『21世紀を生きるための社会学の教科書』

ケン・プラマー著『21世紀を生きるための社会学の教科書』(2021年、ちくま学芸文庫)を読み終えました。これまで社会学の教科書はいくつか読んだのですが、長谷川公一先生とのやり取りで、社会学をもう一度考えてみようと思い立ちました。先生からは、長谷川 公一他著『社会学』新版(2019年、有斐閣)をいただきました。一番売れている社会学の教科書だそうです。

多くの教科書は、社会学が扱う社会とは何かを説明したあと、さまざまな社会学者の見方と、社会学の各論を紹介します。それは有用なのですが、私が知りたかったのは、その上で「社会学はどうあるべきか」です。
この本は、今の私の関心にぴったりでした。現在の社会学がどのようなものか、社会学に進もうとする研究者はどのように考えるべきかが書かれています。そこで、私の関心に合致したのです。逆に、普通の社会学の教科書を読んでいないと、理解しにくいかもしれません。

社会学は社会の仕組みを説明しますが、本書は社会学が「社会学的創造力」(ライト・ミルズ)が基本であることを説明します。そして社会学の中核は、苦痛や不平等を扱うことだと主張します。
ここに、私は納得しました。社会学が何のためにあるのかが、分かりました。社会学者はさまざまな角度から、この社会を分析し説明しますが、その究極の目的は社会の課題、特に苦痛と不平等を見つけ取り除くことと、私は理解しました(第7章)。「何だ、当たり前のことではないか」とおっしゃる方もおられるでしょうが。
私が長年すっきりと理解できなかったのは、学問における価値と客観性の問題です。先日の「近藤和彦訳『歴史とは何か』」「歴史学の擁護」で、ようやく私なりの理解に達しました。「実用の学と説明の学

文庫本ですが、500ページ近くもあります。翻訳も読みやすく、理解しやすかったです。蛇足ながら、表題にある「21世紀を生きるための」は、読者を惑わす表現のようです。原書名は、『Sociology: The Basics』です。

ジグムント・バウマン、ティム・メイ著『社会学の考え方』第2版 (2016年、ちくま学芸文庫)
アルフレッド・シュッツ、トーマス・ルックマン著『生活世界の構造』 (2015年、ちくま学芸文庫)
奥井 智之著『社会学』第2版(2014年、東京大学出版会)