投稿者アーカイブ:岡本全勝

持田先生の新著『地方財政論』

2013年9月30日   岡本全勝

持田信樹・東大教授が『地方財政論』(2013年、東京大学出版会)を上梓されました。先生は既に『財政学』(2009年、東大出版会)を出しておられるので、これで両輪がそろいました。
先生は、この本の特色を、「第1に、世界の理論的潮流に照準を定め、わが国の制度を新たな視点から照らし、あるべき政策を考察していることである」と書いておられます。」と述べておられます。
「〈理論〉を志向すると、地方財政の〈制度〉に関する理解は浅くなる。〈制度〉の解説を志向すれば、それと表裏一体の関係性にある〈政策〉に関心が傾き、根本にある〈理論〉が手薄になる。本書は、その難題に挑戦し〈制度〉・〈理論〉・〈政策〉を1冊の教科書で有機的に結合して、釣り合いのとれた議論を展開しようとした」と書いておられます。確かにそうですね。そのバランスが難しいのです。
続いて、「大手製菓会社の宣伝文句に『1粒で2度おいしい』というのがある。そのひそみにならうならば、本書は『3度』楽しめるはずである」とも書いておられます。
第2の特徴として、「最近の地方財政論の成果を吸収して、所得再分配における地方財政の意義と問題点をやや詳しく概観している。このため、本書では経費論を予算論の一部として展開するのではなく、予算論から独立した章を立てて(教育、医療・介護、福祉)、やや詳しく概観した。それによって、地方財政論における歳入論偏重ともいうべき傾向を緩め、経費論の位置づけを高めようとした。地方財政の役割を資源配分機能の世界に閉じ込めるのはやや時代遅れである、という真意をくんでいただければ幸いである」。この後段は的確な指摘で、かつて地方財政を論じていた者の一人として、耳が痛いです。
拙著『地方財政改革論議』も、参考文献として紹介してもらっています。「やや古いが岡本(2002年)は、地方交付税改革の背景や内容に関するわかりやすい解説」(p306ほか)。ありがとうございます。しかし、もう11年も前のこと、古くなりました。その後は、内閣や官房系の仕事で忙しく、地方財政とはすっかりご無沙汰になっています。
なお、先生の『財政学』は、以前このページで、詳しく紹介しました(2009年12月6日以下)。

戦前の日本に戦争を選ばせた条件、現在の日本を戦争に進ませない条件

2013年9月29日   岡本全勝

9月22日の読売新聞「地球を読む」、北岡伸一先生の「安全保障議論。戦前と現代、同一視は不毛」から。
先生は、「昭和の戦前期、日本を戦争への道に進ませた諸条件を考えれば、今の日本に当てはまらないことは自明だからである」として、次の5つを上げておられます。
第1は「地理的膨張が国家の安全と繁栄を保証する」という観念。第2は「相手は弱い」という認識。第3は「国際社会は無力で、制裁する力はない」という判断。第4は「政治の軍に対する統制の弱さ」。第5は「言論の自由の欠如」です。それぞれの条件が、戦前の日本に戦争への道を進ませ、その条件が当てはまらない現在の日本は戦争を選ばないという主張です。説得力があります。
他方で先生は、この5条件が現在の中国に当てはまることも述べておられます。これも納得。原文をお読みください。

リーマン・ショック5年、第2の大恐慌を回避した政治

2013年9月29日   岡本全勝

9月29日の日経新聞「シリーズ検証。危機は去ったか。リーマン・ショック5年」は、当時の麻生太郎首相へのインタビューでした。リーマン・ブラザーズの破綻が9月15日、麻生内閣発足が9月24日、10月23日に北京で開かれたアジア欧州会議の際に日中首脳会談が開かれました。
・・日中首脳会談の席でリーマン破綻の影響、特に外貨準備の大半を占めるドルへの影響が議論になった。私からは「中国と日本は外貨準備のドル保有残高で世界1、2位だ。ドルを安定させることが重要である。それが日中両国の経済にとっても利益である」と慎重な対応が必要だと話した。
脳裏をよぎったのは、基軸通貨が揺らぎ、世界が通貨安と関税引き上げ競争に走った1930年代の再来だった。幸い、どの国も米国債の投げ売りに走ることはしなかった。結果的に基軸通貨の揺らぎを避けられたのは幸いだった。
胡主席とは中国経済についても議論した。「米景気の悪化で対米輸出が激減し、輸出を米国に依存する中国の景気も悪化するだろう。従って、中国は内需拡大に精力を投下し、インフラ投資に重点を置けばいいのでは」と私が話すと、胡主席はノートを取り出しメモを取っていた。
国際政治の首脳会談は事前の打ち合わせに沿って進む。ところがこの日、胡主席とは想定外に率直な意見交換ができた。11月に中国は4兆元(60兆円)の経済対策を決定した・・
サルコジ・フランス大統領、メルケル・ドイツ首相、ブッシュ・アメリカ大統領とのやりとりも紹介されています。また、11月のG20サミットの席で、日本が国際通貨基金(IMF)に1,000億ドルの融資を表明して世界をリードしたことも。続きは、原文をお読みください。
私は、リーマン・ショックへの対応は、政治と経済の関係、しかも国際経済と国際政治の関係や、政治の役割を考えさせる良い事例だと思います。もっとも、1930年代は失敗したことで大恐慌は歴史の教科書に大きく取り上げられ、今回はそれを回避できたことで歴史の教科書には大きく取り上げられません。

大震災、二重ローン対策

2013年9月28日   岡本全勝

今回の大震災に際して、新しく取られた政策の1つに、二重ローン対策があります。
事業を再開したり、家を再建しようとしても、既に借りていた借金があると、その上に新しい借金が乗るのです。しかも、先にお金を借りて建てた工場や自宅は、津波に流されています。これでは、新しく借金はできません。二重ローン対策は、簡単に言うと、銀行との話合いで、借入金を一部免除してもらうのです。 漫画がわかりやすいです。
その中に大きく分けて2つあり、一つは事業向けのもの、もう一つは個人の住宅ローン向けがあります。前者は、東日本大震災事業者再生支援機構と産業復興機構が担っています。後者は、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」です。
これは、国・銀行・法曹界が作った指針です。ガイドラインには、次のように書かれています。
「法的拘束力はないものの、金融機関等である対象債権者、債務者並びにその他の利害関係人によって、自発的に尊重され遵守されることが期待されている。」
法律でもなく、一企業や銀行の方針でもない、新しい型の「行政手法」です。ソフトローに分類されるのでしょうか。
これまでに、相談件数は4千件あまり、債務整理が成立したのは500件あまりあります。

処理能力を超える仕事と興味

2013年9月28日   岡本全勝

1週間も、1か月も早いです。今日は、9月28日土曜日。あっという間に、1週間が終わり、9月も終わりです。
今日も、週末の定例行事、すなわち職場でたまった資料を片付けながら、ぼやいていました。ぼやきの内容は、いつもと同じです。「なんで、平日に、すべてが片付かないのだろう」「何で、こんなに時間が経つのが早いのだろう・・」。進歩がありません、反省。
勤務時間中に、「連続波状攻撃」をかけてきて、私に自由時間をくれない職員たちが悪いのか(八つ当たり、苦笑)。それとも、好奇心が大きすぎて、いろんな資料をため込む私が悪いのか。毎朝、1時間早く出勤して、自分の時間を持つようにしているのですが、メールへの返事を書いたり、急ぎの仕事を処理するだけで、過ぎてしまいます。夜は、残業はしない主義、というか異業種交流会などで忙しく・・。毎回、同じことを書いています。進歩無し。
急ぎでないので、「後で読もう」とか、「後で勉強しよう」と取ってある、切り抜きやコピーが、いけませんね。
急ぎの仕事や案件は、その場で即決します。あるいは、締め切りがあるので、何とか結論を出します。締め切りのない課題や、勉強資料の処理が、ずるずると後送りにされるのです。
半封筒から取り出すと、2か月や3か月前の切り抜きが、出てきます。時間があったら読もうと、鞄に入れて持ち歩いているので、半封筒もよれよれになっています。
資料には、ちゃんと赤線が引いてあったり。「う~ん、そういえば、これも考えようと思っていたな」「これも、ホームページで紹介しようと思っていたのに・・」
まあ、そのうちに時宜を失して、鮮度を失ったり、私の関心がなくなったら、それら資料は「化石」として捨てるのですが。同様に、パソコンには、書きかけの文章がたまり、書斎には読みかけの本がたまり・・。往生際が悪いです、はい。