契約社会と帰属社会2

吉見俊哉著『トランプのアメリカに住む』を読みながら考えた、アメリカ社会と日本社会のなり立ちの違い「契約社会と帰属社会」の続きです。

アメリカを契約社会とするならば、日本は帰属社会と呼びましょう。
吉見先生が指摘しておられる、大学においての学生と教授と(大学と)の契約は、アメリカの会社や社会一般に及びます。社員は会社に属しますが、会社を給料を稼ぐ場、そして自らの技能の上げる場と考えます。すると、技能が上がれば、そして自分の給料を上げるため、次の職場に移ります。会社も、契約相手です。労働を提供する代わりに給料をもらう、授業料を払う代わりに講義を受ける・・・。

他方、日本では、大学も会社も帰属する共同体です。その組織に属することで、各人は安心し忠誠を誓います。組織は、構成員に給料や講義を提供するだけでなく、安心を提供します。組織は、契約相手でなく、共同体です。給料や授業料は対価とは考えません。
かつて、村落での生活がムラ社会と呼ばれました。生活のすべてを包み込むのです。その延長で、会社もムラ社会と見なされました。社員だけでなく、家族の面倒まで見てくれるのです。

契約相手の場合は、相手とは対等です。相手が会社という大きな組織であってもです。その代わり、その契約を選び、結んだ本人に責任が生じます。
帰属の場合は、会社や組織の一員となって、組織とは対等ではなく、組織の構成要素であり、部品です。職務内容は契約書に記述されず、会社の方針に委ねられます。他方で組織は、構成員に生活の安定を提供しなければなりません。丸抱えになり、構成員は組織が面倒を見てくれると期待しています。ここに、甘えの構造が発生します。本人の責任であっても、組織を恨むことがあります。
また、契約は取引であり、割り切りことができます。それに対し、帰属は心情的で、割り切ることは難しいです。
この項続く

慶應大学、地方自治論Ⅱ第2回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第2回目の授業でした。126人が出席しました。

地方財政の導入部として、住民がどれだけ自治体や国のサービスを受けているかを、説明しました。朝起きて、水道や下水道を使い、公道を歩き、信号で止まります。ゴミ集め・・・とたくさんの公的サービスを受けています。一生で見ても、生まれる前の母子手帳から、健康診断、保育園と幼稚園、小中学校、健康保険と年金、介護保険、火葬場と墓地まで。生まれる前から死んだあとまで、役所のお世話になっています。

相模原市から提供してもらった「ナイスガイドさがみはら」で、市役所がどのような業務(住民サービス)をしているかを説明しました。出席カードには、多くの学生が、「市役所がこれだけ様々なサービスをしていることを知って驚いた」との記述がありました。また、「わかりやすく、良くできている」「読んで得をしました」との評価も。
学生は、市役所が何をしているかを知らないので、このようなガイドブックは、有用です。抽象論をしていても、ピンときませんわね。

サービス(対人サービス、施設提供)には、職員とお金と知識(法令やノウハウ)が必要です。財政は、そのお金の部分です。

宮城県被災地視察

10日11日と、宮城県の被災地視察に行ってきました。先月の岩手県被災地視察に続き、宮城県です。今回は、産業復興を中心に見てきました。
住宅再建は予想以上に進み、来年には仮設住宅を解消できそうです。最も被害の大きかった石巻市も、いくつかの市町村より早く完成しそうです。市長や副市長と、そんな話をしました。
当初は、一番数の多い仮設住宅の運営や、100か所になる高台移転計画など、どうしたらよいかみんなで頭を抱えました。総務省から派遣された笹野副市長が、大活躍をしてくれました。たくさんの被災者のお世話をしながら、住民の意向を聞き計画を立てるのです。高台移転は約60か所に縮小しましたが、すべて完成しました。これは、当時を振り返ると、奇跡に近いでしょう。

住宅ができ、公共インフラ復旧のめどが立ったら、次は町のにぎわい回復です。そのためには、働く場と、人のつながり回復が必要です。
各市町村長も、自信に満ちた顔です。村井知事とも、そのような話をしました。
各市町で考えたことは、次回書きましょう
火曜日に福島に行き、そのまま水曜木曜と宮城県内を車で移動しました。朝から晩まで車に乗っていると、結構疲れるのです。

雑誌の付録

私より詳しい人が多いと思いますが。雑誌の付録って、立派なもがありますよね。1000円程度で、カラフルな雑誌の他に、1000円以上しそうな品物がついています。
本屋の店頭には、そのような女性雑誌がたくさん並んでいます。男性雑誌でも、鞄や文房具が付録でついているものがあります。

先日も、衝動買いをしてしまいました。といっても、1000円ほどですから。雑誌の名前は覚えていません。
若冲万年筆と、アクアスキュータムの万年筆です。私は、万年筆は試し書きをして選ぶのですが。付録では、そんなことはできません。家に帰って、箱を開いて書いてみると、万年筆としてはそこそこの書き味です。デザインも、立派なものです。お遊びと思えば、満足できます。問題は、価格でなく、たまる文房具をどうするかです(笑い)。

1000円の雑誌についている付録は、原価が200円程度だとか。中国製と書いてありますが、おもちゃではありません。この原価でできるとは、不思議です。

仕事の悩みの方程式

明るい仕事講座」で、仕事での悩みの解決方法をお教えしました。この原本は、『明るい公務員講座』です。
では、なぜ悩むのか、悩みが深くなるのか。そして、どうしたら悩みは減るか。職員から質問を受けたので、2人で考えました。

悩みが深くなるのは、彼や彼女にとって「難しい課題」だからです。この場合、「難しさ」は本人にとっての、主観的なものです。上司からすると「簡単なこと」でも、本人は悩むことがあります。
それだけでなく、「解決方向が見えないこと」が、悩みを深くします。大変な仕事でも、片付ける方向性が見えていたら、そんなに悩まなくてもすみます。それを数式(まがい)に当てはめると。
悩みの深さ=「課題の難しさ」×「先行きの不透明さ」

まあ、足し算でもかけ算でも、どちらでも良いのですが、先行きが見えないことが悩みを増幅するので、かけ算にしました。
そして、悩みを深くしない項を入れると、次のようになります。
職場での悩み=[悩みの深さ(課題の難しさ×先行きの不透明さ)]-「相談相手」

深い悩みでも、相談相手がいて助言してもらえると、仕事が片付かなくても、悩みは軽くなります。
この方程式のうち「悩みの深さ」は本人の主観です。「相談相手」は外部要因です。周囲の人が助言することで、悩んでいる職員を救うことができます。逆に、それがないと、本人はますます悩みの深みにはまっていきます。