カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第63回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第63回「日本は大転換期―平成で大きく変わった夫婦の関係」が、発行されました。
成熟社会での生き方を模索している日本。私生活の問題のうち、今回は夫婦の関係の変化について取り上げました。
共働きが増え、国民の意識も男女平等、女性が外で働くことを良しとするようになりました。しかし、連れ合いのことを「旦那」「主人」「家内」と呼ぶ習慣は変わらず、「夫唱婦随」「女々しい」といった言葉も残っています。
私を含め昭和の人間は、この意識のコペルニクス的転換の時代に生きています。

この変化に追いついていない代表が、労働慣行です。夫が働き妻は家を守る。女性は就職しても、結婚したら退職する。学生アルバイトや女性従業員は補助的と考えられ、給料は低かったのです。その格差は現在も残り、非正規労働者は給料も低く、昇進の機会も少ないのです。
社会も行政も、これらの問題への対応に取り組んでいますが、まだ十分ではありません。

連載「公共を創る」第62回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第62回「日本は大転換期―進む少子化と家族の人数の減少」が、発行されました。
成熟社会での生き方を模索している日本。私生活の問題のうち、今回は少子化と家族の人数の減少を取り上げました。
少子化は、政府の課題にもなっています。本稿では、子どもの総数が減ることではなく、家族の構成が変わったことによる暮らしと社会の変化を取り上げています。

少子化の原因は、結婚しない人の増加です。そして、将来への不安や、仕事と育児の両立への不安、経済状況などがあります。
これら家族の人数減少によって、家族の助け合い機能が低下します。家族は個人にとって、第一の助け合いであり「保険」です。
上野千鶴子著「おひとりさまの老後」は、独身高齢女性が楽しく暮らす方法を書いたものです。この本はよく読むと、一人の老後を楽しく過ごすためには、それなりの条件が必要だと説いています。孤独を避けるために友人が必要で、そのためには付き合いを続けておく労力が必要だと言っておられます。

連載「公共を創る」執筆状況

連載「公共を創る 新たな行政の役割」、定例の執筆状況報告です。
第3章1(2)その3の2を、ほぼ書き上げました。今回も、いろんな人の助けを借りました。ありがとうございます。

「その3」では、成熟社会の問題のうち、私生活の変化を取り上げています。「その3の1」で家族の形を書きました。「その3の2」は、自由時間の増加と居場所を議論しました。
成熟社会になって、自由な時間が増えました。それをどのように使うのか、ということです。他方で、地縁、血縁、社縁などの、世間の縛りが緩くなりました。町内会や同業団体に属する人も減り、付き合いも減っています。しがらみから自由になった人は、自分から付き合いをつくらないと孤立します。そして、高齢者の孤独は、大きな問題になります。

書きためた原稿の貯金が、底を突きそうになり、せっせと書きました。
今回も、過去にかじったさまざまな知識を集めました。大村敦志著「フランスの社交と法」、山崎正和著「社交する人間」、パットナム著「孤独なボウリング」など、買ってあった本を引っ張り出しました。忘れていますねえ。買ったとき、読んだときは、このような原稿に使うとは考えていなかったので。でも今回は、本棚からすぐに見つかりました。

連載「公共を創る」第61回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第61回「日本は大転換期―増加する結婚しない若者たち」が、発行されました。成熟社会での生き方を模索している日本。前回に続き家族の形の変化、結婚しない人の増加を取り上げました。結婚願望はあるのですが、結婚に踏み切れません。非正規労働者の低収入、結婚しなくても暮らせる環境も、その背景にあります。
そして、単身世帯の増加のもう一つは、高齢者の一人暮らしの増加です。

連載「公共を創る」第60回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第60回「日本は大転換期―急速に変化した個人の暮らし」が、発行されました。
引き続き、成熟社会になった日本の問題を、議論しています。「成熟社会の生き方は」(連載第51回から第54回まで)で、経済成長の低下、目標の喪失、自由が連れてきた責任と孤独といった社会の問題を取り上げました。続く「成熟社会の生き方は その2」(連載第55回から第59回まで)で、満足したことによる活力の低下とともに、日本の驚異的発展を支えた日本型雇用と教育が問題を抱えたことを取り上げました。経済発展に適合した仕組みは、成熟社会では足を引っ張ることになりました。労働が個人の生き方と社会の形を表し、教育が日本社会を再生産します。この二つは、個人と社会との接点です。

社会の問題、個人と社会との接点に続き、今回からは個人の生活の問題を議論します。個人の暮らしとそれを取り巻く世間が急速に変化し、私たちの意識はそれに適合できていません。これが、日本の活力低下と不安の根底にある原因です。今私たちは、成熟社会での生き方を模索しているのです。それを、次の三つに分けて説明します。家族の形、居場所、信念と道徳です。

今回は、家族の形についてです。家族の人数の減少、結婚しない人の増加などです。結婚や子どもの数は、個人の判断です。国家や社会が介入する話ではありません。しかし、急速な変化はこれまでの慣習で育ってきた人たちを戸惑わせます。そして個人の安心を縮小し、将来の日本の不安要素になる恐れがあります。