カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

NPOと企業の復興協力、3

また、次のような発言もあります。
宮城:プロボノの派遣制度を構築されようとしている企業の方にも、これから挑戦しようという個人に対しても、大きな励みになりますね。去年、イギリスのロンドンに伺った時に、PwCの方が「災害や課題解決の現場に若い社員を連れて行くのもいいが、私たちはマネジメント層を送り込んでいる」と話していました。マネジメント層の意識が変わることは、組織に与える影響が非常に大きい。彼らを現場に送り込むことで視野が広がり、仕事に対する価値観を大きく進化させることになるのだと聞いて、なるほどと 納得しました。そういう意味では、マネジメント層の方にも入っていただく機会を作りたい と思っています・・
ご指摘の通り、仕事を進める上で、マネジメント層の働きも重要です。第一線で働く職員(いわゆる兵隊さん)を増やしただけでは、仕事はうまく進みません。彼らに指示を出し、導いていく中間管理職が必要です。現場で次々起きる問題や新しい課題を、ひとまず判断して処理する中間管理職です。この機能がないと、せっかくの多くの職員も烏合の衆になり、問題は全て本社の責任者に上がってきて、組織は動かなくなります。

NPOと企業の復興協力、2

なぜ今、企業がNPOのリーダーシップに注目するのか?グローバル・ビジネスリーダーとNPOリーダーの対話から」の続きです。
宮城:現地に入っていきいきと活動されている方にふれることで、私たちも勇気づけられますね。「右腕」の方々が東北に入る前後で、人間として進化していると感じるほどに変化することもあります。困難を克服して何かを掴むプロセスは、何物にも代えがたいと感じます。私が企業経営者だったら、社員にそういう成長をしてもらいたいし、そういう人を採用したいと思うでしょう・・
日色:NPOのリーダーは、リーダーシップのあり方としては最も難易度が高いと思うのです。なぜなら、企業でははっきり決まっているルールやゴールが、NPOでは曖昧だからです。例えば、企業には権限構造があるので、上下関係が非常にはっきりしています。また、売上や利益など、評価尺度も明確です。一方でNPOのリーダーは、権限ではなく、ビジョンで人を巻き込まなければならないでしょう。リーダー自身に人間的魅力があることが必要ですし、情熱をもって真摯に仕事に取り組まなければ、同じ志をもった仲間は絶対についてこないと思います・・
日色:やや大きな話になりますが、NPOのリーダーシップには、グローバルに活躍するビジネス・リーダーに求められる要素がたくさん含まれているのです 。今日のグローバル企業はフラット化していて、一ヶ所で全ての物事が決まることはなくなりつつあります。例えば私は日本を担当していますが、グローバルやアジア・パシフィックなど様々なレイヤーのステークホルダーを巻き込みながら、ひとつひとつの意思決定をしているわけです。
そうなると、意思決定に関わる人が、自分の部下ではないということが往々にしてあります。ラインが異なるところでも、一つにまとめて動かしていかなければならない。これが中々難しいのです。そうなると、権限で人をひっぱるのではなくて、ビジョンと人間的魅力でものごとを動かすリーダーシップが重要になってくるのです。ますます複雑化する組織の中で、ビジネスパーソンがリーダーシップを発揮するために、現地で活動するNPOから学ぶことは非常に多いと思います。これが、私がプロボノに個人的に興味をもっている理由です・・
指摘の通り、企業や役所のように、権限と職責が階統制になっていて、目標や規則も明確な組織内でのリーダーシップと、そうでない集団(政党、NPO、同好会など)でのリーダーシップは、異なります。さらに、その組織内の職員を動かすことと、組織外の関係者を動かすことは、これまた大きく異なります。取引先なら、利害関係で動かすことはできますが。政府の責任者が、国会、他の政党、マスコミ論調、そして国民意識を動かすことを、考えてください。

東京消防庁の活躍、情報共有と仕切る人

座談会の続きです。
新井総監:福島第一原発における活動において、大きな反省点は、第一陣が福島第一原発に入ったときに、最高責任者がやや不明になっていたことです。ハイパーレスキュー隊中心に入ってもらったのですが、おおぜい隊長がいて、全体を誰が仕切るのかが不明だった。
また、福島原発内の舞台とJビレッジの後方部隊との連絡が取れなくなりました、これが誤算でした。本庁とJビレッジとも連絡が困難な状況でした。連絡さえ取れれば、Jビレッジで仕切れたのです。連絡手段の確保の大事さを痛感しました。
東京電力との情報交換がうまく行かなかったことがありました。お互いが知っているものだと思い込んでいたために、情報が伝わらなかったようなのです。国も東京電力も、東京消防庁は免震重要棟の存在を知っているものと思い込んでいて、説明がなかった。我々は、知らないから聞けなかったということだったのです。現場の状況は行ってみて初めて知らされたことも多く、安全面、活動面において、大きな支障となりました。特に、免震重要棟の存在は当初全く知らされずにいたので、作戦の樹立自体に大きな影響を与えました。
五十嵐副参事:当初我々は、現地に行って水を出してくれさえすればいいと言われているものと思っていました。免震重要棟の存在を知らなかったし、東京電力からも説明はなく、とにかく水を出してくださいとのことでした。道はどうなっているのか聞いても、よくわからない・・
松井救助課長:東京電力で、意思決定できる人がJビレッジにいなかったのです。図面を見せて欲しいというと、図面はありませんと言って、手書きで図を書いて説明を始めるのでした・・

東京消防庁の活躍、板書が有効

座談会の続きです。
新井総監:3.11直後は、部長以上が集まる最高作戦会議を、1日に朝夕の2回行っていました。
松浦参事(作戦室長):最高作戦会議のための資料作りも、(事前に作ってあった)作戦室運用マニュアルとひな形のおかげで、異動直後の人であっても、報告などに漏れがないようにできていました。
最近は、パソコンを使って情報を整理するという風潮ですが、ホワイトボードにどんどん書き込んだ方が、早いし整理もしやすかったです。いつまで昔ながらのやり方をするのだと言われることもありますが、結果的には、ホワイトボードに書いたものをベースに報告書を作成するのが一番だと思います。
松井救助課長:ホワイトボードには、要点だけを書きます。余計なことを書かないので、一番信頼できるし、皆が同時に見ることができます。
五十嵐副参事:板書は、本当に訓練の賜物です。宮城県の災害対策本部で、訓練どおりに板書をすると、皆が情報を理解できるようになりました。時系列で書いて、必要な情報を後から、追記できましたし、こういう時はアナログが一番です。
松井救助課長:シナリオ訓練しかやっていないと、本番で書けないのです。実践的なブラインド型訓練をしていないと駄目ですね。

新井総監:長期間活動をどう行うのかも問題点です。東京の場合、最初は1週間交代くらいで出したわけですが、片道十何時間もかかる往き帰りが結構大変で、隊員の疲労が問題でした。十何時間かけて現地へ行って、3日間くらい被災地で活動して、十何時間かけて戻ってくる。現地の地理がようやく把握できた頃に、交代することになるといった状況でした。
最初に行った隊員は、休みを取れない過酷な活動になるのは仕方がないのですが、半月後やひと月後に行く隊員は、もう少し長期間現地で活動できるような体制、要するに兵站を十分に確保しなければならないと思います。最後には、観光バスを借り上げて、隊員を観光バスで送り込みました。消防車両は現地においたままで、人だけを入れ替える方式をもっと早く導入できたら良かったと思います・・

不作為型不祥事、幹部の責任

11月4日の日本経済新聞法務欄「不作為型の不祥事、教訓は」は、経営陣が問題への適切な対応を怠ったために危機に直面する「不作為型の不祥事」が続発していることを取り上げていました。JR北海道(線路の異常か所の放置)、みずほ銀行(暴力団への融資を放置)、カネボウ化粧品(化粧品による病状発生を放置)、高級ホテルでの長期間の食材偽装などです。問題は、事故や事件が起きたことではなく、それを放置していた経営者の対応と責任です。
長友英資・元東京証券取引所最高自主規制責任者:最近の(やるべきことをやらなかった)不作為型不祥事の原因は、危機の芽に対する経営トップの感度が低すぎることだ。単に組織とルールを整備するだけのコンプライアンスでは解決しない。問題のきっかけをつかむ情報を「部下が対処すべきこと」と考え、経営者が自らの問題だと判断できなかったのだろう。
みずほ銀行はコンプライアンス担当執行役員を更迭したが、違和感を覚えた。資料が膨大で問題の部分に意識を向けられなかったというが、膨大な情報の中からリスクをかぎ分けるのが経営者の能力であり責任だ。
浜田真樹・日本公認不正検査士協会理事長:企業は同じような能力・背景などを持った人材の集積度合いが高いほど、業務成果が上がる。一方で、反対意見を排除したり情報収集に偏りが出たりして、誤った方向に進みやすくもなる。
視野が狭まった組織の暴走を防ぐには、最終的にはリーダーの力しかないとされる・・ネガティブな細かい情報でも把握して議論できる組織を整えるのは経営者の責任だし、その経営者を外部の眼で監視する仕組みも必要だ。
増田英次・弁護士:・・コンプライアンスそのものを目標とせず、企業理念の実現や目標達成の過程の中に法令順守や問題点の発見を含むことだ。前向きな作業の中に位置づけなければならない。今のコンプライアンスは、あまりに無味乾燥。大切なのはルールではなく、社員の意識と企業風土を変えることだ。社員の仕事に対する情熱や喜びのような「感情」を軽んじたコンプライアンスは決して成功しない。
長友氏:・・過去の判例でも、取締役が「知らなかった」ことの責任を問われ得ることは明確だ。日本野球機構の統一球問題ではコミッショナーが「昨日まで(仕様変更を)知らなかった。不祥事ではない」と言ったが、本来は大いに恥ずべきことだ。
増田氏:重要なのはコミュニケーションだ。不祥事が起きる組織では上司と部下がうまく意思疎通できていない。組織が目指す理想の将来像を社員が共有することに力を入れるべきだ・・
詳しくは原文をお読みください。