「復興に向けた道のりと見通し」を、2016年3月時点に更新しました。ありがとう、箱田さん。
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政府の役割、峻厳さ
朝日新聞3月12日オピニオン欄「東日本大震災5年、私たちは変わったのか:5 公と私」、牧原出先生の「政治問う声、社会決める」から。
・・・「3・11」で、政府の行動に何よりも求められるのは峻厳さだと、国民は体感しました。巨大で深刻な問題に、時機を逸することなく、断固として的確に手を打たねばならないという国家の役割が国民にはっきり見えたのです。
冷戦終結後の1990年代には、物事は社会や市場で解決されるだろうという楽観的なガバナンス論が広がりました。その考えに立った最後の政権が民主党政権ともいえる。ところが2008年のリーマン・ショックでは、市場の暴走に国家がしっかり対峙すべきだという考えが浮上した。こうした考え方を、震災は押し広げました・・
人事異動
多くの職場で、人事異動の季節になりました。先日、楠木新著『左遷論』(2016年、中公新書)を読みました。で、今日は趣向を変えて、人事について書きます。この本は、左遷を軸にした、日本の企業での人事の仕組み、慣行を論じた本です。読んでいただくとわかりますが、日本の組織では、左遷はめったに起きません。よほどの失敗をしたか、ワンマン経営者ににらまれたときくらいでしょう。
本人は自分の希望のポストにつけないと、「左遷」と感じます。しかし、人事当局や上司からすると、組織の論理で人事異動を決めます。空いたポスト群に対し、異動対象となる職員群から、最適解を考えるのです。その際、個人個人の最適(部分最適)をすべてかなえることは難しく、全体として最適と考える人事異動(全体最適)を考えます。正確には、「不満を最も小さくする組み合わせ」を考えます。
他方で、異動対象の本人は、自分の実力を客観的評価(周りの評価)の1.3倍くらいに過大評価しているというのが、世間の通説です。この2つの要素によって、左遷でない異動を、本人だけが「左遷だ」と受け取ってしまうのです。この本の副題にあるように、「組織の論理、個人の心理」のずれが起きるのです。
さて、そこでの課題や対処方法は、2つあります。一つは、組織側の対策です。上司が異動対象者に、「これは左遷ではないのだよ」と、教えてあげることです。異動対象者がすねることが予想される場合は、難しい対話になります。
もう一つは、本人側です。自分の実力は、自分では見えないものです。いえ、見たくないものです。口では「私はそんなに優秀ではありませんから」と謙遜していながら、多くの人は内心で「俺様の実力は、こんなものではない」と自信(過信)を持っています。
まあ、人間とはそんなものです。自分自身に自信を持つことはよいことです。変に卑下する必要はありません。しかし、自信を持ちつつ、仕事場では困難な仕事から逃げていては、周りの人からは評価されません。実力は、仕事で発揮してこそ、評価されるのです。「内に秘めた能力」は、職場では、能力がないのと同じです。
もし、自分の意に反した異動があったら、つべこべ言わず、新しい職場で頑張りましょう。そこで腐っているようでは、あなたの評価は、ますます下がります。後は、ダウンスパイラルに陥ります。新しい職場で実力を発揮して、人事当局や上司に、「彼は、良くできるじゃないか」「今度は、××の仕事をさせよう」と言わせましょう。連載「明るい公務員講座」では、第14回(3月14日号)から、この話に入っています。
NHKスペシャル、復興予算の検証番組
3月12日夜に放送されたNHKスペシャルは、「シリーズ東日本大震災 “26兆円” 復興はどこまで進んだか」でした。これまで5か年の予算を分類分析し、成果や関係者の言葉など現場からの報告を入れた、かなり力のこもった番組でした。「さすがNHK」と思わせる、分析と映像でした。私たち役人では、こうはいきません。盛岡のホテルの部屋で見たのですが、感慨無量でした。私が特に意義があると思ったのは、次の点を取り上げてくださったことです。
・番組の構成が、インフラ復旧だけでなく、産業再生とコミュニティ再建の3つから成っていたこと。そして、後ろの2つが復興に必要だということを指摘していたこと。これが、今回の復興の一番の特徴であり、私たちが力を入れたことなのです。
・そのために、産業再生とコミュニティ再建について、政府がこれまでにない支援に取り組んでいること。
・これまでにない復興事業に、市町村長が苦労していること。
・すべてがうまく行っているわけではありませんが、現地の人たちが、感謝してくださっている映像があったこと。
私たちが5年間やってきたことがまちがいなかったと、うれしかったです。報道は、とかく政府に批判的ですが、この番組は進んだところ、うまく行っていないところ、評価できる点、今後検討が必要な点を、バランスよく取り上げてくださったと思います。
見逃した方も、いずれ再放送があるでしょうから、ぜひご覧ください。オンデマンドでも、見ることができます。
私も、最後の部分に登場しました。先日、取材を受け、30分ほどお相手をしました。政府で最初から5年間携わっているのが、私だけだというのが、出演した理由のようです。使われたのは1分ほどですが。「うまく切り取るものだなあ」と感心しました。鎌田キャスターは、お上手ですね。かつて、「週刊こどもニュース」のお父さん(池上さんに続く2代目)でした。
番組を見た知人や職員から、「見たよ」と、携帯電話にたくさんメールが入りました。その中に「いつもは次官室の扉を開け放してあるのに、あの日は閉じたのですか」という、鋭い指摘がありました。鎌田さんが、次官室の扉をノックして、開けて入ってこられる映像だったのです。笑い。
大船渡駅前まち開き
予定通り、昨日12日に盛岡に入り、今朝から大船渡市の駅前再開発まち開き式典に行ってきました。大船渡は町の中心部が津波とその後の火災に遭い、甚大な被害を受けました。その中心部を土盛りし、商業用地を作ります。また道路などで高くした後背地は、住宅にします。
発災直後の5月に視察に入り、戸田市長に案内してもらいました。避難所では、多くの避難者が元気のないところ、一部の漁師さんが、市長に声を荒げて「いつになったら復旧するんだ」と食ってかかりました。市長は丁寧に応対されるとともに、私に「あのような元気な漁師さんがいる限り、大船渡は復興しますよ」とおっしゃったのが印象的でした。
市長はその話のとおり、まず魚市場を完成させました。サンマの水揚げ日本一です。また、12日のNHKスペシャルでも紹介されていましたが、既存集落の空き地を活用して住宅を再建する方法を選び、早くかつ安い費用で住宅をたくさん再建されました。そして、今日の駅前まち開きです。
がれきの山だった当時を思い出すと、よくここまで復興したと感激しました。市長の力量に尊敬と感謝をします。そんなことを、祝辞で述べてきました。