カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

責任者は何と戦うか、その11。自分と戦う、2

さて、自分との戦いに、もう一つの場面があります。評価と判断を間違わないことの前に、それを作る環境を整えることです。
責任者は上に行けば行くほど、忙しくなります。しかし、1日は24時間しかありません。限られた時間を、どのように割り振るか。何を自分で処理し、何を部下に任せるか。そして、誰に任せるか。この判断です。
全ての書類に目を通し、全ての会議に出席し、全ての面会希望者に会い、全ての電話に応対する。全能の神ならぬ身、そんなことはできません。すると、秘書官・補佐官に、その割り振りを委ねなければなりません。
また、全ての分野に通暁することも、全知の神ならぬ身、それは困難です。その分野に詳しい者に、処理を委ねるか、問題点の整理を行わせます。誰に、それを任せるか。
さらに、すり寄ってくる人たちの内、意見の違う人の提案を退けなければなりません。八方美人はできません。
時間の割り振り、仕事の割り振りと切り捨て、取り巻きの割り振りと切り捨て。これもまた、難しい決断です。

責任者は何と戦うか、その10。自分と戦う

「責任者は何と戦うか」シリーズは、8月末から始まって、断続的に続いてきました。取り上げた敵は、事態の把握、周囲の評価、決める仕組み、身内、議会と世論、敵を見抜く、部下と続いてきました。
最後は、自分との戦いです。これまで取り上げた「敵」をご覧になって分かるように、私は、責任者の敵は正面にいるのではなく、実は後ろ(身内)にいるのだということを、主張したかったのです。そして、最後で最大の身内は、自分自身です。先に取り上げた敵のうち、事態の把握、周囲の評価、敵を見抜くことなどは、本人が正しい評価と判断ができていないことなのです。
周囲の意見に惑わされ、あるいはこれまでの固定観念や思い込みに縛られ、客観的な状況評価を誤り、正しい判断ができないこと。都合の良い解釈に従って、あるいは私情に左右され、厳しい決断ができないこと。困難をおそれ、決断を先延ばしにすることなどです。対立する意見の採択について、判断を先送りしたり、両論併記をしたり。
何度か、日露戦争と太平洋戦争を例に出しました。2つの結果を分けた指導者の違いは何か。それは、明治の指導者たちは、「日本は危うい」と危機感を持っていたのに対して、昭和の指導者たちは、「日本は強い」と驕りを持っていたことでしょう。そして、希望的観測に基づく戦略、負けた実績を隠す大本営発表が続きます。事実に基づく冷静な判断ができなくなっています。さらに、適性を考え司令官を更迭した明治海軍に対し、失敗した作戦の責任を取らせない昭和陸軍と海軍。
もちろん、「勝てば官軍負ければ賊軍」とやらで、勝った場合は全てが良く評価され、負けると全てが悪く評価されることも、考慮しなければなりません。
責任者は、その場限りの対処でなく、また保身でなく、「何が正しいことか」を決断しなければなりません。そしてその決断は、時には孤独なものです。威勢は良いが後先を考えない強硬派や、単なるゴマスリの取り巻きに、惑わされてはなりません。「評価は未来がする」と腹をくくり、歴史の審判を待つのでしょう。

処理能力を超える仕事と興味

1週間も、1か月も早いです。今日は、9月28日土曜日。あっという間に、1週間が終わり、9月も終わりです。
今日も、週末の定例行事、すなわち職場でたまった資料を片付けながら、ぼやいていました。ぼやきの内容は、いつもと同じです。「なんで、平日に、すべてが片付かないのだろう」「何で、こんなに時間が経つのが早いのだろう・・」。進歩がありません、反省。
勤務時間中に、「連続波状攻撃」をかけてきて、私に自由時間をくれない職員たちが悪いのか(八つ当たり、苦笑)。それとも、好奇心が大きすぎて、いろんな資料をため込む私が悪いのか。毎朝、1時間早く出勤して、自分の時間を持つようにしているのですが、メールへの返事を書いたり、急ぎの仕事を処理するだけで、過ぎてしまいます。夜は、残業はしない主義、というか異業種交流会などで忙しく・・。毎回、同じことを書いています。進歩無し。
急ぎでないので、「後で読もう」とか、「後で勉強しよう」と取ってある、切り抜きやコピーが、いけませんね。
急ぎの仕事や案件は、その場で即決します。あるいは、締め切りがあるので、何とか結論を出します。締め切りのない課題や、勉強資料の処理が、ずるずると後送りにされるのです。
半封筒から取り出すと、2か月や3か月前の切り抜きが、出てきます。時間があったら読もうと、鞄に入れて持ち歩いているので、半封筒もよれよれになっています。
資料には、ちゃんと赤線が引いてあったり。「う~ん、そういえば、これも考えようと思っていたな」「これも、ホームページで紹介しようと思っていたのに・・」
まあ、そのうちに時宜を失して、鮮度を失ったり、私の関心がなくなったら、それら資料は「化石」として捨てるのですが。同様に、パソコンには、書きかけの文章がたまり、書斎には読みかけの本がたまり・・。往生際が悪いです、はい。

ムラ社会を打ち破る

9月22日の日経新聞経済の日曜に考える「社外取締役、義務づけは必要か」。「社外取締役のいる企業の割合が東証1部で6割を超えた。企業統治の観点から上場企業に選任を義務づけるべきか、今まで通り各企業の判断に委ねるべきか」というテーマです。富山和彦さんの発言「ムラ型統治、打破を」から。
・・なぜ社外取締役が必要か、米国と日本では全く理由が異なる。米国では社内で最高経営責任者(CEO)の権限が非常に強く、高額報酬を得ようとして会計操作などの不正に走ることがある。2001年に破綻した米エネルギー大手のエンロンがそうだ。だからCEOが暴走したときに解任できるよう、全取締役の過半数は社外と(上場規則で)義務づけられている。
一方、日本では社長の権限はそれほど強くなく、暴走するほどパワーのある人も少ない。取締役会では社長以下のサラリーマン役員が互いの顔色を見て、空気を読みながら物事を決める。あつれきを避けようとするから、不採算事業からの撤退といった重要な意思決定を先送りする。こうした「不作為の暴走」を許す「ムラ型ガバナンス」が日本の大企業が抱える最大のリスクで、ムラの空気をかき乱すのが社外取締役の使命だ。
「少数の社外取締役で取締役会の意思決定を変えられますか」という問に対して。
・・日本の取締役会はしこりを残さないようにと事実上、全会一致が原則だから、少数でも社外取締役が反対すれば決議できない。だから量より質が重要で2人でも十分機能する。例えば不振事業の再建案が上がってきた時、社外取締役が「事業の存続は難しいと思う。撤退や売却を検討していなければ賛成しかねる」と述べれば差し戻しになる。私自身、社外取締役として似たような経験がある・・
後は、原文をお読みください。

責任者は何と戦うか、その9。部下と戦う

延々と続いている「責任者は何と戦うか」シリーズですが(苦笑)、重複をいとわず、再び組織内の敵を取り上げます。
身内の敵の一つに、部下があります。これは与党内の敵など、反乱を起こすことがある敵ではありません。そんな部下もいるでしょうが、通常はいません。ここでいう「部下が敵」とは、次のような意味です。

まずは、指示したとおりに動いてくれない部下。期待したとおりに動いてくれない部下です。上司は通常は有能ですが、一人で何でもかんでも処理できるわけではありません。部下職員に一定の指示を出し、それぞれの担当者に任せて、彼らが処理できない事項を助言したり自ら処理します。しかし、思った通りに動いてくれない部下は、上司にとって困ったものです。
平時は、それでも糊塗できます。しかし、緊急事態が起き、さらに変化しているときに、的確な情報を上げない部下。それ以前に、その事態を重大な事故だと認識しない部下では、上司は困ります。組織の弱さや、上司が部下を掌握していないことが、明白になります。

さて、その延長で言うと、野球の監督は、何と戦っていると思いますか。もちろん、対戦相手でしょう。相手を見て先発メンバーを決め、試合中は選手にいくつかの指示を出します。選手交代のタイミング、攻撃時では待つのか強攻策か。守備の時は、攻めるか敬遠かなど。
でも、試合が始まったら、実は監督の仕事は、ほとんど終わっています。それまでに、どのような選手の補強をし、選手を育て、選手たちに監督の考えを徹底しているか。極端な例では、ラグビーの監督は、試合中はスタンドにいます。
真珠湾攻撃も、ミッドウエー攻撃も同様です。作戦が始まったときには、司令長官と作戦参謀の仕事は、終わっています。もちろん、事態の推移に従って、想定したシナリオの中から、次の作戦を選んでいく必要はあります。
試合中に、「あ~、なんで選手は、俺の言うとおりに動いてくれないんだ」と言っても、遅いです。誰が悪いのか。それは、自ら考えた水準まで選手を育てることができなかった自分です。そして、その水準まで育っていないチームを抱えて、過大な戦術を立てた自分です。
すると、敵は部下だと言いましたが、実は部下を育てることに失敗した自分であり、客観的な認識ができなかった自分なのです。このような話は、あまりに生々しすぎて、賛同が得られないですかね。(2013年9月18日)

昨日の記事に対して、「生々しすぎます」という反応が、2人からありました。お二人とも、しかるべき管理職にいる人です。この状態を、体験中なのですね。(2013年9月19日)

「部下と戦うの次は、上司と戦うですよね」という催促が、数人の方からありました。理論上は、その通りです。上司が部下に困るのと同様、部下は上司に困ります。
しかし、この項目については、いくつか差し障りがあるので、次の機会にしましょう(苦笑)。