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秀吉「夢のまた夢」

露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことも 夢のまた夢

有名な、豊臣秀吉の辞世の句です。
初めて聞いたときは、意外に思いました。あの権力者、しかも貧農から自分の力と時の運で最高実力者にまで駆け上った人でも、このような気持ちになるのかとです。
最高実力者になったからこそ、このような句が詠めたということもあります。
もちろん、師匠が手を入れたのでしょうが。

61年の人生でした。
1598年の死後2年で、天下は大阪城の豊臣氏から、江戸城の徳川氏に移り、1615年には大阪城も滅びます。
もちろん、織田信長の遺業を継いで、天下統一を成し遂げた功績は不滅です。

大所高所から

報道機関から、取材を受けたり意見を求められたりすることがあります。ときには、私の専門外のことや最近の動きに詳しくないこともあります。
「それは、私の専門外や」とお断りするのですが、「いえ、専門的な話は担当者から聞くので、大所高所からの意見が欲しいんです」と言われます。

なるほど。我が身を振り返っても、担当している仕事については詳しくなるのですが、それを外の人が見たらどう見えるかを忘れるときがあります。外部の視点の方が、問題点などを見つけることもあります。岡目八目とも言います。
「明るい公務員講座」では、目の前のことに集中せず、もっと広い視野で考えましょうということを、蟻の目と鷹の目と表現しました。あるいは、岡本全勝Aの後ろに、岡本全勝Bを置いて考えましょうとも。『明るい公務員講座』の表紙の帯は、それを絵にしてもらいました。

もっとも、広い視野とか大所高所からといっても、そう簡単に全体を読むことができるわけではありません。その分野にある程度精通していなければなりませんし、それを少し離れた場所から見るという能力も必要です。どうしたら、それを身につけることができるか。
そのためには、さまざまな分野をそれなりに知っている必要があります。いろんな経験を積むことと、本を読むこと、新聞を読むこと、様々な人の意見を聞くこと、そして物事を客観的に見る訓練をすることが必要なのでしょうね。

私が「違った視点から見る」ために心がけているのは、次の2つです。
1 時間軸。過去や未来と比べてみる
2 横軸。違った立場、諸外国から見てみる

去年の今頃

去年の今頃、何をしていたか覚えていますか。仕事は、ある程度思い出せるのではないでしょうか。職場が変わっても、変わらなくても、ほぼ年間計画通りに進みますから。
覚えていないのが、仕事以外のことです。休日や放課後の過ごし方、家族との行動などです。どんな本を読んでいたかとかも。

先週のことすら覚えていないことが多いのですから、1年も前のことはねえ。
私は時々、手帳を見て先週何をしたのかを確認したり、去年の手帳を出して何をしていたかを思い出します。

まあ、覚えていないものですわ。そんなことを全部覚えていたら、頭がいくつあっても足りません。でも、読んだ本を忘れていたり、途中まで読んで放ってある本の多いのは、どうにかなりませんかね。

フリーランスから正社員へ

10月27日の朝日新聞「フリーランス→会社員、逆流する人々 AI時代生き残るため・キャリアや成長求め…」から。

・・・働き方の多様化などを背景に増えてきたフリーランスですが、企業に雇用されて正社員に戻る人が目立つようになってきています。その理由は何なのか。正社員を選んだフリーランス経験者らに取材しました。

AI(人工知能)人材を派遣する「AIタレントフォース」(東京都渋谷区)で最高AI責任者を務める村田大(まさる)さん(47)は今年6月、8年半のフリーランス生活を経て正社員になった。きっかけは、ChatGPT(チャットGPT)などAIの急速な進歩だった。
「フリーはプログラミングができれば第一線で働けた。AI開発では企業が持つデータにアクセスできないと、ただのお手伝いになってしまう」
AIは蓄積したデータをもとに結論を導き出す。ところが、企業が持つデータは機密性が高かったり個人情報が含まれたりするので、情報セキュリティーの体制が重視される。そのため、フリーが直接契約することが難しくなったという。
ITの世界の変化は早く、ある技術を身につけても安心はできない。「自分の領域を固定化する人は取り残される。AIで生き残るには社員になるか、チームで仕事をするフリーになるかでしょう」

フリーから会社員に戻る理由は様々だが、フリーになって感じるキャリアの「停滞感」も主な動機の一つだ。
昨年10月、フリーエンジニアから人材サービスの「エン・ジャパン」(東京都新宿区、今年10月1日に「エン」に社名変更)のプロダクト開発室で開発チームのリーダーに転身した大江貴己(たかき)さん(36)は、2020年にIT企業を辞めた。「やりたい仕事を選んで会社員時代より高い報酬で働けた」と話す。
一方、仕事をするうちに、組織を作り、大きくするマネジメントにも関心がでてきた。しかし、「フリーは与えられた仕事の範囲でしか動けない。マネジメントの道には限界を感じるようになった」と話す・・・

・・・フリーランスとして働く人はコロナ禍で急増した。仲介サイト大手の「ランサーズ」(東京都渋谷区)の推計によると、社員として働きながら、副業などで働く人も含んだ人数では、2021年には約1600万人にのぼった。
同社では、約500万人がコロナ禍の影響で増えたと推定している。急増した理由として、テレワークが一気に普及して副業がしやすくなった一方で、失業者が増えたことも影響したとみる。
その後、テレワークから出社に戻るなどの反動で、当時に比べれば人数は減った。しかし、コロナ禍前に比べると増えており、昨年では約1300万人。フリー人口はこの10年で約4割増えたという。同社では社員化を希望するフリーを企業につなぐサービスを提供している。
フリーを含めた人材仲介の「Hajimari(ハジマリ)」(東京都渋谷区)でも、23年度にフリーから正社員への転職もサービスに加えた。昨年度は22人を紹介した・・・

変容する政治と宗教の関係

10月21日の読売新聞「公明連立離脱 変容する政治と宗教の関係 水島治郎・千葉大教授に聞く」から。

・・・水島教授は、労働組合や業界組織などの団体が個人をまとめて政党を支える仕組みが、20世紀後半の政治の構図だったと指摘する。各団体は、都会に出てきた地方出身者など、旧来のつながりから切り離された人々を包摂し、仲間を提供する場となり、政治参加の道を開いた。「戦後の新宗教も同じような機能を果たしていた。創価学会が支持する公明党だけでなく、自民党も様々な宗教団体を支持基盤としていた」
この構図は、西欧諸国でも同様だった。信徒が属する教会系団体に支えられ、キリスト教民主主義政党が政治を担った。「宗教を一つのベースとし、反共産主義の旗印の下に結集していた。教会やキリスト教団体は、信仰を共有するだけではなく、友人を作る場であり、市民が政治にかかわる経路ともなっていた」。水島教授は、宗教系の団体が、戦後の日欧政治における隠れた主役の一つだったと説く。

自公連立が20世紀の最終盤に実現したのは、両党の支持基盤に先細りが見えたためだが、そうした政治の到達点と見ることもできる。だが21世紀に入ると、中間的な団体は急速に力を弱めた。宗教団体の場合、親からの信仰の継承を拒む人や、私生活を優先する人が増えた。インターネットの発達で仲間作りも容易になった。「個人と団体との関わり方が根本的に変わり、両者の力関係が逆転した」
個人が政党支持に至る過程も、政治家の動画を見て判断するなど流動的になった。団体は縮小し、残った構成員は高齢化し、政治活動の熱も下がった。「個人―団体―政党」という安定した構図は一部のものとなった。「構成員をフル稼働させても選挙で勝てるとは限らなくなった。負ければ団体の存在意義に関わり、内部分裂にもつながる」とし、宗教団体にとって選挙がリスクになっていると指摘する。

一方で水島教授は「宗教団体の力は弱まり、団体に依存する政治のあり方は変わってきたが、宗教そのものの影響力は弱まっていない」と強調する。例えば欧州では、反イスラムで保守勢力を結集させる際、キリスト教が重要な旗印になっているという。「外部者を排除し、人々をまとめるために、自国の宗教的アイデンティティーが使われている」
実際、米大統領のトランプ氏や露大統領のプーチン氏、イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフ氏ら、世界を揺るがせている政治指導者は一様に、宗教的アイデンティティーを前面に出している。「自分が信じているかは別として、宗教に訴えることが、政治家の戦略として効果的だとの感覚は持っているはず。宗教とナショナリズムは、人が命をささげるに値する究極の価値として意識される点で共通するものがある」・・・

・・・各国で共通するのは、宗教的アイデンティティーを前面に出し、人々をまとめる役回りを、急進的な右派勢力が担っている点だ。従来の宗教団体に支えられた中道保守勢力は弱体化している。今後について水島教授は、その傾向がさらに強まる可能性があるとする。
「社会は変わり目にあるが、宗教の役割は形を変えつつも衰えておらず、陰に陽に政治と結びついている。北欧など先進的とされる民主主義国でさえ、宗教と結びつく形で君主制も維持されている。日本でも、お祭りなど宗教的な行事への関わりは薄れておらず、皇室への関心は高い。現実の展開は、教科書的な近代化・世俗化とかなりずれているのではないか」・・・