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社会

飛行機の軌跡

一度、見てみたいと思っていた「地図」を、見つけました。宇宙から見た地球ですが、単なる地図でなく「、つながり」や「動き」を示す地図です。今回見つけたのは、「ヨーロッパの航空機の動き」と「世界の航空機の動き」です。前者は3万回のフライトの軌跡を、2分ほどで描きます。後者は全世界の動きです。お楽しみください。
これとは別に、夜の地球をとらえた衛星写真があります。ごらんになった方もおられるでしょう。明るい地域とそうでない地域、すなわち人間の活動が、はっきりとわかります。しかし、私が見たかったのは、つながりや動きです。
通信やエネルギーの動きが見える「特殊眼鏡」や、人と人とのつながりが見える「特殊眼鏡」で、宇宙から地球を見たらどう見えるかです。これについては、別途書きます。

日本は安定した社会、しかしマイナス面も

1月7日の日経新聞経済教室、猪木武徳先生が「日本の針路」で、ロンドンの「エコノミスト誌」の記事を紹介しておられます。いま世界で、どの国が政治的に安定しているのか、社会の不安が小さいのかを探った報告です。
評価項目は5つ。第1は「社会的不安」で、核物質の取り扱いを巡る政府の管理能力。第2は、憲法体制が秩序ある政権交代を可能にしているか。第3は、政体を揺るがすような国際紛争に巻き込まれているか。第4は、現在あるいは将来の武力衝突の有無や可能性。第5は、デモや市民の暴力的集団活動があるかです。
調査結果では、日本は、世界第2位で「極めてリスクの低い国」です。他は、ノルウェー、スウェーデン、スイス、オーストリアなどです。社会の安定性は、世界に誇るべきことです。
ただし、それを手放しに喜んではいけないというのが、先生の主張です。すなわち、この安定した社会の中にいると、他の多くの国が大きな社会不安を抱えていることや、世界の政治が不安定である事実の認識を甘くします。そして、日本が活力のない国になってしまわないかという心配です。このあたりは、私が極めて単純化しているので、詳しくは原文をお読みください。
指摘の通りでしょう。ジャパン・アズ・ナンバーワンと慢心したところで、日本の発展は停滞しました。また、安定した社会に安住していると、変化や革新は起きません。若さは、エネルギーにあふれ、しかし不安定です。それに対し、成熟は、安定しますが、発展はありません。
そしてこの指摘に続いて、中国リスクを指摘しておられます。

アメリカ型組織・人事と日本型組織・人事。5

日経新聞1月6日企業面「経営の視点」に、「明日のリーダーはいるか。「選ぶ」から「つくる」へ」が載っていました。
アメリカの大企業で、経営刷新のためにトップを外部から選んでくる例があります。しがらみがなく、違った見方ができる人材が改革に取り組み、企業を再び成長軌道に乗せた例も多いです。しかし、結果を出せず、その後のトップ選びも混乱して形成戦略がぶれだして、企業が低迷期に入る例もあります。また、社外の人材ばかりに頼れば、社内の士気は上がりません。
トップになる候補を内製し、準備している例も多いとのことです。日本の例として、日立製作所が紹介されています。
・・各事業責任者やグループ企業トップなど、約40の重要ポストを選定。それぞれのポストについて、どのような候補者がいて、一人ひとりにどんな経験を積ませて育てるかを、中西宏明社長と人事部門が話し合う。技術部門が長い人材なら、海外販売会社の責任者に命じるなど、本人には簡単でないハードルを課す。彼らは、将来の会社のリーダー候補だ。
勝てるシナリオを作る能力や決断力、ビジョンを社内に示して共感させる力など、リーダーに求められる資質は多様になった。リーダーは出来合いの人材から「選ぶ」のでなく、意識的に「つくる」のが世界の流れだ・・
人材を、社外から「買ってくる」アメリカ型、組織内から「選ぶ」日本型、そして意識的に「育てる」新しい型があるようです。

社会科学での「正しさ」

読売新聞12月30日文化欄「論壇誌12月」で、広井良典・千葉大学教授が「アベノミクス、肯定と懐疑」と題して、現政権の経済政策に肯定的な2人と懐疑的な2人の主張を紹介しておられます。その中の言葉から。
・・意見の相違を遡ると、経済における「期待」ないし主観的な要素の評価や、人々の需要はどこまで拡大するかという人間観の相違にまで至るのではないか・・
短い言葉ですが、政策さらには社会科学における、「正しいことと間違ったこと」「期待することと達成できること」の難しさを、示しておられます。

アメリカ型組織・人事と日本型組織・人事。4

雇用が個人や社会にとって重要なのは、それが安心の要にあるからです。雇用が安心の要にあるということを教えてもらったのは、宮本太郎北大教授(当時)です。
麻生政権の安心社会実現会議で、「安心と活力の日本へ」という報告書をまとめました。その報告のポイントは、安心の中心には雇用があり、その回りに、子育て、教育、健康、老後があるというものです。私は、安心と聞くと、健康保険や介護保険と年金、そして生活保護制度を思い浮かべていました。しかし、それらの中心に、雇用があるのです。日本社会が安定しているのも、安全安心な社会だといわれるのも、失業率が低いこととともに、労働者が安心して働けることと、そこそこ満足できているからです。それが、個人や家庭の安心にもなっています。
国家の視点からは、経済成長やGDPが重視されます。確かに、豊かさは重要な指標です。また経済成長によって、失業率は低下します。しかし、GDPが大きくても、貧富の差が大きくては、社会は安定しません(そのほかに、政治的・社会的自由と平等も、近代社会の安定には必要です)。生産や消費の数値より、個人にとっては雇用が重要なのです。欧米のように失業率が上がり、また近年の日本のように若者が非正規雇用に追いやられると、個人や家族そして社会の安心は保つことができません。社会の安定にとって、そして個人の安心にとって、雇用が大きな要素です。