悪い条件でも立派な演奏をする

2月18日の日経新聞夕刊「こころの玉手箱」指揮者の藤岡幸夫さん「ヘブラーとの共演」でした。
有名なピアニスト、イングリット・へブラーさんとの共演したときのことです。
会場に着くと、ピアノはとても小さく傷だらけ。調律されていますが、同じタッチで弾いても鍵盤によって音量が変わるという代物です。へブラーさんが怒って帰るのではと、みんなが心配しました。
へブラーさんも、「これはピアノじゃないわ」とあきれ顔。開場直前まで、誰も寄せ付けず一人でピアノを弾き続けたそうです。
そして本番。みんなが仰天しました。同じピアノと思えない美しい音色。
藤岡さんが「すごい、奇跡です!」と言うと、笑みをたたえて一言「もちろん、私はプロフェッショナルですから」

藤岡さんは「失敗を他人のモノのせいにするのは、本当のプロではない」と締めくくっておられます。

官民連携ゼミに登壇

お知らせしていたように、今日2月23日は、GR人材育成ゼミ(官民連携ゼミ)に登壇しました。「地域課題解決のコツはコレ!役所の上手な使い方・使われ方~震災から10年、元復興庁事務次官が語る官民連携の秘訣
オンラインでの開催、有料なのに、37人が参加したそうです。「舞台裏

・東日本大震災からの復興での企業やNPOなどと行政との協働の事例
・現在行われている、自治体と企業との連携協定の事例などを元に、
私が考えている、公私二元論から官共業三元論、新しい時代の行政のあり方をお話ししました。

被災直後に協力を申し出てくれたNPOの代表に対し、私が「NPOが行政に使われてもよいのですか?」と質問し、「いえ、私たちNPOが、全勝さんを使うのです」と言い返されたことは、有名な話です。「官邸の怪人、「民」と出会った衝撃 復興の現場で」。また、岡本行夫さんに政府が負けた話などの実例も紹介しました。参考「東日本大震災 復興が日本を変える-行政・企業・NPOの未来のかたち

オンライン会議やオンラインでの講演は、聴衆の反応がわからないので嫌いなのですが。今日のゼミは、4人ほどを前に話すことで、問題なかったです。しかも、遠隔地の方も参加できるという利点もありました。
社会を変えようとする人が増え、実績を上げると良いですね。
お話しもしましたが、社会起業家たちは、行政のライバルです。ノホホンとしていると、公務員は負けます。この点については、連載「公共を創る」でも触れようと考えています。

ストレンジ著「国家と市場」

スーザン・ストレンジ著『国家と市場ー国際政治経済学入門』(2020年、ちくま学芸文庫)を読み終えました。1994年に出版されたものが文庫化されたのです。原著は、1988年にイギリスで出版されています。
この本で主張された構造的権力と関係的権力について私は眼が開かれ、このホームページでも何度か紹介しました。「構造的権力」「アメリカが広めたもの・資本主義経済、自由主義、多国間統治
構造的権力を勉強するために、単行本を探して読みました。20年ほど前のことでしょうか。今回文庫本になったので、寝転がって読みました。単行本だと、たぶん再読しなかったでしょう。ありがたいことです。

ストレンジの主張する構造的権力を、私は少し違って理解し、使っていることに気がつきました。この考え方は、現在の国際政治経済学や政治学では、どのような評価と位置づけになっているのでしょうか。経済学で言う「経路依存性」なども、この考え方と類似の発想だと思うのですが

ところで、単行本でも気になっていたのですが、図2が間違いだと思います。四つの構造的権力(安全保障、生産、信用、知識)の関係を説明する際、本文では「四つの面を持った三角形、三角四面体」と書かれているのですが、図では四つの三角形と一つの四角形の五面体になっているのです(文庫版p74)。

自衛隊、災害派遣時の心のケア

2月19日の朝日新聞に「災害派遣、ミーティングで心ケア 陸自取り組み、東日本大震災を機に本格化」が載っていました。

・・・災害派遣にあたる自衛隊員のメンタルヘルス対策で、陸上自衛隊が日々の活動後の任務解除ミーティング(解除MT)に取り組んでいる。多くの遺体収容に直面した2011年の東日本大震災を発端に全国の部隊に広まったもので、新型コロナウイルス対応での派遣も相次いだ昨年にはマニュアルがまとめられた。
陸自のマニュアルによると、解除MTは「5~10名程度」の小グループで「一日の任務終了後、日々実施」し、所要は「短時間(20分程度)」。通常の訓練後に改善点を検討する反省会とは違い、災害派遣など精神的負担の伴う任務で「日々のストレスを組織で軽減するため」に行う。

解除MTの手順はこうだ。上司は、隊員たちをねぎらい、その日の頑張りを聞く。危険な現場で活動する隊員が情報不足により不満をためないよう情報を伝える。「困っていること、知りたいこと」を一人ひとりに確かめ、その際には、目の周りや唇など不調が表れやすい部分に気を配って体調を確認する。さらに、活動への意見を聞き、「前向きな言葉で締める」。
また、上司に向けた助言として、「上司・組織への不平不満が蓄積されないように(毎日話す機会があることを認識させる)」「隊員は上司の一挙手一投足を注視している」といった点も強調されている・・・

その要点が、7項目載っています。自衛隊だけでなく、いろんな組織でも参考になります。
しかし、朝日新聞もカタカナ、アルファベットが好きですね。MT、ミーティング、マニュアル、ストレス、ケア・・・。入学試験問題には、使えないでしょうね。

黒江・元防衛次官の壮絶な体験談

市ヶ谷論壇」に、黒江・元防衛次官の回顧談「失敗だらけの役人人生」が連載されています。本人の失敗と苦労が生々しく書かれていて、防衛官僚の苦労と黒江さんの生きざまがよくわかります。

第1回は、親の反対を押し切って防衛庁を選んだことです。その後も、苦労を重ねます。自衛隊が「日陰者」扱いされた時代です。
第6回は、「三つのK」です。きつい、汚い、危険の3Kとともに、企画する、形にする、共感を得るの3Kが説明されています。これは、どの職場でも通じることでしょう。
第7回と第8回、第9回は、交渉についての苦労、調整の板挟みの苦労です。これも、若手官僚には勉強になります。
圧巻は、第10回と第11回の「健康管理」です。黒江さんは、過労とストレスで6回倒れました。退官した直後にも、救急搬送されます。私も若いときは職場に泊まり込みましたが、さらに上がおられました。