相談業繁盛

今日は土曜日、今週も終わりました。ありがたいことに、毎日、それなりの仕事が入ってきます。
市町村職員中央研修所学長の仕事は、管理部門と研修部門それぞれにしっかりした管理職がいるので、任せていて安心です。それでも、何かと相談事が持ち込まれます。
もっともそのいくつかは、「新しい研修科目」など、私が発注した「新しい試み」についての検討状況です。私が仕事を増やしているのですね。私が趣旨と方向性を示すと、職員たちが内容を検討してくれます。早々と充実した内容を考えてくれました。

意外と時間を取るのが、学外からの依頼事項です。さまざまな人と付き合いがあり、相談事が持ち込まれます。持ち込まれる案件は簡単なものはなく、結構難しいものが多いです。私の知見で答えられる案件と、そうでない案件があります。
後者については、その案件について詳しい人を探すこと、その人に相談すること、あるいはその人を紹介することなります。ここが、私の経験と人脈の見せ所です。

今週は、そのような案件がいくつか片付いたので、満足感とともに、ほっとしています。で、連載原稿の執筆は、あまり進まず。

イノベーションに対応できない官僚機構

12月3日の日経新聞連載「ニッポンの統治」、冨山和彦氏の発言「統治構造、変化に対応できず」から。

――なぜ日本の統治が機能不全を起こしているのでしょうか。
「2つの要因がある。一つは明治以来中央省庁の形が変わっていないことだ。縦割りの構造がデジタル化など現代直面する課題とかみ合っていない。規制改革会議でも単独の省庁で完結する規制緩和はほぼ終わったが、省庁をまたいだ改革になると調整に時間を要し、動きが途端に鈍くなる。例えばドローンの規制緩和では5~6の省庁が関わり、改正する関連法令は数十に上るため、決まる頃には時代遅れになる」
「もう一つは霞が関の終身、一括採用モデルへの魅力が薄れている点だ。自分より若い世代からロールモデルが変わり、外資系証券など就職する間口が広がった。崇高な志を持ち、国家の役に立つために、キャリア官僚として40年近く働く必要がないと思われてきている。戦略的に人事を担う内閣人事局の仕組みも悪くはないが、終身雇用とは相性が悪い」

――日本では米国のようなイノベーションが生まれにくくなっているように見えます。こうしたことも統治構造に理由があるのでしょうか。
「日本でイノベーションが生まれにくい理由は、英米との法体系の違いにもあると考える。柔らかく法律を作り、もめた場合は裁判で解決する英米の判例法主義に対し、日本の法文化は法の前提となる規範概念を決めていく実定法主義だ。イノベーションを促すようなこれまで見たこともないものに規範概念を当てはめていくのは難しく、実定法主義に慣れた官僚は対応できない」

一人親の技能習得支援

ひとり親(シングルマザー)の技能習得支援を紹介します。機会があれば応援してください。
一般社団法人日本シングルマザー支援協会が「ICT支援員養成講座」を行っています。シングルマザーにICTの技能を身につけてもらって、就職につなげようとするものです。既に認定試験に合格した人も出ています。課題は、この人たちを雇ってもらうことです。想定されているのは学校現場ですが、シングルマザー支援は、多くの自治体では福祉部門が所管していて、教育部門とはあまり連携が取れていないのです。

取り組みの概要は、次の通りです。「報道資料
ひとりで子育てと仕事の両立をするシングルマザーの困窮は、近年の社会課題の一つです。調査によると、シングルマザーの平均年収は243万円で、就業している約169万人の47%がパートや派遣社員などの非正規雇用で不安定な生活を送っています。
こうした問題を解決するため、需要が高まるデジタル人材としてのスキル・知識をシングルマザーに習得してもらい、ICT支援員に採用されることを目指しています。この職は、小中学校でのICT教育の実務的な支援をする専門スタッフのことで、授業で使うICT機器の準備、先生や児童・生徒のICT機器の操作のサポート、授業で使うソフトやアプリの操作指導などを担います。文部科学省は2018~2022年度の「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」で、4校に1校のICT支援員の配置目標水準を設けています。

ICT支援員の勤務時間は小中学校に通う子ども授業の時間と重なるため、仕事と子育ての両立に適しているとされています。何よりシングルマザーが、需要が高まるIT・デジタルの知識・スキルを身につけることで、将来に子育てを終えた後などに、小中学校以外にも様々な企業で求められる人材になれると考えました。
シングルマザーがICT支援員として自治体や学校などに採用されやすくなるよう、「ICT支援員認定試験」(特定非営利活動法人情報ネットワーク教育活用研究協議会が実施)の合格を目標に、受験対策講座を始めました。
技能研修は進んでいるのですが、課題は、彼女たちを市町村教育委員会や学校に受け入れてもらうことです。そのような機会があれば、ぜひ彼女たちに挑戦の機会を与えてください。

政権交代のために、中道左派の役割

11月30日の朝日新聞オピニオン欄「立憲民主、立て直せるか」、田中拓道・一橋大学教授の「雇用と財政、体系的政策を」から。

・・・1990年代以降、日本を含む先進国はグローバル化や情報技術の発達により、産業構造が大きく変化しました。長期間安定して働ける職場が減った半面、非正規雇用は増えました。男性が「働き主」で女性が子育てや介護を担うという家族のありようも大きく変わりました。
雇用と家族の変化にいち早く対応したのが、欧州の政党でした。中道右派は市場の活力を重視しながらも、教育や福祉を通じて人々を労働市場に誘導する形で、新自由主義政策を修正しました。中道左派は、労働組合の党内への影響力を弱め、中産階級を支持層に取り込み、子育てや就労支援などを充実させ、生き残りを図りました。
その頃、日本では選挙制度改革が一番の関心事でした。96年の衆議院選挙から小選挙区比例代表並立制が導入され、政治のエネルギーはもっぱら政党の離合集散に費やされてきたのです。

史上最長となった安倍晋三政権は、「1億総活躍」や「人づくり革命」など巧みなキャッチフレーズを打ち出しました。しかし、子育てや就労支援、公教育への支出は、いまだに先進国では最低水準です。雇用を増やしたとはいえ、多くは非正規職にとどまっています。雇用と家族の変化にきめ細かく対応したのではなく、格差は固定化されたままです。
多様化する人々の働き方に合わせてきめ細かい支援をしなければ、格差は拡大し続けます。少子高齢化を止めるためにも、高齢世代向けから現役世代向けへと社会保障の転換を図る必要があります。
ところが、日本の中道左派は政治勢力として弱いままで、雇用、社会保障、財政を含む体系的な政策を打ち出せていません。立憲民主党の衆院選の公約は、消費税率の時限的な引き下げでした。分配のメニューを並べるだけでなく、財源の裏付けを明らかにしなければ、政権担当能力は示せないでしょう・・・

この点では、研究者やマスコミの役割も問われています。

連載「公共を創る」102回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第102回「「新しい通念と仕組み」構築の方向性」が、発行されました。
経済発展期には効果を発揮した日本型の雇用慣行と職場慣行が、今や負の機能を生んでいるという話を続けます。

経済成長期に効果的だったメンバーシップ型雇用は、いまや職場への不満を持つ社員を生んでいます。転職する仕組みが少ないこと、いったん就職すると会社に甘えることが原因でしょう。家族、親族、地域での付き合いから離れ自由になりましたが、それに代わる付き合いをつくれていないために、孤独になっています。自由は人生の選択肢を増やしましたが、自分で選び責任を持たなければならなくなりました。そして、人生双六が読めなくなりました。

このような暮らしの変化に応じた、安心のための仕組みと通念をつくる必要があるのです。社会保障は経済的な防護柵(落ちないようにする仕組み)と安全網(落ちた際の支え)を用意していますが、今問題になっているのは、社会生活での自立です。
そのためには、まず教育内容を変える必要があります。