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オバマ大統領、国民は何を期待したか

アメリカ中間選挙で民主党が大敗したことを、各メディアが大きく伝え、解説しています。オバマ大統領への批判に絡めたものが多いようです。
11月6日の朝日新聞、久保文明・東大教授の解説「経済政策の実績、評価されず」から。
・・民主党敗北の最大の要因は、オバマ政権の経済政策の実績が評価されなかったことだろう。米国経済は好調で、株価は過去最高水準で推移。一時は10%を超えた失業率も5.9%まで下がった。にもかかわらず、実質賃金が上がらないことや格差の拡大などで国民のムードは悲観的だ。世論調査で3分の2が「米国は悪い方向に向かっている」と答えており、共和党政権で起きた大恐慌から経済を立て直したという訴えに国民が実感を持てるようになるには、時間が足りなかった。
加えて、オバマ氏のウクライナや「イスラム国」問題に対する弱腰の姿勢から、リーダーシップが方向性を失って米外交が漂流しているという感覚が広がったことも影響している・・
久保教授は、11月11日の日経新聞経済教室でも、詳しく解説しておられます。
10月28日の朝日新聞オピニオン欄、レオナルド・スタインホーン・米アメリカン大学教授の「相反する人心、つかめぬ大統領」から(この記事は、投票日前です)。
・・現在のオバマ氏の不人気は奇妙な状況ともいえます。大恐慌に次ぐ規模だった2008年以降の金融危機から回復して、経済はかなり好調です。失業率は6%を下回り、企業は大きな利益を上げています。
ただ、オバマ氏はこうした成果を、説得力を持って説明することができませんでした。「もっとうまくできたかもしれないが……」といった調子で自己弁護的な説明が多かった。オバマ氏は優れた雄弁家ですが、偉大な「コミュニケーター」ではないのかもしれません。元大統領のクリントン、レーガン両氏のように、感情レベルで人々とつながることができないようです。もちろん今でもオバマ氏を支持する民主党員は大勢いますが、この国の人々の心の奥底にある「核」をとらえることができていません・・
同じく11月8日の朝日新聞オピニオン欄、フランシス・フクヤマさんの「米国と世界のこれから」が、次のような分析をしています。
・・とても失望しています。2008年に当選したときには、カリスマ性のあるリーダーのように思われました。しかし、国を治めるための協力態勢を築くという点において、極めて無力な大統領です。彼は、人と個人的な関係を結ぶよりも、大きなスタジアムで2万人の前で演説するほうがよほど得意な人物です。
もっと深刻なのは、オバマ氏が内政に集中し、国外の問題についてあまり関心を持たず、大きな問題にかかわろうとしなかったことです・・

異業種交流会、必要なのはアイデアだ

今日は、視察に同行した後、東京に戻って会合に出席しました。先日、経団連とJAと日本経済新聞社が合同で、被災地の産品を売るマルシェを開いてくれました。そして、これまでにない売り上げを上げました。その感謝と、次につなげる検討会です。復興庁の担当者と3県の関係者と一緒にです。
生産者である全農、売ってくださる企業を抱えている経団連、それをPRしてくださる新聞社。強力なトライアングルです。ふだんなら、こんな組み合わせの会議はありません。このイベントのほかにも、いろんな方々が協力してくださっています。ありがとうございます。
課題は、このようなイベントともに、普通の商店で普通に、被災地特に福島の産物を売ってもらうことです。発災直後は、国民の関心も大きく、展示即売会ではたくさん売れました。その後、関心は薄れています。しかし、最近になって、また関心や売り上げが増えているのです。
誤解を恐れずに言うと、「同情」による購入(寄付みたいなもの)から、良い品だから買う、に移りつつあるのです。次の手を考えなければなりません。

国会議員による視察、進む復興

今日10日は、衆議院復興特別委員会の視察に同行して、岩手県大船渡市と陸前高田市に行ってきました。工事は本格的に、かつ順調に進んでいます。いくつかの課題を抱えつつもです。
大船渡市では、水産業が基幹産業です。その拠点である漁港と魚市場が復旧し、昨年後半から水揚げが戻りつつあります。量で8割、金額にして9割の復旧だそうです。魚市場が復旧すると、それに付随する産業が復旧します。製氷、運送、ガソリンスタンド、飲食店などなど。被災直後に訪問した際、市長が「この町は、水産業で成り立っています。それを復興すれば、町は生き返ります」とおっしゃっていたのを、思い出しました。そこで、市長は魚市場の復旧を急がれました。
魚市場の周辺は、土地のかさ上げはこれからです。しかし、計画ができているので、市長は自信を持っておられます。復興が、目に見えるのです。
陸前高田市も、最初の公営住宅が完成し、住民が仮設住宅から入居して、町内会もできていました。ここも計画ができて、工事が本格化しているので、市長さんが自信を持っておられます。
復興は、着実に進んでいます。市長や市役所幹部による、国会議員への説明や要望も、かつてとは様変わりしています。議員の先生方と、そのような会話をしてきました。

「地方創生」と「新しい東北」

内閣は、新しく「まち・ひと・しごと創生」(地方創生)に、力を入れています。各地域での人口急減と超高齢化という課題、これは一地域の問題でなく、日本全体の問題になっています。ところで、東日本大震災で大きな被害を受けた地域は、少子化、高齢化、産業の空洞化のいわば「先進地」です。
「復興」と聞くと、インフラや住宅等の復旧を思い浮かべますが、インフラを復旧しただけでは、この地域では、まちの賑わいは戻りません。「産業・生業の再生」と「コミュニティの再建」が、必要なのです。そこで復興庁では、この2つの復興に力を入れています。しかしこの2つの目標は、従来型の行政手法(官によるモノ作りや補助金配分、法改正)では、成果が出ません。必要なポイントは、次の通りです。
1「民が主体」=行政は、産業(企業)を運営できません。行政が支援している限り、産業は自立しません。コミュニティは自立しません。
2「モノでなく知恵の支援」=中小企業に不足しているのは、知恵やノウハウです。
3「必要なのはお金でなく人」=企業を興したり、新しいことに取り組むのは、熱意を持った人材です。元気な若者、外部人材、変わり者です。しばしば「若者、よそ者、ばか者」と言われます。
4「官ができることは、これらのコーディネイト」=「支援を必要とする人」と「支援できる人」を結びつける機能が重要です。もちろん、役所が自ら行うのではなく、そのような場を作り応援することでしょう。
復興庁では、「新しい東北の創造」という言葉で、新しいかたちでの地域振興に取り組んでいます。切り口(柱)は5つです。子ども、高齢社会、エネルギー、回復力、地域資源です。手法は、官と民との連携、専門家の派遣、地域での先導的な取り組みの支援、被災地企業への大手企業のノウハウの支援などです。
これまでの箱物や補助金行政では、必ずしも地域の振興に成功しませんでした。これまでとは違った手法が必要なのです。「新しい東北」の取り組みは、地方創生の先駆けになっていると考えています。
11月6日に官邸で開かれた「まち・ひと・しごと創生会議(第3回)」で、小泉政務官(地方創生担当兼復興担当)が、「地方創生に関する現地視察と東北被災地の復興から学ぶべきこと」を報告されました。資料のp5と6が、「新しい東北」関係です。特にp6では、人が重要だという視点から、事例と中心となっていただいている人を載せてあります。