を迎えている。過去の100年、党は人民、歴史に優れた答案を出した。今、党は国民を団結させてリードし、第2の100年の奮闘目標を実現する新たな試験に向かう道に踏み出した・・・

追加就労希望就業者

11月11日の日経新聞「漂う雇用 下」は「若者苦境「もっと働きたい」」に、追加就労希望就業者という言葉が載っていました。
追加就労希望就業者とは、もっと長時間働きたいという人たちです。日本の直近の失業者は3%ですが、追加就労希望者も同程度います。
コロナ対策による緊急事態宣言で、飲食・サービス業が休業し、従業員が働くことができなかったからです。アメリカでは、追加就労希望者は広義の失業率に含まれるそうです。

記事には、職種間の求人倍率の差も出ています。一般事務職は低く、建築・土木技術者は5倍を超え、医療や福祉も高いです。資格や経験を必要とする専門職、さらに言うと体を動かす現場の仕事で、人手不足が目立ちます。
失業者がいる一方で、人手不足の業種があるのです。事務室内での事務職を憧れる人が多いのでしょうか、専門職の処遇が悪いのでしょうか、専門職を育てない教育が悪いのでしょうか。

メルケル首相の評価

11月11日の朝日新聞オピニオン欄「さよならメルケル」、岩間陽子・政策研究大学院大学教授の「長すぎた16年、広がったEU内格差」から。

――長すぎたとは?
「16年間という在任期間にもかかわらず、ドイツにとっても欧州にとっても新しいビジョンを打ち出せなかった。欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)という欧州の安定に欠かせない機関の改革もしなかった。欧州の自立ということを繰り返し語っても、具体策はありませんでした」
「外交で顕著だったのが中国依存です。在任期間は、中国の存在が大きくなり、米国の地位が下がっていく時期と重なります。メルケル氏が選んだのは、中国市場の拡大を利用し、自動車を中心とする既存の産業を発展させる道でした。対ロシア関係とともに、人権問題での批判があっても『対中関係は経済問題』というスタンスをとり、欧州を相対的に軽視したように思います」

――欧州で「ドイツ1強」と言われるほどになりました。
「EUではドイツが目立ってはだめなのです。経済力の強さは以前からです。西欧中心だったEUは東に加盟国を増やし、EU内の格差が広がりました。新たに加盟した東欧諸国には欧州の二級市民だという意識があります。財政危機で南北格差も拡大しました。こうした格差を埋めるEU改革に着手しないといけなかった」
「例えばユーロ危機はメルケル氏の手腕で乗り越えたと言われます。確かにギリシャの財政問題に端を発した危機で、ギリシャ救済策をドイツ国民がのめない結果になっていたらユーロはつぶれていた。その意味では『救った』と言える。一方でその後、ユーロ圏の債務共通化など機構改革を進める必要があった。豊かな北部欧州から南部への財政移転を後押ししないと同様の危機は回避できないし、加盟国の国民間の格差意識はなくならない。でもメルケル氏は欧州ではなく中ロを重視し続けました」

――どういう弊害があったのでしょうか。
「『ブリュッセル(EU)が悪い』という議論の広がりに歯止めをかけられませんでした。英国のEU離脱をめぐる国民投票(ブレグジット)が典型例です。EUからの分配金でのメリットが実際は大きくても、市民レベルではそう思えない。メルケル氏は欧州市民としての肯定的なアイデンティティーを打ち出し、機構改革の主導権を握る必要があった。EUの中核である独仏のうちマクロン仏大統領の方が積極的でした。メルケル氏は一緒に改革を進めようとしなかった」

――なぜでしょう。
「理念がないからでしょう。同じくドイツで16年間首相だったコールは欧州統合を大事にしました。ドイツ統一の父ですがドイツ第一主義ではない。EUとNATOをきちんと機能させることを優先し、対米関係も大事にしました」

――2011年の東日本大震災後のドイツの脱原発、難民危機の際の「受け入れ」表明に理念はなかったのですか。
「むしろ風見鶏的だったと私は思います。一般人の感覚には敏感でした。『難民の受け入れ』は、その後人数の抑制という変更を余儀なくされました。脱原発も、中期エネルギー計画などに基づいた判断ではありません。メルケル氏が率いるキリスト教民主同盟(CDU)は長年、産業・科学立国を掲げ、原発推進派でした。路線を転換するなら相応の計画と見通しを示す必要があったと思います」

――メルケル後にはどういう課題が残っていますか。
「21世紀の欧州の未来像を描くことだと思います。EU市民の共感を得続けるには、皆がわくわくするような夢が必要です。80~90年代の欧州は統一市場、統一通貨という考えの下、実験的な試みが次々となされました。冷戦終結からすでに30年。ドイツにも欧州にも、新しいビジョンが必要です」

参考「メルケル首相評伝

連載「公共を創る」第99回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第99回「広がる企業の役割」が、発行されました。

社会貢献についての企業戦略が、慈善活動から社会的責任を果たすことへ、さらには積極的に社会課題を解決しようとすることへ変化してきました。そのいくつかの例を紹介しました。
また、企業と行政との連携「官民連携」も増えてきました。ここで言う官民連携は、公共施設の建設や運営に民間活力を活用するものだけでなく、企業が自治体と組んで地域の課題に取り組むものです。その特徴的な例を紹介しました。そのほか、企業と非営利団体の協働もあります。
ここから見えることは、「餅は餅屋」です。行政、企業、非営利団体それぞれが得意な分野を受け持つのです。官と民が区分され対立する公私二元論ではなく、3つの存在が協力して社会を支える官共業三元論を基本とすべきです。

記事で紹介したいくつかの例を、載せておきます。
(社会起業家)
認定NPO法人フローレンスは、病児保育問題に取り組んでいます。https://byojihoiku.florence.or.jp/
有限会社ビッグイシュー日本は、ホームレスに仕事の機会を提供しています。https://www.bigissue.jp/
ユニファ株式会社は、保育園や幼稚園の生産性向上に取り組んでいる会社です。https:/nifa-e.com/company/
リノベーター株式会社は、単身高齢者、外国人、生活保護受給者など住宅を借りることが困難な人に対して低廉な家賃で部屋を貸し、必要がある場合には生活や就労相談、さらには地域住民ともめないための調整を行っています。京都府=https://rennovater.co.jp/about-rennovater/
株式会社ヘラルボニーは、障がい者の経済的、社会的な自立と尊厳を実現することで、障がい者への偏見をなくすことを目指しています。障がい者が描く絵などを、ポスター、バッグ、服飾雑貨にデザインし、製作販売して、障がい者にも十分な対価を支払います。岩手県=https://heralbony.com/
ココホレジャパン株式会社「ニホン継業バンク」は、地方の零細企業の跡継ぎを探し、引き合わせるサービスです。岡山県=https://keigyo.jp/

(官民連携、民民連携)
あいおいニッセイ同和損保「地域活性応援サイト」。https://adclub.jp/creation.html
特定非営利活動法人「放課後NPOアフタースクール」は、多くの企業と協働して、学童保育でさまざまな学びと遊びの機会を提供しています。https://npoafterschool.org/activities/afterschool/

何と、連載はこれで99回です。次回で100回になります。

脳が作る第3の痛み

11月8日の朝日新聞に「体・神経に傷ない「第3の痛み」、解明進む」が載っていました。
・・・体の損傷などの明らかな原因がなくても痛みが長引く場合があり、脳の神経回路の変化が影響していることが最近の研究でわかってきた。国際疼痛(とうつう)学会が「第3の痛みのしくみ」として提唱。日本疼痛学会など国内8学会の連合が今秋、「痛覚変調性疼痛」と呼ぶことを決めた。名称の決定で、従来の痛みのタイプとの区別が明確になり、治療法の開発の後押しになると期待される。

痛みの発生は従来二つのタイプで説明されてきた。一つは、けがや炎症で組織が傷つき、痛みの信号が出て起きる「侵害受容性疼痛」。もう一つは手術や事故、脳卒中などで神経が損傷して起きる「神経障害性疼痛」だ。だが、どちらにも当てはまらない痛みに苦しむ人は多く、痛む部位を調べても原因は見つからず、医療の中であいまいな位置づけになってきた。
国際疼痛学会は2017年、様々な要因で脊髄から脳にかけた痛みを生み出す神経回路が変化し、痛みが生じたり、痛みに過敏になったりするというしくみを提唱した。国内でも昨秋に発足した日本痛み関連学会連合が用語委員会を立ち上げ、今秋、「痛覚変調性」と呼ぶことを決めた。
この痛みは、痛みへの恐怖、不安、怒りやストレスといった社会心理的な要因が大きく関係する。それらの影響で、神経回路が変化し、痛みを長引かせ、悪化させるとみられている・・・
・・・用語委員会委員長を務める東京慈恵会医大痛み脳科学センターの加藤総夫センター長は「ストレスや心理的影響など様々なきっかけで脳の働きが変わり、脳が痛みをつくることがある。こうした理解が広がれば、痛みに立ち向かいやすくなる」と話す・・・

心の痛みは、これらとは別なのでしょうね。