カテゴリー別アーカイブ: 著作と講演

東京大学公共政策大学院

今日は、東京大学公共政策大学院での連続講演「国家行政の課題と展望」に行ってきました。この講演会は、各省の課長が、リレー式にそれぞれの省の「政策課題」を語るものです。しかし、私は、日本の行政機構が抱える「構造的課」をしゃべってきました。連続講演の「総論」になると思います(いずれ、行政・官僚論としてまとめたいと思っています)。

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法学部31番教室(大教室)に入るのは、四半世紀ぶりでした。大勢の学生が、熱心に聞いてくれました。終了後も、何人もの人が、質問に来てくれました。最近話していないテーマであり、1時間40分こなすと、へとへとになりました。今日も国会対応が忙しく、昼飯抜きで駆けつけたのも原因ですかね。場所も場所なので、「吉本的お笑い」も使えませんし・・。もっとも、私の意図が、どれだけ学生・院生に通じたかは不明です。少々、難しかったでしょうか。

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責任者である森田朗教授に挨拶しようとしたら、先生の方から来てくださいました。先生のゼミで、拙著を参考書に使ってもらっています。お礼を言うと、「いやー、批判の対象として使うかもね」と、笑われました。これまで、学問・教育(東大法学部)と実務の連携が少なかったことを述べ、「また講義に呼んで下さい」と売り込んでおきました。

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【学生の反応】
13日の講演を聞いた学生さんから、メールが届きました。要旨は、「とても興味深かったです。全体像がつかめて、ためになりました」です。私の意図が、成功したということでしょう。
講演に対する一番の「ご褒美」は、「観客の反応」です。こういうメールは、嬉しいですねえ。だから、へとへとになっても、やめられないのです。

新地方自治入門 補足3

【街の醜さ】
朝日新聞7月6日夕刊に文化欄に、丸谷才一さんが連載「袖のボタン」で「内の美と外の美」を書いておられました。
古代日本語では、所属の助詞が2つあったとのことです。一つは「我ガ背子」のガで、自分あるいは自分に近いものを受けます。もう一つは「諸人ノため」のノで、それ以外のものを受けます。前者を内扱いのガ、後者を外扱いのノというのだそうです。
そこから始まって(このあたりが格調が高いですね)、日本人にとって内と外の区別は重要で、しかも内を重んじ外を軽んじてきたことを論じておられます。そして話は、都市景観の醜さに発展します。日本人の坪庭の思考と、西洋建築の外見を重んじる思考との差です。電線類の醜さを取り上げ、海外旅行に行っても見方が変わらないことを指摘しておられます。(2004年7月18日)
【第7章】
社会的共通資本(p193)については、
内閣府国民生活局が、15年8月に「ソーシャル・キャピタル-豊かな人間関係と市民生活の好循環を求めて」(2003年8月、国立印刷局)をまとめ、出版しました。
宮垣元著「ヒューマンサービスと信頼-福祉NPOの理論と実証」(2003年11月、慶應義塾大学出版会)が、教育や福祉といった対人サービスにおける、信頼・情報・NPOの機能を分析しています。
そこでは、福祉サービスが家庭から行政へ「外部化」することによって、信頼の役割がどのように変化するか、NPOの場合はどうかなど、をわかりやすく分析しています。また、コミュニティを、「地域コミュニティ」と「テーマ・コミュニティ」に区分するなど、示唆に富んでいます。(2003.11.24)
【文化の効果】
14日の読売新聞「地球を読む」で、白石隆京大教授が「韓流と東アジア、文化が一大産業に」という題で、韓国ドラマなど文化商品による、東アジアの「一体化」「均質化」、アジア人意識の形成を論じておられます。(2004年11月15日)
【第8章】
山脇直司先生が、「公共哲学とは何か」(ちくま新書)を出版されました。先生は、東京大学大学院総合文化研究科授です(3月まで私も客員教授を勤めていました)。先生の主張は、
①公私二元論でなく、政府の公・民の公・私的領域の三元論
②経済・科学・教育などにおいても、「公共性」が必要であること
③学問においても、現状分析だけで終わらせる実証主義や、批判だけして対案を提示しない批判主義でなく、「現状分析」と「あるべき社会像の追求」と「実現可能性の探求」を考えるべき
④「公共性と個人の関係を重視する」。滅私奉公でも滅公奉私でもない、「自己-他者-公共世界」論。中間集団の重視、などです。
拙著「新地方自治入門」(第7章地域の財産とは、第8章公の範囲は)での主張と、大きく重なっています。意を強くしました。ご関心ある方は、ご一読ください。
私は、「政治をシステムとして理解する現在の政治学」に不満を持っています。大学の講義でも、政策=アウトカムを分析の軸に据えました。拙著では、p280以下で触れています。(2004年5月9日)
【第10章】
日本の政治のページをご覧ください。

講演録

この講演は講演録にしてあります。宮崎県市町村課にお申し込みください。県庁が活字にしてくださいました。A4版で資料を含め58ページです。内容は、拙著「新地方自治入門」の一部を分かりやすくしたもの、とお考えください。
これでも、「脱線したところ」は、かなり加筆したんです。ある新聞記者からは、「岡本課長の講演にしては、辛みが足らない。本当はもっと脱線したんでしょう」と、読後評をもらいました。ハイ、そのとおりです。
余部があるので、ご希望の方はお申し込みください。返信用封筒(A4版が入る大きさ・切手も貼っておいてください)を「〒100-8926総務省官房総務課」の私宛に送っていただければ、お送りします。

新地方自治入門 補足5

書評
産経新聞政治面書評
「「国から地方へ」を柱の一つとする小泉構造改革が進む中、総務省の現官房総務課長が、地方自治体の現状分析と将来の展望を分かりやすく解説する。複雑で分かりにくい地方行政制度について、戦後五十年の歴史を解きほぐしながら説明しているのが特徴。高度経済成長が終わった後に生じたさまざまな制度矛盾や問題を提起する。
国と地方の税財政「三位一体」改革で注目される複雑な地方財政制度だが、著者の専門分野だけに図表を駆使し、特に詳しく分かりやすく記載。多くの地方自治体の財政が悪化した原因と現行制度の課題を分析しており、改革の意義が明快に分かる。
制度面だけでなく「自治」や「政治」の理念についても原点に立ち戻って検証。二十一世紀型の地域社会の在り方も提言する。」(2004年3月12日)
「国際税制研究」12号に知原信良大阪大学法学部教授書評を書いてくださいました。「・・・本書は地方税財政や自治の問題を包括的に整理して将来を展望したいと思う者に、有益であり時宜を得た著作といえる」「・・・具体例をふんだんに用いて、説明も丁寧であるので大変わかりやすい。地方公共団体の業務については、木は見えても森がよく見えないといわれるが、本書はその全体像を知る上で格好のガイドブックとなるだろう・・・」。ありがとうございます。(2004年5月18日)
NiftyBooks(bk1)より「良書普及人」氏による
中央省庁の現職課長が、自らの仕事を振り返り、更に先輩官僚の業績をマクロ的に反芻し、今の制度の桎梏状態を指摘し、これからどうしていったらよいのかを、幅広い視野から問題提起しているのがこの本である。
筆者は東大の客員教授として、2年にわたり学生相手に分かり易く地方行政の運営実態を講義してきたものをまとめたと書いている。
単なる制度の解説ではなく、制度を通して何が実現できてきたのか、その制度が今どういう課題に立ち至って、かえって日本社会の足かせになっていることを指摘している。これまでの日本の成功を支えた三つの条件、「明確な目標」、「潤沢な財政」、「効率的な行政機構」が、「目標の喪失」、「財政の制約」、「行政の機能不全」に転化しているという観察は、実際そのとおりである。
この本は、曖昧な指摘ではなく、はっきりとした指摘や主張がふんだんに含まれているので思わず唸る箇所が随所にある。例えば以下のようなものがある。
・国家公務員は地方公務員と異なり、人事権が各省庁にあり、対等なものの間の調整がなかなかつかない。優秀な官僚ほど頑張ってカタがつかない。
・教育委員会制度があるので、市民に選ばれた市長が教育に最終責任を持てない。教員に対する人事権も無く制度上問題が大きい。
・地方の貴重な一般財源である地方交付税は特別会計の借り入れが無ければ現在の6割の水準になる。歳出削減をするか、交付税の財源である国税の増税をするか、地方税の増税をするしか方策は無い。
現職の官僚として、無難にことを運ぶという、「伝統的な」役人像からは、一歩も二歩もはみ出ているが、そういう役人が中にはいるということを、このような本を通して知ることができるということも、読書の楽しみ方ではある。地方行政を目指そうとする人たちや、高校の「公民」の授業の副読本としても有用な本である。(2004年6月19日)
インターネットを見ていたら、拙著の書評を見つけました。ぞーりんという方です。「無味乾燥になりがちな内容を、わかりやすく書いてある良書。入門に最適!というのは、ひとつひとつの主張にデータ的裏付けや豊富な具体例があり、また、キャッチフレーズの付け方がうまいせいと思われる。凡百の小難しい地方自治概説本を読むより、よほどためになる」
存じ上げない方ですが、こんなに誉めてもらうと、嬉しいですね。ありがとうございます。(2005年1月18日)
(本格的書評)
同志社大学大学院総合政策科学研究科紀要第7巻に、細井 秀彦氏による書評が載りました。ありがとうございます。
「本書の特色は、従来の地方自治に関する書物が地方行政に関する法令や制度の解説にとどまっているのに対し、政治学、経済学、社会学などの議論を取り込み、広い視野から日本の地方行政と社会を論じている点にある。それゆえ・・・総合政策科学という学問を「伝統的な専門分野を基礎としながら個々の諸科学の狭い問題意識や問題解決方法にとらわれずに、それらの理論を総合ないし統合して問題解決に取り組もうとするもの」と一応の定義をするならば、本書は、「地方自治」という問題を総合政策科学という学問領域から考えるためにも非常に優れた一冊であると言える」(2006年8月12日)
インターネットで、拙著の書評を見つけました。「地方自治を担う人、特に行政職(事務職)に就いている人には必読の本・・ 特に将来の地方自治体像を描いた後半部分は非常に興味深い」。どなたかは存じませんが、ありがとうございます。(2007年2月17日)

 

国際的副業?

今日は、OECD(経済協力開発機構)の対日調査団のインタビューを受けました。政府間関係の調査だそうです。小生が、対象者の一人として「ご指名」を受けました。有名になったものですねえ。もっとも、時間は短いし、通訳を介してなので(久しぶりだと英単語が出てこず、構文もすぐには浮かびません)、十分伝わったかが心配です。
日本は、全国において行政サービスの水準を上げ、かつ均一に達成したこと。そしてそれは、地方財政制度によるものだということを説明しました。「交付税制度は世界で最高のシステムである」といったら、うなずいておられました。
もっとも、調査団の目的は「問題点」を指摘することでしょうから、「今後の改革方向はどのようなものか」が次の質問でした。拙著が、英語で書かれていたら・・。そこで、日本人スタッフに「新地方自治入門」を贈呈しておきました。