カテゴリー別アーカイブ: 行政機構

行政-行政機構

学校現場への文書半減の試み

4月20日の専門情報誌「官庁速報」が、「学校現場への文書半減=山梨県教委」を伝えていました。県の教育委員会から学校に、1年間で1500枚もの文書が送られているとのことです。
新型コロナウイルス感染症に関して、各省から自治体に膨大な数の文書が送られたことを、かつて紹介しました。役所で仕事をしているとき、送りつけられる大量の文書を「紙爆弾」と揶揄していました。あまりにたくさん来ると、処理できずに放置され「不発弾」のままで埋もれてしまいます。受け取る方の事情を知らずに、自分の方の都合だけで仕事をすると、こんなことが起きます。

・・・山梨県教育委員会は今年度から、市町村教委や学校現場へ送る文書を半減させる取り組みを始めた。国や各種団体からの通知を県教委が精査し、「送付しない」「市町村教委に留め置く」などと分類。共有の必要があるもののみ、要点をまとめた文面と共にグループウエアや校務支援システムで学校現場に送信する。
県教委によると、学校現場に送付される文書は年間1500枚以上に上る。事務負担を軽減し、教育の質向上を図る。教員の担い手確保にもつなげたい考えだ。

今後、国が行う調査やアンケートは、学校基本調査など法律に基づくものや、いじめ調査など児童生徒の命に関わるもの以外、県や市町村教委が分かる範囲で回答し、教員が対応する文書の数を減らす。
県による調査やアンケートは、必要性や方法を見直し、政策立案が目的の場合は必要最低限で実施。可能なものは標本抽出で行う。毎年定例的に行っている調査などは、2~3年に1回などに頻度を下げる・・・

自治体での昇任試験

コメントライナー第9回「人事評価、職場と職員を変える手法」にも書いたのですが、職員の昇任試験が行われている自治体があります。その数は、5都府県、369市区町村です。昇任試験の実施状況については、総務省が調査しています。「地方公共団体の勤務条件等に関する調査」の17。

昇任試験は優秀な職員の選抜のためですが、機能はそれだけではありません。合格しなかった職員に、その後の処遇を納得させる機能も果たしています。人事評価だけでは、「上司と人事課は、私の能力を正当に評価してくれない」と不満がたまりますが、客観的な試験に落ちれば、その点について本人は納得せざるを得ないでしょう。

他方で、情実人事を防ぐ役割も果たしています。
かつて聞いた話ですが、役場幹部や議員から「特定の職員を昇任させるように」との圧力がかかる場合があります。きっぱりと断ることができればよいのですが、なかなかそうもいかない場合もあるようです。
その場合に昇任試験があると、「彼は試験に受かっていないので昇任させることができません」と断ることができるのです。その目的のために、試験を導入した自治体もあったようです。

新型コロナ、8か月間で通知1500件

新型コロナウイルス感染症が拡大した当初に、各府省から自治体あてに膨大な数の通知や連絡が出されました。私も2020年の春に、ある市長から、両手を30センチくらい広げて「こんなにたくさん来ても、読まないわ」と苦情を言われたことがありました。

専門誌『地方行政』の1月23日号に、高坂晶子・日本総合研究所主任研究員が、神戸市が8か月間に受け取った国からのコロナ関連の通知が、約1500件だったと書いています。

政府統計の問題と対応策

1月13日の日経新聞オピニオン欄に、森川正之・一橋大学教授の「政府統計にも不可欠な「人への投資」」が載っていました。詳しくは原文を読んでいただくとして、次のような文章があります。

・・・近年、政府統計を巡る不適切な事案が相次いだ。この結果、一部の省庁ではリスク回避のため統計調査自体をやめる動きもあるようだ。間違いが起きると困るからやめるというのは本末転倒だが、その背後には政府部内における統計人員の削減がある・・・

国家公務員総数の増加

年末の12月23日に内閣人事局から「令和5年度機構・定員等審査結果」が、公表されました。それによると、組織の新設とともに、新たな業務に対応するため、8,155人が増員されています。他方で業務改革により7,104人が削減され、合計で1,051人の増加です。
過去を遡ると、
令和4年度は1,084人(当初の査定では401人)の増加
令和3年度は399人の増加
令和2年度は287人の削減でした。

地方公務員も増えています。各年4月1日で比較すると、令和4年では前年に比べ3,003人の増加、令和3年では38,641人の増、令和2年では21,367人の増、平成30年では3,793人の増です

行政改革の旗印の下、職員数の削減が続いてきました。しかし、それにも限度があり、他方で新しい業務が増えています。必要なところに必要な人員を配置する。当然のことです。