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市町村の復興計画策定

今日12日は、復興大臣のお供をして、岩手県に行ってきました。宮古市山田町大槌町で、復興計画策定がどのように進んでいるかを視察し、要望を聞くためです。被災地では、仮設住宅の建設がほぼ完了し、がれき片付けも、おおむねめどが立ちました。道路や港湾などの仮復旧も進み、町の復興計画をつくる段階に進んでいます。
もちろん、各市町村では、春から復興の基本方針を作り始めています。現在は、地区ごとに、どの程度の防潮堤を作り、どこに道路を引き、どの地域には住まないようにするか、その場合はどこに住宅を移転するかを、決める作業に入っています。役場が案をいくつかつくり、住民の意見を聞くのです。
技術的な支援は、国土交通省の職員を中心に、国の職員が助言に入っています。しかし、地区の計画を決定するのは、市町村であり、住民です。
これは、なかなかやっかいな作業です。何度も意見の交換を行い、丁寧に意見の集約をする必要があります。津波で流された地区は、もう一度住むには、危険な地区もあります。すると、違うところに移転せざるをえません。しかし、多くの地区は後ろは山であり、そんなに条件の良い場所があるわけでありません。

秋の3連休

秋の3連休、多くの地域では、天候にも恵まれました。運動会や行楽に出かけられた方や、ゆっくりと休日を楽しまれた方も多いでしょう。
私も3日の内、2日はお休みを頂き、家族や友人との「不義理の穴埋め」に励みました。今年の3月に被災地支援の仕事に就いて以来、手帳を見ると、これで10日休んだことになります(苦笑)。
今日は出勤し、いつものように、たまった資料やメールを処理。これからしなければならない仕事を書き出し、進め方を考え、部下に指示を出し、ひとまず終了。職員は連休明けに出勤して、机や椅子の上にある私からの指示書を見たりメールでの指示を見たら、元気がなくなりますかねえ(笑い)。
ところが、復興特区や復興庁の法案を作成している職員たちは、今日も出勤してくれています。申し訳ないことです。我が事務局の忙しさを、「普通の霞ヶ関並みにすること」も、次の大きな課題です。法案ができ、国会審議を経て成立したら、次の段階に入るのですが。
一方で、第3次補正予算の概要がまとまったので、地方自治体に説明に行くことや、市町村が取り組んでいる復興計画策定の支援に入ることも、急ぎの仕事です。明日11日の夕刻から岩手県に入り、翌12日にいくつかの市町村で、復興計画策定の視察をする予定です。

懐かしの執務室取り壊し、内閣を補助する事務の統合と管理

内閣府庁舎の別館(B棟)の、取り壊し工事が始まりました。総理官邸の向かいに、いわゆる本府ビルがあります。その南側に、講堂や会議室がある別館があります。3月20日以降約3か月間、そこの講堂と会議室に、被災者支援本部(チーム)が入っていました。講堂とその上にあるプレハブなので、執務室としてはあまり環境は良くありません。
さらに、当初は机も椅子もなく、大変な状況でした。当時の状況は、写真で残してあります。この写真の内、下段左2つが講堂、下段右がプレハブ執務室です。なつかしいですねえ(4月21日の記事でも、紹介しました)。仕事が大変だっただけに、思い入れもひとしおです。新しいビルを建てるので、取り壊されます。

内閣府と内閣官房は、省庁再編の際に、いろんな部局と機能が集まったので、本府庁舎のほかに、いろんなところに分散しています。さらにその後、新しい課題に対応するため、新組織や臨時組織がつくられています。内閣官房にどのような組織があるか、組織図をご覧ください。
私どものように、民間ビルに入っている組織も多いです。やはり不便ですね。課題は、庁舎を建てて近くに寄せることと、これら機能の管理と統合をどうするかです。
後者は、行政組織論、統治機能論として、大きな課題です。世間では、国家行政機構を「霞ヶ関」「1府12省」「各省庁」と呼び、そのようにイメージすることが多いです。しかし、官邸行政機構(総務官室や秘書官室など)の機能と役割、内閣官房の機能と役割、内閣府の機能と役割は、大きくなっています。各省より一段上に、これらの組織があります。各省に属さない新しい仕事、各省にまたがる仕事、総理からの特命の仕事、さらに各省間を調整する仕事が主です。課題が次々と変わっていくことも、特徴です。また、仕事柄、各省との連携も重要です。職員は、寄せ集めにならざるをえません。
これらの制度設計、職員の配置と養成をどうするか。これまでの教科書や論壇で取り上げられていませんが、大きな課題です。いつか時間ができたら、事実と議論を整理しようと思っているのですが。いつものように決意表明(苦笑)。

法律の改正と法律の輸出。自信が遅れを作る

内田貴著『民法改正―契約のルールが百年ぶりに変わる』(2011年、ちくま新書)が、勉強になります。現在進められている民法(契約法の部分)の大改正作業についての本ですが、最初に、民法とはどのような役割を果たしているか、社会における機能をわかりやすく解説してあります。経済と法、社会と法という観点から、民法をとらえています。大学生の時にこの本を読んでいたら、もっと頭に入ったのに。
詳しくは本を読んでもらうとして、ここでは、日本の民法が100年間も大きな改正なしに来たことや、輸出しなかったこと、国際共通化に遅れたことを、取り上げます。

契約法は、市民社会での取引を支えるインフラです。市場や国家が統合されると、あるいは統合する際に、民法典が定められることになります。ナポレオン法典、プロイセンドイツ、明治民法典です。経済のグローバル化が進むと、各国の契約法の共通化が必要になります。今、世界は、その時期を迎えています。

フランス民法典やドイツ民法典は、世界に輸出されました。明治日本も、ドイツ民法を輸入しました。しかし、日本はその後、日本民法の輸出に熱心ではありませんでした。最近は東南アジアで、法典作成のお手伝いをしていますが。
そして、国際取引法(ウィーン売買条約)の批准も遅れました。日本人法学者が事務局長を務めたのに、日本の大企業は、不要だと主張したそうです。
国際条約、契約法の国際標準化は、経済のインフラです。その作業に参加し、日本の主張を取り入れさせるか、他国がつくった制度を輸入する=従うか。日本企業にとっても、大きな違いです。
成功した組織が、新しい改革に乗り遅れる例ですね。民法典を100年間改正しなかったことも、法学界の内弁慶の表れでしょう。

被災地経済、復興の格差

10月8日朝日新聞朝刊経済面、大山健太郎アイリスオーヤマ社長・仙台経済同友会代表幹事のインタビューから。
「大震災から半年が過ぎ、被災地の復興はどこまで進みましたか」との問いに。
・・2つの格差がある。ひとつは業種間の格差。地域の代表だった東北電力や地元銀行、水産業は元気がないが、復旧工事を手がける建設・土木業界は人手が足りないほどに忙しい。応援部隊やボランティアが被災地に入り、ホテルや温泉旅館も活況だ。
もうひとつは地域間の格差で、津波にあった地域はまだ厳しく、それ以外の地域は5月の黄金週間以降、通常のビジネス環境に戻ってきている・・