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事務局の仕事の進捗

昨日、「当面の取り組み方針」を決定し、私たち事務局の仕事も、次の段階に移りました。
3月20日に発足してから、ちょうど2か月がたちます。早いものですね。忙しすぎたので、私の手帳には出張や会議など行動の記録しかなく、何をしたかは、それを見ただけではわかりません。もちろん、事務局としては、きちんと記録が残るようにしてあります。
ちなみに、大臣以下幹部が議論をする「運営会議」は、これまでに44回開催しました。当初は連日、最近は平日は毎日開催しています。朝11時から30分間と決めてあります。もっとも、1時間かかることも多いです。お二人の大臣、官房副長官、副大臣がそろわなくても、開きます。この仕組みをご理解いただいたので、私たちの仕事は、はかどりました。

これまでの事務局の仕事を振り返ると、次のような時期に区分できます。
第1期は、3月20日から4月20日まで。現地からの要望によって、緊急物資を調達し配送することが主でした。そのほかに、避難所の課題の吸い上げと対策、がれき処理と仮設住宅建設の立ち上げ、個別問題の処理です。
4月21日から、物資の調達が各県でできるようになったので、第2期に入りました。この時期は、避難所の状況把握と困難な環境にある避難所の改善支援、避難所への壁新聞やハンドブックなど情報の提供、今回とられた各種特例の市町村役場への説明、がれき処理と仮設住宅建設、そのほかの住宅への移転の促進、所在不明住民の把握支援、個別課題の処理でした。
がれき処理と仮設住宅建設のめどが立ち、5月20日に「当面の取り組み方針」を作ったので、これからは第3期です。たまたま、1か月ごとになっています。
これからの仕事は、「取り組み方針」に従って行われる作業を進行管理すること、特に対策が必要な個別課題への支援です。例えばがれき処理は、市町村によって進捗度合いが大きく違います。またそれ以外にも、市町村ごとに、避難所の解消や、地域の復旧の状況が違います。これらを支援する必要があります。まだたくさんの方が、避難所暮らしをしておられます。早く仮設住宅やアパートなどに移ってもらい、避難所を閉じることが目標です。もちろん、現場では、避難所解消にめどが立たないと、次の段階には移れません。

市町村によっては、復旧が進み、復興に軸足を移しているところもあるようです。そこでは、当初毎日開かれていた災害対策本部会合(市長と各部長が打ち合わせる)は週に1回程度になり、復興構想に取り組んでおられます。
私どもの事務局も、夜間や休日の仕事はほぼなくなりました。当初は、何をしなければならないかわからない、何から手をつけて良いかわからない、どんな組織をつくり職員を集めたらよいかわからない、という状況でしたから。2か月で、良くここまで進んだものです。

当面の取組方針

今日、政府の緊急災害対策本部(全閣僚)において、「東日本大震災に係る被災地における生活の平常化に向けた当面の取組方針」を決定しました。これは、復興までの、当面3か月程度の間に国が取り組んでいく施策を取りまとめたものです。概要はp29に、スケジュールはp30に、整理してあります。7つの項目にまとめてありますが、あえて3つ挙げれば、次のようなものです。
1 8月中に、必要な仮設住宅を完成させ、公営住宅、民間借り上げアパートに入ってもらうこととあわせ、避難所を解消します。
2 8月中に、住宅などの周辺のがれきを片付けます。
3 梅雨や台風までに、堤防を補強します。

この方針を決めるに当たっては、関係県の意見を聞いて作りました。現場での対策を担うのは、自治体ですから。それを支援するのが、私たちの仕事です。なお、原発事故被害や復興に触れていないのは、私たちの所管外だからです。

強い現場と弱い本部

5月16日の朝日新聞「大震災と経済」に、藤本隆宏東大教授のインタビューが載っていました。藤本先生は、日本のモノづくり現場の研究で有名です。先生は、日本の特徴を「強い現場、弱い本部(本社)」と表現しておられます。すなわち、品質が良いものを安く効率よく作るというように、目標がはっきりしている場合は、本社が目標を定め現場は目標に向かって頑張ります。しかし、目標が不明確になると、目標を定められず、弱い本部になってしまいました。
これは、行政機構にも当てはまります。欧米に追いつくという目標がはっきりしていた時は、官僚機構は効率的でした。その目標を達成し、次の目標がはっきりしなくなった時に、官僚制が効率的でなくなりました。決められたことをする職員と、次に何をするのかを考える立場の人との役割分担です。後者が、本部機能です。

記事では、「復興対策をどう評価しますか」との問いに、次のように答えておられます。
・・出張で海外に行ったが、識者の間でも、被災現場、原発事故現場に踏みとどまる人々の粘りと沈着さは高く評価される一方、官民とも対策本部の判断や発表の混乱は低い評価だった。日本の現場の強さと本部の弱さを、全世界が認識してしまったようだ・・
「復旧、復興に向けてどう改善すべきですか」という問いには、
・・高い組織力を維持している日本中の現場の力を一層活用することと、心もとなかった本部の失地回復が必要だ・・
「本部はどうすれば」という問いには、
・・本部は部門の壁の撤去が急務だ。具体的には、重要な復興テーマごとに、関連省庁・自治体から実務担当者を集めたプロジェクトチームを編成し、政府中枢に省庁横断のマトリックス組織を早急に作るべきだ。トヨタ自動車の製品開発組織、日産が復興期に使った部門横断チーム、英国内閣府のプロジェクト制など、成功例は多い・・省庁幹部間の連絡会だけではだめ・・
詳しくは、原文をお読みください。