カテゴリーアーカイブ:人生の達人

交渉は人間の信頼関係が基本

2012年5月2日   岡本全勝

月刊『中央公論』5月号に、岡本行夫さんが巻頭論文「日本盛衰の岐路-速やかにTPP交渉参加の決断を」を書いておられます。現在のTPP交渉参加議論に欠けている視点として、消費者利益の視点、攻めの視点、日本が得る利益の視点、サービス貿易の4つを挙げ、また、7つの誤解に答えておられます。その内容は本文をお読みいただくとして、ここで紹介したいのは論文の末尾に紹介されている「貿易交渉も人間関係が基本」という部分です。1973年から79年まで続いた東京ラウンドでのご経験です。

・・1977年、数多くの通商摩擦を抱えた福田赳夫首相は「対外経済担当」のポストを新設し、牛場信彦元駐米大使を任命した。
筆者(岡本行夫さん)は当時、牛場大臣のカバン持ちとして、牛場さんがカウンターパートであるストラウス通商代表と文字どおりテーブルを叩きあって大声でやり合う場面に何度か同席した。まことに激しい交渉であったが、二人の間には強い絆が生まれていった。信頼関係ができれば、お互いに「あいつがここまで言うなら、これ以上譲歩をさせられないな」という見極めがつく。いったん合意した後は、両者とも全力で国内を説得した。日本では、牛場さんを信頼していた中川一郎農林大臣が陣頭に立って国内をとりまとめた。国益のかかった通商交渉とは、かくなるものである・・

納得します。相手のいる交渉、そしてそれぞれ組織や集団を代表している場合に、「敵」は前(相手)にいるだけでなく、後ろ(味方)にもいます。交渉する場合には、この妥協案で「相手は、その後ろを説得できるか」と「私は、私の後ろを説得できるか」がポイントになります。いくら当方の案が「正しい」としても、相手側代表が後ろを説得できない限り、交渉は成立しません。その逆も同じです。
そして、しばしば後ろを納得させる方が、やっかいなのです。日露戦争で、ロシアと交渉を妥結させても、非難を浴びた小村寿太郎が良い例です。「俺の顔を立ててくれ」という台詞は、相手に向かって言っていますが、その実、「後ろに向かっての言い訳をくれ」と言っているのです。

また、岡本さんは、続いて次のようなことも書いておられます。
・・アメリカの司令塔は、カーク通商代表である・・これに対し日本は、国家戦略大臣、外務大臣、経産大臣、農水大臣、国交大臣、厚生労働大臣などの閣僚が交渉を分掌することになるのではないか。各々の閣僚が日頃からの人間関係もないまま、案件ごとにカーク代表と折衝したのでは、迫力を持たない。「首席交渉官」のほかに、本来は牛場対外経済担当大臣のような存在が望ましいのだが、法律で閣僚の定数を増やせない以上、だれか1人に交渉権限を集約し、カーク代表との強い信頼関係をつくるべきだろう・・

不可能の反対語は

2012年4月28日   岡本全勝

朝日新聞4月26日の天声人語に、次のような文章が載っていました。
・・黒人初の大リーガー、ジャッキー・ロビンソンに名言がある。「不可能の反対語は可能ではない。挑戦だ」。
久しぶりにこの言葉を聞いて、胸にずしんと来るものがありました。
人種差別のきつい時代に、それを切り開いていったロビンソン選手には、私なんぞには、わからないくらいの苦労があったでしょう。しかし、そのような境遇の違いを超えて、この言葉は、これまでにない仕事や困難な仕事に挑戦する私たちに、「勇気」を与えてくれます。
そうです。失敗するかもしれません。完璧な成果を達成できないかもしれません。しかし、それを恐れていては、難しい仕事、これまでにない仕事はできません。前例のない課題に、立ち向かっているのですから。
世間には、前例のないことに取り組むことが好きな人と、前例通りの仕事を好む人(前例がないことはしない人)の、2種類がいるようです。(2012年4月26日)

先日、「不可能の反対語は」で、ジャッキー・ロビンソンの名言を紹介しました。英語の原文を知りたくて検索したら、見あたりません。「ロビンソンの言葉ではないのではないか」という記事がありましたが。

とりあえず・・

2012年4月20日   岡本全勝

街を歩いていて、耳にした会話です。中年のサラリーマンふうのおじさんが、その部下とおぼしき青年に話しかけていました。
「とりあえず、謝る」。
そのような表現、教え方もあるのですね。その直前に何があったか、想像がつきます。
私は、「頭は下げるため、口はお詫びをするため(あるいは、お礼を言うために)にある」と、後輩に教えています。もっとも、偏差値の高い後輩たちは、なかなか理解してくれません(笑い)。

「とりあえず」で思い浮かぶのは、なんと言っても「とりあえず、ビール」ですね。
皆さんなら「とりあえず、××」のところに、何を入れますか。
「とりあえず、わかりました」や「とりあえず、はい」では、納得していないことがバレバレですね。

新入社員への上司のプレッシャー

2012年4月15日   岡本全勝

株式会社ライオンが、社会人2年生の20代男女500人に、インターネットで調査した結果が、新聞に載っていました。上司の配慮の一言が、新入社員にはプレッシャーになっている場合です。
「言っている意味わかる?」が35%。「そんなこともわからないのか」が24%。「期待しているよ」が24%です。すみません、私も反省します。
上司からのプレッシャーによる症状は、下痢・胃痛・腹痛が64%、頭痛が44%です。解消法の一つに、「トイレで1人の時間を作る」があります。

孟郊

2012年4月13日   岡本全勝

先日、孟郊の唐詩「登科後」について書きました(4月10日の記事)。漢文のお師匠さんである肝冷斎先生が、解説をしてくださいました。
孟郊さんって、この詩の伸びやかさとは違って、そんなにおおらかな人ではなかったのですね。それでも、1200年も後まで、しかも異国にまで名が残るのは、男冥利でしょう。