カテゴリー別アーカイブ: 行政

行政

予算を審議しない予算委員会

谷垣財務大臣が、予算委員会で予算案の質疑が少ない現状をぼやいて、「もう少し財政や予算にも焦点を」と発言されたと、22日の各紙が伝えています。そうですよね。特に集中審議が行われているテーマは、BSE、耐震偽装、ライブドア問題など「社会問題一般」で、予算とは関係ありません。現に、財務大臣が答弁する機会はほとんどないのです。これについては、このHPで解説したことがあります。→「国会というところ7」
私は、これを、日本の政治がまだ20世紀の思考に捕えられていることの表れだと考えています。予算委員会という名前は、「政治が予算である」という思考を引きずっているのです。例えば名前を「国政一般委員会」とし、予算は「財務金融委員会」で議論すればいいと思います。財務大臣が毎日委員会に張り付いて、BSEやライブドア問題を聞かされるのは、やめた方が良いですよね。

公設民営

自動車損害賠償責任保険の保険料が、4月から下がることが、報道されています(例えば、朝日新聞16日ニュースがわからん)。交通事故の数が減ったからです。この保険って、興味深い仕組みなのです。
この保険は、交通事故の被害者を補償するものです。自動車をお持ちの方は、ご存じでしょう。法律で自動車を持つ人全員に、1台ごとに加入が義務付けられています。強制保険です。しかし、保険の運営は、民間の損保会社各社が行っています。皆さんの入っている保険も、損保会社などでしょう。保険料などは国が決めて、一律なのです。これだけでは補償金額が少ないので、その上に別途、民間の自動車保険に入っておられると思います。
賢い仕組みだと、思いませんか。これも、公設民営と言っていいのでしょうか。社会保険庁の事件を考えると、民営で良かったですね。もちろん、仕組みを官が設定するので、その設定が非効率だったら問題が生じます。
このほかに、自動車事故には政府保障事業があります。これは、ひき逃げや、無保険の事故を救うためです。

公務員制度改革

東京新聞10日の「時代を読む」は、佐々木毅先生の「公務員制度の眼目とは」でした。「公務員制度の総合的な改革に関する懇談会の最終報告」についてです。
・・・最大の注目点は、内閣人事庁の設置である。この組織は、国家公務員の人事制度の運用とその在り方について、国民に対して説明責任を負う国務大臣をトップに頂く組織である。これまで国家公務員の人事管理体制は、人事院や総務省、財務省などにその権限が分散し、結局のところ、誰が管理責任を負うのかがはっきりしない「顔のない」体制であった・・

行政の役割と手法

7日の日経新聞「経済教室」は、八代尚宏教授の「規制改革研究報告」「利用者に選択肢を、事業者にはインセンティブ」でした。

「新地方自治入門」第9章で、行政の手法を分類するとともに、民間の力を活用する手法も分類しておきました。「官から民へ」「アウトソーシング」「事前調整型から事後チェック型へ」は、はやり言葉を超え「公理」になっています。しかし、民間にゆだねることができる業務の限界と、その場合の行政の責任については、議論を整理する必要があるようです。
医薬品審査は生命にかかわる重要な検査ですが、国ではなく独立行政法人医薬品医療機器総合機構が行っています。これが非公務員型の行政法人でできるのなら、他の検査行政も、ほとんど民間でできそうに思えます。
一方、検査については、マンションの耐震強度偽装事件、アメリカ産牛肉検査問題、ライブドアの証券取引問題など、世間を揺らす問題が相次いでいます。さかのぼると、金融機関不良債権査定問題もありました。ここには、検査を民間にもできるようにした場合の行政の責任問題と、規制緩和をすると監視が重要になるといった問題などが含まれています。(2月5日)

 

国の信用

6日の日経新聞「経済教室」香西泰さんの「財政再建、自由思想支えに」に、高橋是清蔵相の次のような言葉が載っていました。「国の信用といふものは無形のものである。それだけにこれを失へば重大である」。
また香西さんは、1944年(第2次大戦末期)に国債残高の国民総生産に対する比率が1.4倍に達していたこと、現在の日本が大戦期に迫るほど財政が悪化していることを指摘した後、次のように書いておられます。「これだけ国債があふれてもその価格が下落しないのは、財政再建への信頼が厚いか、超金融緩和で国債バブルが生じているか、そのどちらかだ」