カテゴリーアーカイブ:政治の役割

社会の分断、それを解決する政治

2016年8月6日   岡本全勝

イギリスのEU離脱国民投票結果について、EU発展の視点や国際統合の視点とともに、国内の対立(スコットランドとイングランド、富裕層と貧困層、北部と南部、高学歴低学歴等)が現れたという見方があります。例えば、7月5日の日経新聞経済教室、力久昌幸・同志社大学教授「世代・階層間の分断深刻 英国解体懸念払拭できず」。(2016年7月20日の記述も)。社会の分裂が表面化したのです。国際統合という「高い理想の政治」に対し、「庶民の不満の政治」が抵抗したのです。国際政治と見るか国内政治と見るかです。
社会の亀裂を統合するのも、政治の役割です。国民を構成する集団間に格差(経済格差、政治的不平等など)や考え方の違い(宗教間対立)が大きくなり、不満がたまると、騒動や暴動になります。
ところが、イギリスの歴史は、これまでも社会の課題や亀裂を、どのようにして解決していったかの「教科書」なのです。このホームページでも詳しく紹介した、近藤和彦著『イギリス史10講』(2013年、岩波新書)をお読みください(2014年7月27日。覇権国家イギリスを作った仕組み)。
ひるがえって、現在日本の社会の亀裂は何か。私は、世代間対立(年金受給者対若者)や、都市対地方が対立軸だと考えていました。しかし、近年は、日本社会で最も大きな亀裂は、正規対非正規と考えています(2016年6月2日。現在日本社会の亀裂)。日本の政治がこの課題をどのように解決していくか。それが問われています。
ところで、社会の異なる利害を代表するのが、政党の役割です。彼らが、選挙や議会で議論を戦わせて、問題を解決していきます。しかし、イギリスのこの対立は、与野党対立に代表されていません。与党下院議員の4割が離脱を支持しました。日本においても、先に挙げた社会の課題はまだ、政党間対立の主要な争点になっていません。

保守主義とは何か、宇野重規先生

2016年7月30日   岡本全勝

宇野重規著『保守主義とは何か』(2016年、中公新書)が、勉強になりました。詳しくは本を読んでいただくとして。あまり考えることなく、「保守」や「革新」、「保守主義」という言葉を使います。伝統主義、復古主義、新自由主義、さらには保守感情とは、どこが違うのか。よくわかります。
保守感情、伝統主義は古くからありますが、保守主義は「革命」「進歩」という概念、政治主張に対して生まれた考えです。進歩という概念が力を失うと、保守主義も影が薄くなってきます。
宇野先生の、いつもながらの切れ味の良い説明は、わかりやすいです。ただし、第4章日本の保守主義は、対象となる日本の保守主義が曖昧なので、分析は一刀両断にはならないようです。
お勧めです。

憲法改正の回数

2016年7月26日   岡本全勝

7月25日の読売新聞政治面、井上武史・九州大学准教授のインタビュー「社会の変化 対応する憲法に」に、主要国の憲法改正要件と戦後の改正の回数が載っています。それによると、各国の憲法改正の回数は、次の通り。
韓国9回、アメリカ6回、カナダ19回、フランス27回、ドイツ60回、日本なし。
やはり、日本は特異ですね。この70年間、解釈改憲でつないだのか、改正すべきことがなかったのか、改正すべきことがあるのに放置しているのか。
いろいろな原因や背景があります。しかし「日本は、憲法を改正する必要はなかったんだ」と言い切れるでしょうか。私は、時代に合った憲法に改正すべきだと考えています。「憲法を守れ」と「必要な改正はする」は両立するはずです。マスコミが「革新勢力」と呼んだグループが、憲法改正に反対するという「ねじれ」あるいは「命名の間違い」も、あります。

日本のリベラル勢力、その限界

2016年7月20日   岡本全勝

朝日新聞7月16日オピニオン欄「瀬戸際のリベラル」、浅羽通明さんの発言から。
・・・思えば明治の昔から、日本のリベラル勢力は、有権者と向き合った等身大のところからビジョンや政策を立ち上がらせる姿勢に乏しい。ボトムアップが少なすぎる。
リベラルの提言は、二大政党制とか「デモのある社会」とか、いつも外国にあるお手本を持ってきて振りかざす。トップダウンなのです。要は上から目線の秀才たちが左翼やリベラルとなり、欧米を追い風に自らを支えてきたわけ。
終戦後、占領軍による民主化と日本国憲法という予想外に強い追い風を得た彼らは、ずっとその残光にすがってサバイバルしてきました。与党を攻撃するにも、ただただ「違憲!」という葵の御紋を突きつけるワンパターンへはまっていった。楽ですが、思考停止です。憲法に頼ってばかりだと、経済や安全保障の現実的政策を生みだす能力が劣化してしまう・・・

イギリス、EU離脱国民投票の意味

2016年7月20日   岡本全勝

朝日新聞7月14日オピニオン欄「英国、欧州、そして世界」、オックスフォード大学教授のティモシー・ガートン・アッシュさんの発言から。
・・・この国がいかに分断されているか。(国民投票の)6月23日に、分断を覆い隠していたカーテンが一気に引きはがされたのです。スコットランドとイングランド、富裕層と貧困層、北部と南部、高学歴が残留で、低学歴が離脱・・・。私の息子たちは30代ですが、父親世代が我々の未来を奪ったと怒っています。この分裂と怒りを克服するために、この先2、3年はかかるでしょう・・・

「そもそも英国は、欧州なのでしょうか」という問いに対して。
・・・最古の世界地図といわれるプトレマイオス図の中世版(15世紀)以来、英国は常に欧州の一部として描かれています。日本がアジアに居続けているように。
問題は地理的、歴史的、文化的に帰属するかではなくて、特定の政治目標を共有するかどうか、ということなのです。アジアとの決定的な違いはそこにある。アジアには一つの政治目標はなく、中国によるアジア観、米国によるアジア観などが混在しています。
欧州は、世界で最も政治経済的な統合が進んだ地域であり、統合が欧州全体の政治目標です。だから問題は、英国が帰属するかどうか、ではなくて、統合の動きが前進するか、後退するかです。第2次大戦後以来の欧州統合の動きは、いままさに後退しはじめたといえます。それは世界にとって極めて深刻な状況です・・・