地方テレビ局の挑戦

地方のテレビ局の多くは、東京の放送局網に所属しています。演劇やスポーツ番組などは、全国どこでも同じものを見ることができます。独自の番組を作ることもありますが、その割合(放送時間)は多くありません。それは、ニュースについても同じです。全国ニュースの時間が長く、地方ニュースの時間は短いのです。

地方テレビ局の報道部記者は、地域のニュース取材に力を入れ、記事と映像を作っているのですが、放映時間の関係で没になることもしばしばです。
かつてある地方局の方に「それなら、せっかく作った映像を、会社のホームページに載せて、誰もが見ることができるようにしたらどうですか」と提案したことがあります。私の意見が通ったわけではありませんが、各局でそのようなサイトを作っているようです。福島中央テレビの例。放映されたニュースだけでなく、放映されなかったニュースも載ると、記者もやりがいがありますよね。

もう一つ短いニュースではなく、30分などの長い時間である主題を深掘りする番組もあります。富山テレビはこの秋から、「シンそう富山」を放送するようになりました。しかも、毎週です。これを作るには、かなりの労力が必要だと思います。それをインターネットで見ることができます。政治に関するものもありますが、地方鉄道の存続や熊対策など地域ならではの内容もあります。一度、ご覧ください。

倫理的・法的・社会的課題。ELSI

11月29日の読売新聞に「ELSI研究 活発化 先端科学 社会への影響は 混乱回避 倫理・法的観点で」が載っていました。

・・・最先端の科学技術は社会に恩恵だけでなく、予期せぬ混乱をもたらすこともある。そうした科学技術の光と影を踏まえ、研究開発がもたらす「倫理的・法的・社会的課題(ELSI(エルシー))」を検討する研究が国内でも活発化してきた。研究対象は、人工知能(AI)や脳科学など幅広い最先端領域に広がるが、人材育成など課題も残る。
利用が急拡大する生成AIでは、個人情報や著作権の保護などを巡る議論が、技術の普及を後追いするように進んでいる。ELSI研究は、こうした混乱を避けるために、技術開発の過程で社会との関係などを議論するものだ・・・

ELSIとは、Ethical(倫理的)、Legal(法的)、Social(社会的)なIssues(課題)の頭文字による略語。人の全遺伝情報を解読する「ヒトゲノム計画」が1990年に米国で始まった際、必要性が主張された。現在は、強力な計算能力を持つ量子コンピューターが既存の暗号を解読することによる混乱や、脳科学で読み取った意思に関するデータの取り扱いなど、科学技術全般で議論されている。兵器利用の是非や、技術を使える層と使えない層との格差拡大など、論点も多岐にわたる、とのことです。

科学技術の進歩が人間社会を混乱させないように、悪影響を及ぼさないように、制御しなければなりません。産業用機械や自動車などの事故の防止から始まって、核・生物・化学兵器の禁止など。科学の進歩が急速、かつ大規模なだけに、新しい問題も多岐にわたります。

地域の看護師、コミュニティナース

12月9日の朝日新聞、別刷りbe1面、「フロントランナー」に「CNC代表取締役・矢田明子さん 暮らしの中で住民をケア」が載っていました。

「コミュニティナース」って、ご存じですか。病院にいる看護師さんと違い、街へ出て、普段の生活に溶け込んで、住民の世話をします。「日常生活の中で住民と顔を合わせ、心身の健康だけでなく、毎日の「楽しい」や「うれしい」を一緒に手がけていく実践活動だ」。
矢田さんのあふれる笑顔の写真と一緒に、本文をお読みください。

私はある勉強会(オンラインです)で、矢田さんとその活動を知りました。現代社会の大きな問題である孤立・孤独への対策を実践しておられる実例としてです。地域のつながりでは、このホームページで子ども食堂を紹介していますが、コミュニティナースはまた違った方法での対策です。
私も知らなかったのですが、世間でもまだ知られていないでしょう。カタカナでなく、何か良い日本語はありませんかね。

公的な私文書

11月13日の朝日新聞夕刊「アナザーノート」に、藤田直央・編集委員の「現代外交史に新たな角度、「公的な私文書」読み込む」が載っていました。

「最近の連載で、日本外交への提言を続けた元外交官の故・岡本行夫氏が残した文書を取り上げた。岡本氏が1990年代後半に橋本龍太郎内閣で、2000年代前半に小泉純一郎内閣で、首相補佐官を務めていた頃のものだ。
こうした「公的な私文書」に出会い、現代史を新たな角度から見つめ直す記事を書くことが最近続いた。政府の外交文書とは違う、入手から記事化に至るまでの醍醐味がある。その話をしたい」
として、三木武夫首相、若泉敬教授、岡本行夫さんの3人の文書が紹介されています。
ここで「公的な私文書」と呼ばれているのは、役所が保管していない文書で、政府の政策や行動に関する記述がある個人の文書です。藤田さんの意見を引用します。

「最後に、「公的な私文書」をどう扱うべきかについて述べたい。
「公的な私文書」という表現は実は政府寄りだ。三木文書の1973年の日ソ首脳会談議事録のように、「極秘 無期限」で作成者として外務省の担当課が記され、明らかに元首相の遺品である文書ですら、外務省は「民間所有の文書にコメントしない」という立場を取る。だから私文書扱いとなり公文書管理法の対象外となる。
それでいいのか。例えば米国では、大統領は退任時に公務に関する文書を全て国立公文書館に渡すよう義務づける法律がある。保秘のためだけでなく、後の開示に備えて管理する公的な制度で、文書を勝手に持ち出していたトランプ前大統領から捜査機関が押収するなど厳格に運用されている。

日本では「公的な私文書」は劣化し、散逸するばかりだ。三木文書では56年の日ソ首脳会談議事録の肝心な部分がかすれ、判読が難しくなっていた。佐藤家では秘密文書の扱いに悩み、燃やそうという声もあったという。こうした文書が失われていくほど、戦後日本外交の選択を検証する際の記録は、外務省の「30年ルール」による開示に頼りがちになる。
しかし、三木文書には30年経っても外務省が出さない文書が含まれ、若泉文書には外務省とは別ルートでひそかに首相の決断を支えた文書があり、岡本文書には首相の「勝負会見」で外務省が準備したのとは別の発言案があった。こうした文書の多様さは歴史的な検証の幅をぐっと広げる。国民の共有財産としてどう保存し継承するか、議論を急ぎたい」

自転車ヘルメットの着用率

12月6日の朝日新聞夕刊1面に「悲劇ゼロへ、誓いのヘルメット 着用率1位の愛媛、背景に高校生の死」が載っていました。
・・・自転車ヘルメット着用が4月に努力義務化されたことを受けた警察庁の全国調査で、愛媛県が着用率59・9%で1位になった。全国平均の13・5%と比べて圧倒的に高い。その背景には、高校生が命を落とした9年前の自転車事故があった・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして、県別の着用率が表で載っています。
高い方は、愛媛60%(小数点以下を四捨五入します)、大分46%、群馬44%、鳥取31%。
低い方は、新潟2%、青森3%、秋田4%、大阪4%です。
こんなにも違うのですね。県民性でしょうか。この記事で取り上げられているようなもののほかにも、原因があるのでしょうか。