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社会

フランスの経済エリート

小熊英二著『日本社会のしくみ』で引用されていたので、葉山滉著『フランスの経済エリート カードル階層の雇用システム』(2008年、日本評論社)を、斜め読みしました。
官僚の社会的地位が高く、また主導的機能を果たしている国として、フランスには興味を持っていました。この本は、産業界の官僚ともいうべき、企業のカードルについて書かれたものです。カードルは、企業だけでなく官庁を含め、管理職や高度専門職に就いている人たちです。

一般的に西欧では(実体的には日本でも)、職業は次のように分類されます。
まず、自営業者と雇用者に大別されます。自営業者の中は、農業経営者と、企業主・商人・職人とに二分されます。雇用者の中は、管理職・高度専門職、中間的職業、職員、工員の4つに分けられます。

この「管理職・高度専門職」がカードルです。この言葉は、元は「枠」という意味のフランス語で、1870年代の軍隊から用いられたようです。士官学校出身の将校(士官)たちです。彼らが戦略を練ります。その方針を実践に移すべく現場で指揮を執るのが、下士官です。その指揮の下で、実践するのが兵です。
管理職・中間管理職・職員という三層構造は、たいがいの組織で当てはまります。

関心ある方は、本を読んでいただくとして。あらためて、次のようなことを考えました。
・働き方や雇用慣行は、その国の社会のかたちや個人の生き方を規定する。
・そして、教育の仕組みもそれと連動すること。フランスのエリート教育は有名です。
続きは、別途書きます

この本を探したら、杉並区の図書館にありました。このような専門的な本も所蔵しているとは、たいしたものです。図書館の蔵書は、インターネットで簡単に検索できて、近くの分館まで届けてくれます。通読しようとしましたが、他に読まなければならない本がたくさんあるので、断念。また必要がでたら、借りましょう。
アマゾンで探したら、中古はとんでもない値段がついていました。

日本美術を見せる

以前から疑問に思っているのですが。
日本美術を専門にした大きな美術館がありません。山種美術館三井記念美術館泉屋博古館など、小ぶりで良い民間の美術館は、いくつもありますが。

国立には、東京国立博物館、国立西洋美術館、国立近代美術館はあるのです。国立日本美術館はないのです。たぶん、こういうことだと思います。
文物については、博物ということで、国立博物館でも集めた。美術は、西欧の美術を紹介するために、力を入れた。他方で、日本美術は、国家が集めなくても、身の回りにたくさんある。ということではなかったのでしょうか。

欧米でも、美術館、博物館は、よその国から集めてきた珍しいものを展示したようですから。美術品は、購入者や支援者がないと、政策は成り立ちません。スポンサーです。王侯貴族やお金持ちです。
で、日本でも、藩主や財閥、お寺が持っていました。いくつかの美術館はその系統です。維持できなかったものは売られて、散逸あるいは美術館に収まりました。

なぜ、このようなことを指摘するのか。海外からの訪問者に、「日本美術を見るならここに行きなさい」と紹介する場所に悩むからです。
日本美術をたくさん所蔵している美術館は、東京国立博物館、京都国立博物館、九州国立博物館のようです。
東京国立博物館は、それなりに日本の文物を紹介するには良いのですが、分野が広すぎます。ハニワから刀までありますからね。近年開かれる特別展も良い企画があるのですが、焦点を何に絞っているのか、わかりにくくなっています。日本人を相手に、珍しいものを見せるのか。その際に、外国人はどう扱っているのかです。

外国人、あるいは日本人でも若い人に、日本美術を見せる施設や工夫が欲しいです。実物はいくつもの美術館に分散保管されているとして。系統だって見せる施設。そしてこの時代ですから、インターネットで多くのものを見ることができる仕組みです。
日本美術だけでなく、伝統芸能の世界も、外国人観光客に近寄りやすくなっているのでしょうか。

建物の「センター」という言葉

アルファベット日本語」の続きにもなります。
施設につけられる「センター」という名称は、紛らわしいと思いませんか。
文化センター、ショッピングセンター、保健センター、コミュニティセンター、研修センター・・・あなたの周囲にも、たくさんあるでしょう。

国民生活センター、シルバー人材センター、子育て支援センター、年金相談センター、ビジターセンター、血液センター、医療センター、研究センター、就職情報センター、このような公共的なものの他に、会社の名称や支店などにつけている場合があります。
建築住宅センター、××会社サービスセンター、コールセンター、××フラワーセンター、××メモリアルセンター、××チケットセンター、

英語のcenterからきたのでしょう。辞書を見ると、「多くのものごとが集まること。集中」「ある地域の特定の業務を集中させた場所、施設、部門を示す語」とあります。
かつては、このカタカナ語は目新しく、格好良く見えたのでしょう。しかし、このように多用されると、「普通名詞」に近くなっています。そして、陳腐に感じます。
何か良い日本語への切り替えは、できないでしょうか。多くの場合は、「会館」「所」「窓口」などで置き換えができそうです。

若い人は「センター」と聞くと、大学入試のセンター試験か、AKBの最前列中央(センターポジション)に立つ女性を思い浮かべるのでは(私はAKBを知らないのですが)。

アルファベット日本語、新聞表記

日本語の中のアルファベット」の続きにもなります。
1月20日に行われた総理大臣の施政方針演説、ここにもアルファベット語がいくつも使われています(原文は縦書きです。それで、数字が漢数字になっています)。

AI、IT、Wi‐Fi環境、IoT、5G、ポスト5G、Society 5.0、Beyondゼロ、CSF、ASF、下請Gメン、DV、EU、TPP、ASEAN、RCEP、G20、G7、CO2、JR常磐線。
産業や技術の分野を中心に、社会が進んでいることを実感します。

さて、施政方針演説は、衆議院と参議院の本会議で、総理が読み上げられます。では、速記者はどのように、文字に起こすのか? 耳で聞いた言葉を文字に起こすなら、これらの言葉の多くはカタカナになるでしょう(まだ確認していません)。

新聞社は、翌日の紙面で全文を掲載しています。その際に、どのように表記したか。
朝日新聞は、原文のままのようです。

日経新聞は、JR常磐線、AI、Wi‐Fi環境、Beyondゼロなどは、そのままです。他方、Society 5.0は、ソサイエティー5.0と、カタカナにしています。豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)のように日本語を補っている場合もあります。

読売新聞は、AI(人工知能)、TPP(環太平洋経済連携協定)、豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)、IT(情報技術)、(次世代通信規格の)5G 、DV(配偶者や恋人からの暴力)のように、多くのアルファベット語に日本語や日本語による補足をつけています。ただし、Wi‐Fi(ワイファイ)、Society(ソサイエティー)5.0、Beyond(ビヨンド)ゼロのように、読み仮名を振っただけの言葉もあります。

新聞社も、悩んでいるでしょうね。中学生や高校生でも分かる文章を書くことが、新聞記事の原則です。CSF、ASF、IoT、5G、Society 5.0、DV、RCEP、Beyondゼロといった言葉で意味が分かる人は多くはないでしょう。あなたは、子供に説明できますか。

日本語の中のアルファベット

アルファベット日本語」の続きです。
私たちが意識せずに日本語の中で使っている、アルファベット語。IR、IT、NHK、JRなどなど。これを、逆に置き換えてみると、おかしさがわかります。すなわち、英文の中に、日本語由来の言葉を、漢字とカタカナで入れるのです。

英文の中に、日本語由来の言葉を、アルファベットで入れることは、さほどおかしくありません。sushi、tenpura、などなど。それは、日本語の文章の中に、外国由来の言葉をカタカナで入れることと同じです。

しかし、英文の中に、日本語由来の言葉を、漢字やカタカナのままで入れることはないと思います。”I like sushi.”はあっても、”I like 寿司.”とは表記しないでしょう。まず、英文のワープロに、漢字とカタカナは備えていないでしょう。

中国では、漢字表記の中国語に、アルファベット語を入れることはあるのでしょうか。韓国では、ハングル文字の中に、アルファベット語を入れることはあるのでしょうか。