カテゴリー別アーカイブ: 災害復興

行政-災害復興

災害関連死

昨日12日に、「災害関連死に関する検討会」を開きました。私は担当なのですが、福島に出張していて、職員にすべて任せました。ごめん、諸戸参事官。
総数が約1,600人であることは、すでに公表しました。その後、その中の分析を進めています。約500人について分析しました。その概要です。
年齢別では、80歳以上の方が74%(表3)。時期別では、3か月以内に亡くなられた方が71%(表4)。原因別では、初期治療ができなかったことや避難所への移動中が43%、避難所でのストレスなどが30%です(表5。複数回答)。自殺者は5人でした(表7)。
まだ。分析の途中なので、中間報告です。

福島再生基本方針決定

今日13日に、「福島復興再生基本方針」が閣議決定されました。内容は、概要を見ていただくとして、本文は110ページもの大部のものです。
当初は、5月中に決定する予定でしたが、県や市町村と協議を重ねることで、今日までかかりました。法定の協議にかける前のすりあわせでも、市町村からは約400項目の意見をいただき、それらを調整したのです。関係者にはご納得いただいているので、問題はないと思います。
福島県知事からも、「復興庁はよくやってくれた」という趣旨の、ねぎらいの言葉をいただきました。ありがたいことです。
もちろん、方針や計画は作ることが目的ではなく、それを実行して評価されるべきものです。しかし、このように閣議決定することで、政府全体を縛ることになり、国民の前に国の責務を明らかにしたことになります。これからは、ここに盛られた事項を実施し、なるべく早い帰還を進めることが、私たちの仕事です。

昨日に引き続き、今日も福島県に行って、これからの進め方について12市町村の方と意見交換をしてきました。「遅い」「進んでいない」と批判されますが、県や市町村の協力を得て、一つずつ進めています。
一番困る批判は、具体的な事項を指摘せず、「遅い」と言われることや、物差しを示さずに「遅れている」と批判されることです。岩手県や宮城県と比較して、「進んでいない」とおっしゃる方もおられますが、津波被害は水が引いたら復旧に着手できます。放射性物質に汚染されたところは、自然減衰したり除染しないと、復旧に取りかかることはできません。避難区域は、避難が解除されてからになります。
「住民の立場に立っていない」とか、「寄り添っていない」というご批判もあります。批判は甘んじて承りますが、どの点がだめなのか具体的に指摘していただかないと、是正しにくいのです。

企業やNPOへの期待、新しい試み

復興に関して、私が関心を持っていることに、企業との連携やNPOとの連携があります。このホームページでも、何度か書いています。また、NPOへの期待については、先日、「東北復興新聞」にも書きました。さかのぼると、『新地方自治入門-行政の現在と未来』の第8章に「官共私三元論」を書いた頃からの関心です。
復興の場面では、町がなくなっているので、町がどのような要素からできているかが、わかります。そこでは、商店街での各種サービスと雇用、町内会やいろんな集団のつながりといった要素がとても重要です。
しかし、これまでの地方行政論では、それらは所与のものであり、役場の仕事の外にありました。企業誘致は、行っていましたが。極端に言うと、企業やNPOは、せいぜい民間へのアウトソーシング・民間委託の対象でしかありませんでした。ともに地域社会を支える、公共の担い手であることは十分には認識されていません。多くの行政学や地方行政の教科書には、出てきません。

今、復興庁では、企業連携班NPO連携班をつくって、新しい試みに挑戦中です。どこで、誰に、何を手伝ってもらうか。具体事例を示さないと、抽象論では理解されないでしょうし、広がりません。
そのためには、一方で誰が何を提供してくれるか、他方でどこで誰が何を求めているかを調べ、つながなければなりません。
避難所にいる時期(昨日の記事の第2期と第3期)では、避難所での炊き出しや物資の配布の手伝い、がれきの片付けなど、作業がわかりやすかったのです。しかし、仮設住宅期、町の復興に取りかかる時期(昨日の記事の第4期)になると、まだ実例も少なく手探り状態です。
復興庁では、今後、NPO、企業、自治会、行政がどのような役割を期待されているか、5つの分野に分けて、大まかな「地図」を示しました。「多様な担い手のロードマップ」。これを、具体化していく必要があるのです。

いろいろと、調査の触手を広げているところです。職員が手探りで、研究してくれています。成果はこれからですが、乞うご期待。そしてそれは、新しい公共や行政のあり方の試行です。

復旧段階ごとの、被災者支援の課題

発災から1年4か月がたち、地震津波被害地域では、復旧・復興が新しい段階に入っています。振り返ってみると、次のような段階に分けることができます。復旧というと、インフラ復旧が目立ちますが、被災者支援という観点から考えてみます。

1 まずは、発災直後です。この時期は、救助が第一です。消防、警察、自衛隊などが活躍します。
2 次は、被災者を、避難所に収容する時期です。今回の大震災のように規模が大きくなると、どこにどれだけの人を収容するかが、大きな課題になります。そして、その人たちに水や食料、身の回りの品を届けることが重要です。これは、消防や警察の仕事ではありません。市町村役場の仕事であり、それを県や国、さらには他の自治体やNPOが支援することになります。
この重要性は、案外認識されていません。災害対策や危機管理と言ったときに、消防や警察ばかりが取り上げられますが、市役所のこのような役割や能力は重要です。そして、消防や警察は、広域に支援することを訓練しています。今回も非常に良く機能しました。それに比べ、避難所への収容時期の市町村応援は、まだ確立していません。国が直接支援することも、今回が初めてでした。
3 その次は、避難所の運営の時期です。仮設住宅に移るまで、しばらく避難所生活が続きます。避難所の生活環境を改善することが、重要になります。
4 その次に、仮設住宅生活の時期が続きます。プレハブ住宅での暮らし、あるいは借り上げ住宅での暮らしです。これも結構長期間になるので、生活環境を改善したり、孤立防止をしなければなりません。そしてこの時期になると、住宅や町並み復旧を考える時期になります。これをどのように支援するか。重要な課題になります。市町村役場だけでは手が回らないので、自治会の役割はもちろん、NPOなどの支援が期待されます。しかし、これらも経験が少なく、これからの課題となっています。

道路や漁業の復旧だと、国や市町村役場にそれぞれの担当部局があるのですが、被災者支援は明確な部局がないのです。今回、国では、被災者支援本部、復興本部、復興庁を作りました。今後、災害が起きた場合にどうするか。これも課題です。