「行政」カテゴリーアーカイブ

行政

現金給付「効果なし」7割

4月22日の日経新聞に、「現金給付「効果なし」7割 消費税減税、自民支持層は評価二分」という世論調査結果が載っていました。

・・・日本経済新聞社とテレビ東京は19〜21日の世論調査で、トランプ米政権による関税引き上げや物価高への対策についてたずねた。国民への現金給付やポイント付与は「効果があると思わない」と答えた人が74%を占めた。「効果があると思う」は21%にとどまった。
現金給付は夏の参院選をみすえた「バラマキ」との批判がある。ほとんどの世代で効果なしの回答が7割を超えた・・・

国防人材どう育てる

4月7日の日経新聞オピニオン欄は、「国防人材どう育てる」でした。黒江哲郎・元防衛次官の発言「民間上回る処遇改善を」から。

・・・自衛隊が動かなくてはいけない緊急事態は多岐にわたる。他国から武力侵攻された際に日本を守ることや、大地震などへの災害派遣だ。自衛隊が募集対象とする18〜32歳の人口は30年後におよそ4割減る。今の応募水準が続くと現在と同じような手厚い対応は確実にできなくなる。

・・・自衛官は極めて特殊な職務内容を含む。自衛隊法では「事に臨んでは危険を顧みず」と記されている。上官の命令に背いて危険を回避してはいけないことや、状況によっては退職する自由も制限される。仕事に命をかける義務が法律で定められている。
厳しい義務を課しているのに、自衛官の自己犠牲で済ませてしまうのは国のあり方として間違っている。だからこそ処遇改善が必要だ。国民一人ひとりが、命をかけて困難な職務を行うよう自衛官に求めていることを自覚するべきだ。

石破茂政権は2024年末に自衛官の処遇改善策をまとめた。手当の拡充や隊舎の改善、再就職支援などを打ち出したことは評価できる。ただ他業種との人材獲得競争に勝つためには、民間の処遇改善のスピードや内容を上回らなければならない。
そのために国が自衛官に報いる新たな制度を設けてもいいだろう。たとえば一般的な厚生年金や国民年金に加え、年金を上乗せするのはどうか。財源は税金とすることで、国民が責任を持つべきだ。
社会からの敬意を自衛官が感じられる教育も必要だ。外国から攻められたら我々の生活すべてが脅かされる。その事態に陥ることを防ぐために自衛官が国を守っていると学校で教えてほしい。

・・・人的資源の減少を止められないのであれば、少人数でなるべく戦闘に集中できる仕組みもつくらなくてはならない。装備の無人化や、後方支援職種の民間委託を加速すべきだ。官民の役割分担のうち、民の役割を大きくしていかないと自衛隊は戦えない・・・

「ダイバーシティ」は第3ステージ

田村太郎さんのメールマガジン(4月30日号)「自治体におけるダイバーシティ・多文化共生推進」に、次のような発言が載っています。「ダイバーシティ」とは社会の多様性、そしてそれを認め合うことと訳したら良いでしょうか。

・・・日本のダイバーシティ推進が「第3ステージ」に入った・・・民族や性別といった「表層の属性」ヘの配慮を中心とした第1ステージから、価値観や考え方などの「深層の属性」へ配慮が拡がった第2ステージを経て、マジョリティの意識変革を通した社会全体の機運醸成の第3ステージに進んでいくのではないか・・・

詳しくは、メールマガジン「ダイバーシティの第3ステージ」(2024年6月5日号)に載っています。
・・・私は日本のダイバーシティは「第3ステージ」に入ったと感じています。
日本におけるダイバーシティ推進は、企業のマネジメント手法として2000年代中頃から注目されるようになりました。ダイバーシティ研究所も2007年に創立し、当初は企業のCSRを通した多様性配慮を中心に活動をスタートしました。この頃の取り組みは、性別や民族、年代など「表層の属性」への配慮に留まっていたように思います。続いて2010年代に入ると女性活躍や多文化共生、LGBTQなど、マイノリティ分野ごとの個別課題への対応が進みます。そのなかで「表層の属性」だけでなく、価値観やキャリア、思想といった「深層の属性」へと対象が拡大していきました。ここまでが第1ステージと第2ステージです。

そして2020年前後から、マジョリティ側の意識変革や社会全体の機運の醸成による包摂的な取り組みの重要性に再び関心が戻り、企業だけでなく自治体でもダイバーシティを統括する部門を設置したり、指針や計画を策定したりする事例が広がっています。例えば、世田谷区では2018年に「多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」を制定し、包括的な施策の推進をめざしています。また関西経済同友会では2022年度に「Diversity&Inclusion委員会」を設置して提言をまとめましたが、提言を実装する翌年の活動では「Diversity, Equity &Inclusion委員会」へ名称を変更し、組織全体、地域全体での意識変革の重要性を指摘しています・・・

渡邉雅子著『論理的思考とは何か』2

渡邉雅子著『論理的思考とは何か』の続きです。
91ページ以降に、「ディセルタシオンの誕生ー市民の論理と思考法」が書かれています。これは、日本の作文教育、学校教育だけでなく、法学部での教育と比較して、深く考えさせられます。

・・・ディセルタシオンは、自律して考え判断できるフランス市民(国民)育成のために18世紀末に起こったフランス革命後、100年余りの試行錯誤の中から創られた。フランス革命は人権宣言を理念的な柱とし、法の下の平等、人民による人民のための政治を宣言して「政治的主体としての市民(国民)」を誕生させた。これ以降、フランスは統治者である国民の育成という大事業に取り組むことになる。そのため公教育の目的は、憲法をも真理として扱わず事実として教え、完成している法律の称賛ではなく、「この法律を評価したり、訂正したりする能力を人々に附与すること」を求めることとした。近代の学校が国家を支える労働者と国家防衛のための兵士の育成を第一の目的としたのに対し、フランスはフランス革命の理念の実現を公教育の第一の目的にしたのである・・・

・・・実際にディセルタシオンの登場によって「暗記と模倣」が中心だった伝統的な教育は、生徒自らが構想し批評する教育へと大きく変化した・・・
・・・こうした歴史に照らしてディセルタシオンの構造を見ると、政治領域には欠かせない「既存の法律を評価したり訂正したりする能力」を育成し、「自立的に考え破断すること」「批判的にものを見ること」が論文構造に否応なく組み込まれていることが確認できる・・・
参考「できあがったものか、つくるものか

公共政策理論のアメリカの教科書(翻訳)

クリストファー・M・ウイブル編集、稲継裕昭翻訳「公共政策: 政策過程の理論とフレームワーク」(2025年4月、成文堂)を紹介します。
原著は1999年に初版が出て、この翻訳は2023年の第5版です。学生、研究者、実務家にとって公共政策研究・政策過程研究の入口となる書であり、最も定評がある教科書とのことです。
行政学や公共政策論については、日本の学者も本を出していますが、諸外国の動向は意外と紹介されていないのではないでしょうか。もちろん日本の行政の仕組みや特徴を知ることが重要ですが、諸外国と比較して日本の特徴を知ることも重要でしょう。

訳者はしがきで、稲継先生が次のようなことを述べておられます。
「アメリカで始まった理論の実証的適用が、欧州諸国のみならず、南米やアジア諸国、さらにはグローバル・サウス諸国へと広がりを見せている。そのような中で、日本の事例については、国際的なジャーナルへの投稿が極めて少なく、(自戒の念も込めて)海外へ発信されていない。2024年に『Public Administration in Japan』(Palgrave Macmillan)を出版した際、海外の学者から「日本の行政はこれまで謎だった」などと指摘された。具体的適用例についてはなおさらだ。だが、日本は事例に富んでおり、本書の諸理論を適用して分析すれば、国際的には非常に注目される実証研究となることは言うまでもない」