カテゴリー別アーカイブ: 人生の達人

会社任せの職業人生

10月29日の日経新聞に「転職で年収増」最高の4割 求められる成果厳しく、降格や退職勧奨も」が載っていました。
・・・転職によって年収が1割以上増える人の割合が約4割と過去最高水準にある。人手不足やジョブ型雇用の広がりを背景に、働き手は転職に踏み切りやすくなっている。一方、外資系企業のように結果が出ない社員に降格や退職勧奨を実施する制度を国内企業の2割が導入する。人材流動化に伴い、日本の労働市場は変化している・・・

記事には、転職希望者が1000万人を超えたこと、正社員の転職率は7%を超えていることも書かれています。
他方で、思うような結果が出ないと給与が減ること。業務改善計画を会社とその社員とで話し合って作ること。それでも結果が出ないと、降格や勧奨退職があることも紹介されています。
社員の流動性の低さは、年収の差にも出ています。外資系企業の年収は部長職で1916万円で、日本企業の1408万円に比べ、4割上回っています。

世界11カ国の転職者を対象にした調査では、将来のキャリア形成のために実施していることはないという比率が、日本は30%、アメリカは2%、中国は3%です。他の国に比べても、日本だけが突出しています。
自分の職業人生を会社に任せていることが、現れています。

失敗を畏れず、失敗から学ぶ

日経新聞・私の履歴書、ヘンリー・クラビス・KKR共同創業者兼会長。10月28日の「失敗に学ぶ」から。

・・・プライベート・エクイティ(PE)投資は素晴らしいアイデアだと思ったが、我々が始めた頃は誰も手掛けておらず、成功の保証もなかった。
始めるにあたり、失敗をいとわないことは必須だった。起業家なら誰もがそう言うだろう。「私は間違えたことがない」。こう言う投資家がいたら、その人は記憶が飛んでいるか投資歴が浅いか、真実を見失っているかだ。
KKRの最も偉大なイノベーションで、率直にいって会社を最も変えた決断も、悲惨な失敗と背中合わせだった・・・
・・・失敗で何を学ぶかも重要だ。「失敗したらさっさと認め、何を学んだのかまで周囲に話してしまえ」。ジョージは社内でこう勧めている。

失敗を認めない風土は危うい。「深刻な問題がある」。1990年代に金融危機が日本を襲う前、邦銀のCEOに切り出された。「問題って何ですか?」と私。「実は大量の不良債権がある」と彼。衝撃を受けた。その後の自滅は歴史が示す通りだ。
失敗に早く向き合って治せば軽傷で済んだのだ。ゴミをじゅうたんの下に隠し続けると、じゅうたんはゴミで膨らみ掃除も難しくなる。

失敗を容認しないと、企業の成長に必要なイノベーションも起きない。ジョージは「悪いアイデアより悪いのがノーアイデアだ」と警告する。
若い人には特に、失敗とそれを克服する機会を与えた方が良い。いずれ失敗するのだ。苦労を重ねるうち、良い判断の数は失敗を上回っていく。
失敗を語ってもいい文化は、新しいことに気持ちよく挑戦する風土を生み出す。ジョージと私は、「うまく行ったら手掛けた人の手柄。行かなかったら私たち2人だけの責任だ」と言って現場の雰囲気を和らげてきた。これからそれは、共同CEOを私たちから継いだ2人の仕事だ・・・
仕事ができる人は「ありがとう」を言える人

デンマークの生産性に学べ、16時に帰宅

10月23日の日経新聞オピニオン欄、半沢二喜・論説委員の「デンマークの生産性に学べ モーレツNG、16時に帰宅」から。

・・・スイスの有力ビジネススクールIMDが6月に発表した2024年の世界競争力ランキングで、デンマークは3位。前年の首位から落ちたものの、「ビジネスの効率性」という指標ではトップをひた走る。それぞれ38位と51位に沈んだ日本とは対照的だ。

高い効率性の背景には徹底した無駄の排除と社員のモチベーションの高さ、管理職のマインドセットがある」と針貝氏は指摘する。
働く個人は仕事に優先順位をつけ、4番目以降のタスクは捨てる。会議は相手の時間を奪うため、参加者を厳選し延長しない。ランチは30分で済ませ、午後4時には仕事を切り上げる。家族との夕食や私生活を大切にするからだ。仕事優先で家庭を顧みなければ離婚を迫られることも度々ある。効率化の原点は生活を重視する姿勢にある。

「上司は部下を管理するのではなく、ファシリテーター(促進役)に徹している」と針貝氏は話す。信頼ベースで若い人にも大きな仕事を任せ、日本のように細かく口出しするマイクロマネジメントは一切しない。そんな時間的余裕もないからだ。適材適所を最重要視し、組織のパフォーマンスを最大限に引き上げることを目指している。
上司が業務の必要性を説明できなければ、部下から拒否されることもあるという。就業時間中にスキルアップに取り組めるのはもちろん、週に1日、自由な行動を認める企業もある。個人をプロとみなすフラットな組織運営が士気と挑戦心を高めるわけだ・・・

稲継裕昭著『自治体人事評価Q&A』

稲継裕昭著『よくあるお悩みからレアケースまで 新版 自治体人事評価Q&A』(2024年、ぎょうせい)を紹介します。
国家公務員に新しい人事評価制度が導入され、2018年度から地方自治体でも本格的に導入されています。この評価制度がなくても、「勤務評定」はされていて、出世する人とそうでない人の選抜は行われていました。
人事評価は、能力や業績を見て、給与や昇進に生かすことだけが目的ではありません。対象職員の能力向上、やる気の発揮、そして組織の目標達成に活かすことです。

とはいえ、職員を評価することは難しいことです。通常の業務なら、上司や先輩のやり方を見て覚えることができるのですが、評価はそのような「予行演習」をしにくいのです。また、部下を低く評価することは、嫌なことですよね。
この本には、基礎的なことから、おちいりがちな問題なども、丁寧に解説されています。

仕事で座り過ぎはよくない

10月19日の朝日新聞夕刊、鎌田真光・東京大大学院・医学系研究科講師の「「仕事で座り過ぎ」はダメ?」から。

・・・産業構造の変化や機械化などに伴い、仕事中の体の活動量が減っていることは、多くの人が実感しているだろう。では、実際にどれくらい減ったのか。東京大学大学院の鎌田真光講師(運動疫学)らが調べたところ、過去70年間で少なくとも約1割低下したと推定されることがわかった。「人類の進化とのミスマッチが起こっています」。鎌田講師は、危機感を持つべき問題だと警鐘を鳴らす。

鎌田講師らは、総務省の労働力調査で329に区分された仕事の就業者数に、それぞれの仕事の活動強度を掛け合わせて、それらを合算。日本における職業上の活動強度の平均値を年ごとに出し、8月に研究結果を発表した。
活動強度は、米国の先行研究で全職業について算出された強度を用いた。例えば、引っ越し業に携わる荷役従事者は、かなり高い。農林漁業従事者や建設作業者、宅配業の配達員、介護職員、看護助手なども高い方に分類される。一方で、デスクワーク中心の管理職や事務、販売従事者は、活動強度が最も低い層だ。記者職も低い方に分けられる。
そうして算出した活動強度の平均値を、1953年から2022年まで年ごとに比較した。すると、職業分類方法に大きな変更がない1962年から2010年の48年間では、9・6%の低下がみられた・・・

・・・「例えばさらにさかのぼり、江戸時代と比べれば、身体活動の減り幅はもっと大きいはずです。そもそも、人類は高い強度の身体活動に適応するようデザインされ、進化してきました。人類進化生物学の研究によると、二足歩行が始まり、狩猟採集で食べ物を得た時代は1日平均、9キロ~15キロは歩いたと言われています。そうした長い期間でみると、時計の針をちょっと巻き戻した70年間だけで、1割も減った。急速に進む非活動化は、人類の進化とのミスマッチとみるべきなのです」
このミスマッチはどんどん広がる。例えば、厚生労働省は2000年に、10年間で1日の平均歩数を1千歩増やすことを目標とした。しかし、14年の調査では、平均歩数は約1千歩減少し、その後も減少傾向にある。

身体活動量の低下がこのまま進むと、どういったことが起こるのか。
「がんや循環器疾患、2型糖尿病など様々な疾患のリスクにつながります。デスクワークでずっと座っている働き方は体にとって自然でないととらえるべきです」
「座りっぱなしは筋肉の働きが抑えられ、代謝が低下し、血液の流れも悪くなります。そこで、立って仕事ができる高さのデスクの活用や、30分間に1回、軽いストレッチなど、仕事を中断して短時間でも身体を動かす時間をとることが推奨されます。それも個人に任せるのではなく、『それが当たり前』と会社を挙げて推進するくらい、積極的な採り入れ方が必要でしょう」・・・

・・・世界20カ国への調査では、日本人の平日の平均座位時間は1日7時間と最も長い結果が出たこともあり、日本は世界トップクラスの「座り過ぎ国」と指摘されるという・・・