カテゴリー別アーカイブ: 著作と講演

連載「公共を創る」第197回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第197回「政府の役割の再定義ー成熟社会の到来と変化する国のかたち」が、発行されました。

前回から、若者が公務員を目指さないこと、採用されても早期に退職する者が増えてきていること。その背景に、転職自由社会が到来し、社員や職員の人事政策の前提としていた日本の労働慣行 が崩れつつあることを説明しています。

早く必要な技能を身に付けて、自分の考えを実現していきたい人。会社を否定するわけではないが、自分の職業人生のための過程(ワンステップ)にすぎないと早期の転職を考える人が増えています。これは、年功序列による職員の選抜と技能や経験の蓄積という、従来の企業側の戦略とは相いれない思考です。

このような変化は、職場だけでなく、私たちの暮らしのかたちを変えました。暮らしを形作る主要な枠組み、修学、働き方、家族の形が、昭和後期の経済成長期とともに、平成時代にも大きく変わったのです。それぞれ自由になり、選択肢も広がったのですが、その結果、従来の日本人に安心を提供していた血縁、地縁、社縁が薄くなりました。

ベトナム、ハイフォン市幹部研修

今日9月3日は、政策研究大学院で、ベトナムのハイフォン市幹部研修で講師を務めました。いつものように、大災害への対応と復旧での指導力についてです。

この内容は、何度も繰り返しています。そこで、外国の方に伝わりにくい点も見えてきました。で、話の重点を変えてきました。
投影資料も、一部を変えました。なぜ日本で大きな地震や津波が起きるかです。日本列島が複数のプレートの上に乗っていて、その沈み込みが大きな地震を起こすことの説明です。外国の方は知らないのです。
適当な図がないので、鎌田浩毅・京大名誉教授に、わかりやすい簡単な図を作ってもらいました。ありがとうございます。

今日もよく理解してもらえたようで、「わかりやすい」と言ってもらいました。質問も多く、2時間半の講義のうち1時間を質疑に当てました。

連載「公共を創る」第196回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第196回「政府の役割の再定義ー転換を迫られる公務員の人事政策」が、発行されました。

まず、ここまで述べてきた官僚育成論を整理しました。管理職と幹部官僚とは役割が異なること。企業幹部と幹部官僚に求められる能力の違い。幹部官僚はそのための育成が必要なことなどです。

ところが、実態は急速に変化しています。優秀な若者が必ずしも官僚を目指さないこと、採用されても早期に退職する者が増えてきたこと、さらに日本でも転職自由社会が到来し、日本の労働慣行であった新卒一括採用、人事課による配属決定、年功序列、終身雇用が崩れつつあることです。
それは民間企業だけでなく、公務員の世界にも押し寄せてきています。これまでの人事政策は、革命的転換を迫られています

これまでは、公務員制度改革が議論されてきたのですが、制度が前提としていた実態が大きく変化し、いかに運用していくかが課題となってきたのです。
それを引き起こした「黒船」は、「転職が不利にならなくなった」ことです

連載「公共を創る」執筆状況

毎日、多くの人にこのホームページをご覧いただき、ありがとうございます。もうじき、430万人に達します。久しぶりの「連載「公共を創る」執筆状況」です(前回4月6日)。
8月29日掲載予定の第196回は校閲もすみ、掲載待ちです。9月5日掲載予定の第197回はゲラができて、校閲待ちです。9月12日掲載の第198回は、原稿を編集長に渡しました。

これでひとまず、第170回(去年の12月)から続けてきた「官僚の人事政策」が終わります。さらに、去年5月から書いてきた「第4章 政府の役割再考 3 政府の役割の再定義(1)社会の変化と行政の役割」が終わります。
いつものことですが、こんなに長くなるとは思いませんでした。書いていくうちに、「そうだこんなこともある」「これにも触れておこう」と次々と広がります。また、原稿に目を通してもらっている右筆さんが、欠けている点を指摘してくれます。

私は先週から、次の「政治の役割」を書いています。なので、第196回、第197回、第198回、第199回が、同時に走っています。
新しい項に入るので、まずはその中の構成を思案中です。連載執筆で、一番悩むのは、この構成を考えることです。それができれば、別途書きためてある「部品」を集めて、文章にすればよいのです。もちろん、その作業も簡単ではありませんが。
夏休みで気分は緩み、執筆意欲は落ちるのですが、締め切りを考えるとそんな悠長なことは言っておられず。早起きして、原稿に向き合っています。その甲斐あって、なんとか、粗々の構成を作り、最初の部分を書き始めました。

当初、「全体の構成」では、「政治の役割」は一つの項を立てることなく、「(1)社会の変化と行政の役割」の中で、「政と官」を書けばよいと考えていました。この連載の副題は「新たな行政の役割」です。
しかし、機能不全と思える官僚機構を機能させるためには、官僚の努力だけでは限界があります。政治主導の時代に、官僚だけが勝手なことはできないのです。官僚機構を使いこなすのは、政治の役割であり、国民の意向です。そこで、「政治の役割」を項として立てることにしました。これも、書こうと思えば、書くことはたくさんあります。

連載「公共を創る」第195回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第195回「政府の役割の再定義ー官僚への信頼を取り戻すには」が、発行されました。

前回、幹部官僚には、必要な能力とともに、「志」と「やりがい」が重要だと説明しました。私が国家公務員になった頃(1978年)には、まだ官僚はエリートだという意識が社会にも官僚にもありました。しかし、1990年代の過剰接待事件を機に、官僚への信頼は地に落ち、戻っていません。また、エリートという言葉は死語になったようです。

かつて、官僚の失敗を聞かれ、私は3つの次元に分けて説明しました(2018年5月23日付け毎日新聞「論点 国家公務員の不祥事」)。
・官僚たちの仕事の仕方の問題
・個人の立ち居振る舞い
・国民の期待に応えているか、です。

1番目の問題と2番目の問題は、あってはならないことですが、いつの世でもどの組織でも起きる問題です。
それに対し3番目の問題は、構造的に取り組まなければなりません。私が考えるに、それは明治以来1世紀半ぶりの大転換です。その問題意識で、この連載を書いています。