確定申告書、日本語だけ

3月12日の朝日新聞夕刊に「確定申告、言葉の壁 マニュアルは5言語を用意、けど提出書類は日本語のみ」が載っていました。国際化はまだまだですね。

・・・外国人であっても日本国内で所得を得た場合は課税対象であり、確定申告を求められるケースもある。法務省によると、国内の在留外国人は2023年6月末現在、322万人超に達した。10年前の約1・6倍で、過去最高を更新した。
だが、確定申告書やe―Tax(国税電子申告・納税システム)は日本語版しかないという。一体、なぜなのか――。

国税庁に取材すると「予算の制約で他言語に対応するに至っていない」との回答だった。
申告書については、手書きの文字を自動で読み込むOCR(光学式文字読み取り装置)が外国語仕様ではないといった障壁もあるという。
同庁はホームページ上で提供する申告書作成コーナー用に、英語や中国語を含む5言語のマニュアルを用意。外国人が申告しやすい環境作りを進めているというが、申告書やe―Taxそのものの多言語化は現段階では検討されていないという。

国際税務に長く携わってきたゾンデルホフ&アインゼル税理士法人(東京)代表社員の永島寿夫税理士によると、以前は在日外国人の多くは日系企業や外資系企業の日本支社に勤めており、勤務先と契約した大手税理士法人に税務を任せてきた側面があった。「そもそも他言語の申告書のニーズがなかったのではないか」とみる・・・

経済成長外国比較2024

経済成長の軌跡2024」から続く。「経済成長外国比較2」(2021年)を更新しました。

(一人当たりGDPの軌跡と諸外国比較)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本、アメリカ、韓国、中国の3か国の一人当たりGDPの軌跡です。1955年にアメリカの10分の1だったのが、1980年代後半に追いつき、そして追い抜きました。アメリカもその間に10倍になったのですが、日本は100倍になりました。
しかしバブル崩壊(1991年)後、日本の経済成長は止まり、横ばいです。先進各国は成長を続け、日本と大きな差が開きました。この図は、縦軸が対数目盛になっているので、アメリカとの差がわかりにくいのですが、右につけてある数字を見てください。また韓国はほぼ日本と並び、中国が追いかけてきています。「経済成長外国比較2」(2021年)と比べてください。

この表は、かつて経済企画庁が作っていたもので、私流に改変して使っています。当初は、日本の経済成長がいかに驚異的であったかを説明するために使っていたのですが、最近はその後日本は停滞している、アジアから追いかけられているという説明になりました。急速な経済成長は日本独特のものではなく、他国に先駆けて日本が取り組んだ、他国はそれに遅れたということがわかります。「1991年から30年間の経済成長外国比較」に続く。
参考「日本のGDPが世界4位に

野本弘文・東急会長の若き日の苦労

日経新聞「私の履歴書」今月は、野本弘文・東急会長です。東急電鉄という鉄道会社に入社したのですが、「本流」でない住宅団地開発の部門に配属されます。その後も傍流勤めが長かったのですが、難しい仕事をやり遂げます。

7日の「入社」に次のような文章があります。
・・・父は無学だったが五島慶太翁のことを少しは知っていて、入社を喜んでくれた。入社前に福岡の実家に里帰りし、いよいよ東京に戻って社会人になるというとき。父の言葉をよく覚えている。
「どんな大会社でも小さな商店の集合体なんだよ。恐れることはない。しっかりとやって会社をもうけさせなさい。自分の給料は自分で稼ぐつもりでやりなさい」

商店主であった父の自負心がにじむ。この言葉をずっと大切にしながら仕事をしてきた。東急のような大組織の中にあっても、気持ちとしては自分の商店を開いているかのように、当事者意識をもつべしという教え。当時、新入社員の私は、東急内に新規オープンさせる「野本商店」をいかに経営していくか。経験が乏しいなりに考えていた・・・

8日の「厚木」には、次のような文章があります。小さな事務所に異動します。
・・・なぜここに配属されたのか。深く考えても仕方ない。「住宅開発については東急で一番になるぞ」。心の中で誓いを立てた。片道2時間ほどの通勤時間を勉強の場にして宅地建物取引主任者や測量士などの資格をとり、地主から信頼してもらおうと税金についても学んだ。工事現場の事務所にいつも顔を出し、問題があれば作業員の人たちと解決策を話し合った・・・
その後も、苦労されます。原文をお読みください。

経済成長の軌跡2024

経済成長の軌跡2」(2021年)を更新しました。

 

 

 

 

(日本の経済成長と税収)
戦後日本の社会・政治・行政を規定した要素の一つが、経済成長であり、その上がりである税収です。
次の4期に分けてあります。「高度経済成長期」「安定成長期」「バブル崩壊後(失われた20年)」、そして「復活を遂げつつある現在」です。
1955(昭和30)年は、戦後復興が終わり、高度経済成長が始まった年。1973(昭和48)年は、第1次石油危機がおき、高度成長が終わった年。1991(平成3)年は、バブルがはじけた年です。第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。第1期は18年、第2期も18年、第3期は21年です。
第4期の始点を2012(平成24)年にしたのは、アベノミクスを復活の起点と考えたからです。しかし、その後の経済成長ははかばかしくなく、第3期が続いている(失われた30年)とも見ることができます。すると、4期ではなく、成長の前期(1955~1991年、36年間)と、停滞の後期(1991~現在、ひとまず33年)と見ることもできます。

第4期に税収が伸びているのは、消費税増税と思われます。その他の解説は、「経済成長の軌跡2」(2021年)をお読みください。「経済成長外国比較2024」へ続く。

教員の精神疾患対策

2月20日の朝日新聞教育欄に「先生のための「心の保健室」を 休職6000人超 メンタルヘルス対策、刀禰真之介さんに聞く」が載っていました。詳しくは記事を読んでいただくとして。

・・・文科省の調査では、「精神疾患で病気休職をしたり1カ月以上病気休暇を取ったりした教員」の割合は20年度に全体の1・03%だったが、22年度には1・33%に増えた。一方、厚生労働省の調査によると「1年間にメンタルヘルス不調で連続1カ月以上休職した労働者又は退職した労働者」の割合は、1千人以上の事業所では20年の0・8%から22年には1・2%になった。
いずれも割合が増えたのはコロナ禍の影響だろう。職場に行けなかったりマスクでコミュニケーションがとりにくかったりという環境の変化が主要因と考えている。教員の場合、一般の労働者より精神疾患の割合が高いのは、心の健康への取り組みの水準が極めて低いからだとみている・・・

・・・一般企業は労働安全衛生を守る意識が浸透しつつあるが、学校はその意識が乏しい。新たに休職する人や復帰後再び休職する人を減らす仕組みが不十分にみえる。例えば文科省の有識者会議がまとめた「教職員のメンタルヘルス対策について」によると、校長は休職中の教員に定期的に連絡をとり状況を把握し、復帰の時期を検討する。校長が中心の「一本足打法」といえる。この方法では校長の負担が増え、教員側は管理職の面談をたびたび受けなければならずプレッシャーになる・・・

・・・ キーワードは「信頼」。教員と産業保健職との信頼関係をつくることだ。メンタルヘルスの研修は産業医や産業保健師が行う▽心身の状態が悪くなったとき、同じ医師や保健師に話を聞いてもらえるようにする▽休職中に状態を話す面談もその保健師が担うという仕組みを考えている。「教職員のための保健室」が機能するようにしたい。
少子化が進めば、必要となる教員が少なくなり、採用倍率が高くなる――。そんな考え方は甘いと言わざるを得ない。人手不足で労働力の獲得に各業種がしのぎをけずる時代。病気休職が増え続ける職場を若者が選ぶとは思えない。下がり続ける教員採用試験の倍率を上げ、教育の水準を高めるには精神疾患の問題の解決が欠かせない・・・