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伊藤隆敏先生

日経新聞夕刊「人間発見」12月15日から19日は、伊藤隆敏・政策研究大学院大学教授の「理論の力で政策を正す」でした。この欄は、いわば私の履歴書の短縮版で、5日間で1人の人を取り上げるようです。先生の学生時代から、留学、若手研究者の頃の努力が書かれています。
先生には、経済財政諮問会議議員をしておられた頃に、親しくしていただきました。第1次安倍内閣の頃です。私は内閣府の経済財政部局で官房審議官をしていて、民間委員のお世話をしていたのです。他に、八代尚宏国際基督教大学教授、御手洗冨士夫・経団連会長(キヤノン会長)、丹羽宇一郎・伊藤忠会長でした。
これまで付き合いのない分野の方、また一流の方と接することができて、非常に勉強になりました。 身内とのおしゃべりより、異業種との交流は、面白く勉強になります。
当時は、民間委員が議論のたたき台(民間議員ペーパー)を出して、諮問会議の議論を方向付けるのです。ペーパーを作る勉強会に陪席させてもらったり、説明をしたりします。伊藤先生から経済学的な議論や諸外国との比較を教えてもらい、八代先生から規制改革の議論を学べるのです。「行政改革の現在位置~その進化と課題」年報『公共政策学』第5号p37~(2011年3月、北海道大学公共政策大学院)を書いた時も、八代先生にアドバイスをもらいました。
伊藤先生はこの連載で、「世界で戦える日本にしたい」と考えてきた、と書いておられます。先生は東大教授から、政策研究大学院大学に移られ、来年1月からは、アメリカのコロンビア大学の教授にも就任されるとのこと。ますますエネルギッシュにご活躍です。

難しく生きる人、周りを見ない

今日は、別のことを書こうと思っていたのですが。あまりに印象が強烈だったので、電車での出来事を書きます。今日の帰りです。地下鉄のホームで、みんな並んで電車を待っていました。すると、漫画を読みながら歩いてきた女性(たぶん30~40代だと思います)が、その列の前に並びました。一心不乱に漫画を読んでいるのです。眼は本に集中していて、周囲をまったく見ません。並んでいる人たちも、あっけにとられたまま。「おいおい、みんな並んでいるんだよ」。
電車が来て、まずはその女性から乗りました。漫画を読んだまま、扉の中央右に立ちます。後ろに並んだ私たちは、彼女を避けながら奥に入ります。何人かの乗客は、彼女にぶつかります。だって、通路の真ん中に立っているのですから。本人は、まったくその状況に関心なし。
その「不動心」に、感心するやらあきれるやら。きっと、職場や家庭でも、そのような振る舞いをしているのだろうと、心配になりました。本人に悪気はありません。でも、うまく回らないでしょう。「私は何も悪くないのに、何で皆が私にぶつかるの!」と。

旧約聖書はどのようにしてできたか

山我哲雄著『聖書時代史旧約篇』(2003年、岩波現代文庫)が、勉強になりました。旧約聖書は、古代イスラエル・ユダヤ民族の歴史を記録したものです。しかし、それは現代で言う「歴史の記録」ではありません。
・・旧約聖書の歴史書の多くは、部分的に古い伝承や資料を用いているものの、語られる出来事よりもかなり後になってからまとめられたものであり、起こったと信じられている出来事や経過についての後代の信念と解釈を伝えるものなのである・・
・・古代イスラエル人にとって歴史とは、神によって動かされるものであり、神の意志、神の行為の展開する舞台であった。例えば出エジプトという出来事は彼らにとって、神による救いの歴史、すなわち「救済史」に他ならず、王国滅亡とバビロン捕囚という破局に向かう歴史は、イスラエルの度重なる契約違反の罪とそれに対する神の審判の歴史、すなわち「災いの歴史」=「反救済史」を意味するものであった・・
神話と歴史の混合です。口承伝説が、後に書物としてまとめられました。その際には、事実の記録ではなく、信仰の拠り所という意図からまとめられています。この本をはじめ聖書時代学は、発掘結果や他の資料(古代エジプト)などから、何が事実であったか、どのようにして聖書が成立したかを研究しています。
それにしても、紀元前12世紀ごろからの(部分的な)史実を伝えているとは、驚きです。周辺にたくさんの民族があったのに、ユダヤ民族だけが連綿と伝えました。王の名前が次々に出てきて混乱しますが、ダビテ王が紀元前1千年頃で、その後中断をはさんで紀元前1世紀まで続くのですから、当然ですよね。
この後、国家としては滅亡し、世界に散らばることになります。しかし、旧約聖書は生き残ります。また、ユダヤ民族は続きます。その大きな要因が、旧約聖書とユダヤ教です。民族を民族として団結させる要素を持っていたのでしょう。中国でも古い記録が残り、しかも民族が入れ替わっても伝えられたことも、すごいことですが。
この本には続編があります。佐藤研著『聖書時代史新約篇』(2003年、岩波現代文庫)。これから挑戦します。かつてジョン・リッチズ著『1冊でわかる聖書』(邦訳2004年、岩波書店)を読みましたが、すっかり忘れてしまいました。「また、変わった本を読んでますねえ」と、F君に笑われそうです。

商店街の再建

12月19日の朝日新聞朝刊に「女川の被災商店街再生を補助 復興庁が計画認定へ」という記事が載りました。宮城県女川町は、町の中心部が全て津波で流されました。復興するに当たり、駅を中心にしてコンパクトなまちをつくる計画を立てています。商店街も駅前に集約します。復興庁も参加して計画を作り、補助事業などで支援します。高台移転や土地をかさ上げして町を造り替える場合は、商店街を再建することが課題です。他の町でも、計画づくりを急いでいます。