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公務員の業績評価

霞ヶ関では、国家公務員の人事評価(目標による評価)の時期です。年に2回、3月末と9月末が基準日です。能力評価と業績評価の2つについて、自己申告をし、上司の評価を受けます。私も、提出しました。
私の場合は、達成したかどうかの業績評価をするために、その前に何を達成すべきかの目標を作ることが一番の仕事です。これまでにない仕事をしているので、職員が困ったり手戻りがないように、適切な課題=仕事を設定することです。それが間違っていると、いくらその目標を達成しても、世間からは良い評価をもらえません。
業績評価のための項目を書き出し、「こんな項目でよいのかなあ」と、部下職員に確認してもらいました。
目標による評価は、結構面倒ですが、自らの仕事について、考え直す良い機会です。さらに、仕事の目標について、上司と議論し共有できる良い機会です。これまでも、部下の自己申告を読んで、「おいおい、それば違うだろ。重要な仕事は××だよ」ということが、何度かありました。部下に対し、的確な指示をしてなかった私が悪いのですが。

復旧、町長と議会の役割

9月20日の朝日新聞オピニオン欄に、碇川豊・岩手県大槌町長のインタビューが載っていました。大槌町は町長が津波でなくなり、170日の間、代理が指揮を執っていました。役場は全壊、140人の職員のうち40人が亡くなりました。11人の管理職のうち7人が亡くなり、さらに3人が3月に定年で退職しました。
町長不在で、復興のスケジュールが遅れた、との指摘に対して。
「役場と住民がうまくかみ合わなかった。役場は意見を聞くといっても形式的対応に終始し、住民は無関心だった。一刻も早く復興計画をまとめたいが、あまり急いでは阪神大震災後の神戸のように住民から反対意見が出て、かえって時間がかかってしまいます。私は、町内9地区ごとに協議会を作って住民から起案してもらい、年内に計画をまとめようと思います。
先日、自律的な復興をめざす若いグループと懇談しました。心強かった・・」
「あとは、議会。積極的に政策立案に関与してほしい。チェック機能も大事ですが、今は、みんなの知恵を集めなくてはいけない。一緒に予算を作ってもいいくらいです」

震災を経て地方自治、役場の存在意義が明確になったということはありませんか、という問いに対して。
「地方自治法は『民主的にして能率的な行政の確保を図る』とある。その原点に返らないといけない。今までは前例踏襲の『惰性の行政』でもなんとかなったかもしれない。今は、役場が住民に必要なことを創造力とスピード感を持ってできているかどうか、すぐわかってしまう」

その若者の動きについては、9月15日の同じくオピニオン欄に、大槌町の若者、赤崎友洋さん(33歳)のインタビューが載っています。「おらが大槌夢広場創造委員会」理事です。この会は、復興に関することなら、みんなで知恵を出し合い、協力しましょう、というプラットホームとのことです。
「復興計画に住民が関われる仕組みも必要だ。町が道筋を示さないので、私たち被災者が主催して5~6月に「復興まちづくり住民会議」を避難所など6か所で開き、参加した250人の意見をまとめて町に提言した・・
本来、町や議会がやるべき仕事であっても、事務的な仕事で手一杯だろうから、役割分担すればいい。町は街づくりの大きな絵を描き、我々の声も反映させる。経済活動や住民サービスは我々に任せて、町はそれを助ける・・」

被災地での産業再開

9月25日の読売新聞は、農林水産省が発表した、被災した農業と漁業の再開状況(7月11日時点)を伝えていました。
それによると、農業については、被災した8県の74%の農家や農業法人が再開しています。しかし、津波による塩害やがれきが大きかった宮城県では34%にとどまっています。漁業については、6道県で36%です。岩手県は16%、宮城県は17%です。なお、福島県は調査から外れています。
同じく25日の日経新聞は、民間調査機関が7月にまとめた調査によると、3県で津波被害区域や原発事故警戒区域に本社を置く5,004社のうち、半数以上の企業が事業を再開したことを伝えています。金融機関による融資が効果を出しているとのことです。
しかし、福島県では風評被害によって、観光や農業に大きな影響が出ています(9月20日読売新聞、日銀支店長へのインタビュー)。

被災地での法律相談

9月20日の日経新聞が、大震災に関して「法テラス」が受け付けた電話相談の概要を、紹介していました。
法テラス(日本司法支援センター)は、国が作った組織で、法律問題でお困りの方の相談に乗る窓口です。個別問題は弁護士さんたちに相談しなければなりませんが、どこに行ったら相談に乗ってもらえるのかを、無料で案内します。解決に役立つ法制度や、各種機関の相談窓口(地方公共団体、弁護士会、司法書士会、消費者団体など)、無料で教えてくれます。
大震災に関しても、いろいろな支援をしています。電話相談や巡回相談など。また、各種の相談窓口も載っています。
ところで、半年間の相談は、約3,700件。一番多いのは、住まいや不動産で25%。次が、金銭の貸し借りなど生活上の取引で19%、解雇など労働関係が14%、家族関係が12%です。(8月下旬までの相談概要

受け身の仕事と攻めの仕事

この仕事をしていて、「なぜこんなに毎日バタバタして、疲れるのだろう」と思うことが、続いています。私は、自分の仕事の進め方について、そこそこ仕事の段取りが上手で、処理がうまい方だと、自信を持っているのですが。どうも最近は、「疲れる」のです。
いま取り組んでいる仕事は前例がなく、また幅が広く、大変なことは間違いありません。しかし、最近は睡眠時間を削らなければならないほどは、忙しくありません。びっくりするような突発事案が、出るわけでもありません。部下も優秀で、指示した以上の仕事をしてくれます。上司も合理的で、人間関係に悩むこともありません。では、なぜ「疲れる」のか。

その理由の一つが、受け身の対応だと、気づきました。
出勤すると、職員が次々と、報告や相談にやってきます。それを片付けると、あるいはその途中で、電話が入ります。読みかけの書類や電子メールは、広げたままで片付きません。その上に、秘書が新しい書類を載せてくれます(笑い)。
あっという間に、お昼になります。弁当を食べているところに、「食事中にすみません」と、急ぎの相談が入ります。朝に確認した「今日の岡本次長の予定表」はかなりスカスカなのに、実際はそうは行きません。時々、予定表を見ながら、秘書に、「うそつき」と冗談を言います(笑い)。秘書さんを困らせては、いけませんね。

でも、 一つの作業をしている途中に、別の仕事が入ることって、困りますよね。例えば、複数の関係者に連絡している途中だと、し残した人への連絡を忘れてしまいます。その場その場で指示を出し、その作業を完結させないと、失敗も生じます。そして元の仕事に戻るには、もう一度思考をリセットしなければなりません。10分間で終わる仕事が、5分経過時点で中断されると、残り5分では片付かないのです。
このような仕事の進め方って、ストレスがたまるのですよね。受け身の処理は、予定が狂う、自分の時間が確保できないのです。忙しくても、事前に予定があってその通りに進んでいるのなら、それほど疲れないのですが。
また、新しい仕事が次々と入っても、それぞれの締め切りまでに時間に余裕があれば、ひとまずノートにメモをしておけばすみます。そして後で、ゆっくり考える。これも、そんなには、ストレスはたまらないでしょう。しかし、次々と入る課題が、その場その場の処理を求められる場合が、やっかいなのです。

受け身の処理の反対が、攻めの仕事でしょう。また、先を読んだ仕事の仕方です(2011年5月15日の記事)。皆さんもそうでしょうが、追われる仕事より、先を読んでする仕事の方が楽しいですよね。
次の計画を立てて、それに従って進める。この場合は、ストレスが少ないでしょう。もちろん、計画通りに進まないのが、世の常です。また、難しい課題なら、計画や作戦を立てる作業に、ストレスがたまるかもしれません。
若い時に、「できる課長の仕事術」といったたぐいのノウハウ本を、たくさん読みました。私自身も、『明るい係長講座』を書きました。「受け身でなく、攻めの仕事をせよ」「仕事に追われるな、先を読め」は、どこにでも書いてあることです。職位によって、求められる管理者能力が違うことなども、紹介しました(2011年6月9日の記事)。しかし、攻めの仕事をしにくい職位もあります。その場合のコツも、考えて整理しなければなりませんね。