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社会

現在の日本を分析する

昨日、月刊『中央公論』1月号を紹介しましたが、同号には、次のような論考も載っています。
山崎正和「知識社会論的観点から戦後70年をみる」
猪木武徳「悲観論を裏切り続けた日本経済の人材力」
鼎談、竹内洋、佐藤卓己、佐藤信「論壇は何を論じてきたか」
それぞれに、鋭い日本社会分析です。学校では教えてくれない、また新聞を読んでいるだけではわからないことです。これらも、併せてお読みください。

各国の国民性、問題が起きたら

孫引きで申し訳ありません。笹川陽平・日本財団会長のブログ(1月16日)に、石弘之さんの年賀状が紹介されていました。石先生は、先日紹介した『感染症の世界史』の著者です。実はこの本も、このブログで知ったのです。
・・昨年も世界ではさまざまな問題がありました。問題が発生したら、各国はどんな対処をしたでしょうか?
アメリカ コンサルタントと弁護士を雇う
フランス 大議論のあげく問題がさらに深刻化する
ドイツ  すべてオッシー(旧東ドイツ人)のせいにする
ロシア  関係者全員を逮捕する
スイス  国民投票にかける
スウェーデン  イケアのサポートデスクに電話する
ギリシャ  政府も企業も商店も全部閉鎖する
中国  わが国にはそのような問題は存在しないと声明を発表する
韓国  日本に抗議する
日本  第三者委員会を組織する
さて、ことしはどんな「第三者委員会」ができるのでしょうか・・

これには、笑いました。この手の笑い話は、いくつかあります。有名なのは、あることを調べる場合とか、船が遭難した際に救命ボートが不足した時の対処の仕方とか。各国の国民性を端的にとらえて、クスッとさせます。前者の場合、日本人は「他国の研究を調べる」であり、後者は「皆さん飛び込んでいますと呼びかけると、日本人は海に飛び込む」というのがオチです。
ところで、今回の問題発生時の対処についてですが、なかなか的を射ていますね。このホームページでも、先日、朝日新聞の第三者委員会を批判しました。すると、あまり笑えない小話です。

サッカークラブは、観客の行為にどこまで責任を持つのか

NHKが、「Jリーグ サポーターの応援規制に苦慮」を紹介しています(12月13日)。
・・サッカーJリーグで今シーズン、サポーターの応援を巡る問題が相次いだなか、NHKが各クラブを対象に行ったアンケートで、クラブ側はサポーターを統制する難しさや応援の規制に悩んでいる実態が分かりました・・
この記事に書かれているように、特に今年問題になったのは、サポーターが差別的な横断幕を掲げたり、外国人選手にバナナを振りかざすなどの、「差別的行為」をしたことです。これまでも応援団の問題はありましたが、それは熱くなった応援団が、他の観客や相手方の応援団ともめ事を起こしたり、物を投げたりといった、「暴行的逸脱」でした。その点で、少し違った行為が問題になっています。人権意識の高まりでしょう。
サポーターや観客は、サッカークラブにとって重要なお客であり支援者です。その人たちを、どこまで規制するのか。さらには、クラブにはどこまで規制する義務があるのか。難しい問題です。試行錯誤を重ねて、解決していくしかありません。「スタジアムで考える正義とは」(マイケル・サンデル教授のもじりです)ですね。

カラオケの隆盛

11月24日の日経新聞経済欄に、林三郎・第一興商社長のインタビュー「カラオケから見る消費」が載っていました。カラオケボックスを運営している会社です。記事の主たる内容からは、ずれますが、興味深かった点を紹介します。
「少子高齢化でアルコール離れも進んでいます。カラオケ市場への影響はどうですか」という問いに。
・・夜の生活を楽しむナイトマーケットは年々着実に縮小している。全体的に酒を飲まなくなっているほか、当社がカラオケ機器を提供しているスナックやバーなどの経営者の高齢化が進み、廃業も増えている。このためカラオケ参加人口は2013年が4710万人で、直近のピークである1995年に比べると2割減少している・・人は酒を飲まなくなったとはいえ、どこかで発散する場所が必要なわけで、手軽なレジャーの場として安定需要が見込める・・確かに若者人口は減っているが、最近はシニアや家族連れの利用が増えている。ファミリーが利用したり、高齢者が歌の練習をしたり、昼間の需要が盛り上がっている・・

家風や社風の再生産

先日の「日本人の自己認識」(11月2日)の補足です。私は、『新地方自治入門』p198で、地域の財産として次の5つを挙げ、特に見えない資本の重要性を述べました。社会的共通資本、ソーシャル・キャピタルです。
1 自然資本=自然環境
2 社会資本(施設資本)=公共施設、公共的施設
ここまでは、目に見えます。
3 制度資本=教育、医療、保険、警察、司法、保育、介護
4 関係資本=信頼などの人間関係
5 文化資本=社会としてのものの考え方、治安、風紀、助け合い、勤労を尊ぶ気風、お国柄
世間ではまたこれまでは、社会資本と言えば公共施設を指しました。しかし、ここに挙げた目に見えない人間関係は、社会で暮らしていく上で、重要な基盤です。
この記事を読んだ人の反応です。
「このような日本人の自己認識が好循環を呼ぶのは、家庭や職場、学校などでも同じなのでしょうね。朝の挨拶や、勤勉な家風が、自然と子どもや職員、生徒に伝わって、家風や校風、社風ができるのでしょう。そしてそれが、再生産されるのだと思います。教訓をいくら紙に書いても、それだけでは良い校風は育たないでしょう」。
おっしゃるとおりです。