カテゴリー別アーカイブ: 人生の達人

学があることと頭がよいこととは別

「頭が良い」と聞くと、偏差値の高い大学に行った人を思い浮かべるでしょうか。しかし、「学がある」と「頭が良い」とは異なります。
私が子どもの頃、近所のおばさんが「あの人は学はないけど、頭は良いなあ」とか、その逆のことを言っておられました。私は、よくわかりませんでした。私は、「学があること=頭が良いこと」と思っていました。社会人になってから、おばさんたちが言っていたことの意味がわかるようになりました。

一概には言えませんが、頭の良い人がうまくいかない場合が多いようです。自分の能力に自信を持っておられる。しかし、その言動に上司や部下、周囲の人が納得するかどうかです。
自然科学の世界じゃないので、評価基準というのは客観的には決まっていません。評価する人たちに理解してもらい、その人たちが関心のあることについて的確に答える必要があります。相手があることですから、相手が何を望んでいるかを理解しなければならなりません。
「それでも地球は回っている」は自然科学の世界では正しいですが、日常生活では通用しません。相手と観客がいて、その人たちが納得するかです。

うまくいかない場合もあります。その場合でも、皆が納得することが大事です。同じ失敗でも、「あの人なら、やはり失敗したか」と「あの人でもうまくいかない、難しい案件か」とでは、評価が異なります。
私たちの仕事では、「できたか、できないか」の評価ではなく、「着地点が良かったじゃないか」と言ってもらえるかどうかです。「その2」に続く。

リーダーは指導者ではなく始動者

8月25日の読売新聞、朝比奈一郎・青山社中筆頭代表の「日本再生へ「始動者」育成」から。

日本の国力低下が顕著となって久しい。少子高齢化の急激な進行や経済の低迷、地方の衰退などで日本の市場は縮小し、国際経営開発研究所(スイス)が公表する世界競争力ランキングでは、1990年代初頭の首位から、2024年には過去最低の38位に低下した。
「失われた30年」の間に、日本社会の内向き志向は強まった。安定を重視する傾向が広がり、変化への対応の遅さや変革を求める機運の薄さが停滞から抜け出せない要因とも指摘されている。
リーダー人材の育成や、官公庁や自治体などへの政策提言を行うシンクタンク「青山社中」筆頭代表の朝比奈一郎氏は、再び「日本を世界で戦える国」にするために必要なのは、「始動者」の存在だと説く。

・・・日本が停滞から抜け出せない今、多くの分野でリーダーの育成が重要なことは論をまちません。ただ、現在必要なのは、「リーダー=指導者」ではありません。
このことに気づかされたのは、経済産業省の官僚時代に米ハーバード大ケネディ行政大学院に留学した時です。パブリックセクター(部門)について学ぶ大学院として人気が高く、「リーダーシップ論」と「マネジメント論」の講義が非常に盛んでした。
日米の意識差を痛感したのは、日本では、部下に慕われて仕事を円滑に進められる人を良き「リーダー=指導者」と呼ぶのに対し、米国ではむしろ、この役割は管理職が担うマネジメント業務と認識されていた点です。米国でリーダーとは、時に部下に嫌われたり、命を落としたりしても、「リスクを取って新たな取り組みを始め、自ら動いていく人」を指していました。「始動者」と訳すのが正しく、リーダーとマネジャーは異なるのです・・・

発達障害の疑い、9%

8月20日の日経新聞夕刊「発達障害の診断、受ける? 保育士らの意見も参考に」、榊原洋一さんの助言から。

我が子が「発達障害かもしれない」と感じても、診断を受けるか迷う親は多いだろう。明確な症状があるわけではなく、個性との区別もつきにくい。診断を受けるタイミングや「誤診」を疑った場合の対応などについて、小児科医でお茶の水女子大名誉教授の榊原洋一さんの助言を紹介する。

発達障害とは注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)の総称だ。生まれつき脳の心理的な過程に偏りがあることが原因だと考えられている。
文部科学省の2002年の調査では、通常学級の小中学生のうち発達障害の可能性があるのが6.3%で、22年調査では8.8%に上昇した。発達障害には遺伝子が関与していることを踏まえると、実際には有病率が上がったのではなく、社会的な認知の広がりや診断基準の変化などが影響しているとみられる。ただ我が子について悩む親も増えたのではないか。

一方で発達障害は多くの場合、例えば肺炎であれば高熱が伴うといったような分かりやすい症状がない。「思い過ごしかもしれない」「この子のキャラクターではないか」などと考えて、診断を受けるべきか逡巡することになる。
このような場合に参考になるのが、保育園や幼稚園の保育士・先生や、学校の先生、学童保育の担当者などの意見だ。集団の中での行動を見ているので、一人ひとりの特徴をよく把握している。
「かんしゃくがなかなか収まらない」「友達と遊びたがらない」など、気になる点があれば、こうした身近な専門家の意見を聞いてほしい。やはり可能性があると言われたら、小児神経科や児童精神科を受診するといいだろう。

ファックス番号

先日、霞が関の後輩と会ったときに、異動後の新しい名刺をくれました。最近は、名刺をもらうより、電子メールアドレスをもらってやりとりする方が便利です。で、あまり真面目に名刺を見ないのですが、ふと気がつきました。

右上に役職、中央に氏名、そして左下に住所、電話番号、電子メールアドレスが書いてあります。普通の名刺です。電話番号と並んで、ファックス番号が書かれています。
で、彼に質問しました。「今どき、ファックスでやりとりしているのかね?」と。
彼曰く、「いや~、国会議員からの質問をファックスで受けることはありますが、課長の私が使うことはありませんね」
で、やさしく助言・指導しました。
「今どき、ファックスでやりとりしたら面倒だから。すくなくとも名刺に記載するのはやめたらどうですか」と。

最近もらった名刺のいくつかを見ると、ファックス番号を書いているものがたくさんありました。そろそろ、職場でのファックス利用はやめませんか。パソコンを使っていない家庭では、ファックスはまだ必要でしょうが。

雑談が生産性を高める

8月3日の日経新聞に「職場の雑談は「1回3分」 リアル出社の利点引き出す」が載っていました。職場での「心理的安全性」が注目を浴びていますが、簡単にいうと、思いついたことを同僚に話せること、雑談ができることです。

・・・オフィス回帰が進み、同僚らと雑談する機会が増えた。雑談には生産性を高める効果があるとされ、職場での会話を促進する様々なしかけも考案されている。一方、ウェブの対話では同様の効果は限定的なようだ。
職場での雑談は3分程度がちょうど良い――。サントリー食品インターナショナルは昨年、職場で雑談が生まれやすくなる条件を調査した。
同社が法人向けに展開している「社長のおごり自販機」を設置した120社が回答した・・・

・・・雑談が生まれるとの口コミで導入が広まった。背景にあるのは新型コロナウイルス禍。コクヨのコンサルティング部門であるワークスタイルイノベーション部の伊藤毅さんは「コロナ禍を経てオフィスの位置づけが変わった」と指摘する。「リモート勤務ではタスクだけで仕事が終わってしまいがち。出社した時に会話が生まれるしかけをオフィス内に設定したいというニーズが強まっている」

コクヨは22〜23年、オフィスの使われ方の実態を把握するため、自社の特定の部屋の社員数や空間の音量を測定した。
会議や議論を行う場所ほどにぎわいが大きく、机で作業する空間では静かだと想定していたが、実際は後者でも「わははは」と声を上げて笑うレベルのにぎわいが発生していた。こうした分析をオフィスレイアウトの提案に生かし、同社が設計するオフィスでは、会社の床面積に占める執務空間の面積が10年前の5割から6割以上に増えた。ソファを設置したラウンジスペースなどにより執務空間が拡大しているのが一因だ。

リモート勤務でもウェブで会話はできるが、心理的なつながりを生む効果は限定的だ。脳科学が専門の東北大学応用認知神経科学センター助教、榊浩平さんはオンライン会話中の脳血流を計測し、参加者同士の脳活動の同期の度合いが「ぼーっとしている時と同じ」だったことに驚いた。
通常、人が対面で会話をしている時には、ほほ笑みながらうなずくことなどで脳活動が同期し、心がつながっている感覚が得られるという。オンラインで脳活動が同期しないのは、お互いの目線がずれることなどによる。「チームビルディングを目的とした雑談は対面が良い」と話す・・・

・・・オフィス用品のプラスが22年に実施した「職場の居心地WEB調査」によれば、オフィスでの雑談が「必要」と答えたのは一般社員では83%、部長職以上では93%だった。部長職以上の方がより課題意識が強い。
気軽に話しかけられる相手として最も多かったのは一般社員も部長職以上も「同期または世代の近い同僚」だったが、部長職以上は52%が2番目に「部下」を挙げたのに対し、一般社員で「上司」と回答した人は26%。上司から話しかける雑談が気まずい沈黙や気疲れで終わらないためにも、こうした取り組みは役に立ちそうだ・・・